【完結】優しくしないで

にゃーつ

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【第一部】 5章

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意味がわからない。

どういうこと?

子どもが攫われて、その子どもが俺と同じ名前で、同じ誕生日で、体の特徴も似てて、俺のお母さんが攫った人?

混乱して何が何だかわからなくなる。



「確定かはわからないから、DNA鑑定をさせてほしい。」


「お、俺の父親は母を捨てた人で、お母さんはお母さんで、その、お母さんは俺がいらなくてっっっぁ」

色々考えてるとパニックになってしまった。

---ギュッ

「大丈夫だから。落ち着いて?僕が代わりに話してもいい?」

これ以上話せそうになかったので、コクリとうなずいて空に託す。

「急なことで我々も千秋も混乱しています。DNA鑑定をして、結果が出たらまたお話に伺います。本日は席を外させていただきます。構いませんね?組長、若。」

「あぁ、構わん。空、ついていってやれ。」

「しかし!我々はずっと探していた息子が見つかって、今すぐにでも!」

「千秋は!親というものに恐怖心があります。落ち着いたら必ず場を設けます。本日は勘弁してください。」

そう空が言ってくれて俺を連れ出してくれた。
部屋を出る時に2人の顔を見てみると、これまで誰の顔でも見たことないような表情で俺を見ていた。




「ちー、家ついたよ。」

「空、ごめんね。空は戻っていいよ?」

大事な組の顔合わせだ。若の息子である空が行かないなんてだめだ。

「僕は嵐と違って組継がないからいいの!パニックなったからちょっと苦しいでしょ?ほら、横になる!」


頭がいっぱいいっぱいで、何が何だかわからない。

「空、ギュってして。」

「いくらでもしてあげる。」

空に抱きしめられながら、昔のことを思い出す。

お母さんは俺のお父さんはお母さんのことを捨てたって、俺を堕ろせってそう言ったって言ってた。あの人たちの言うように、俺がその攫われた子どもならお母さんが言ってたのは嘘?お母さんはお母さんじゃない?

俺は、誰?

俺は何のために、10年近くも耐えてたの?
あの人は、誰なの。


っっはぁはぁはぁはぁ、っっ


「ちー!落ち着いて!苦しくなっちゃうから、ゆっくり息吸って、吐いて。そう、上手。今は何も考えちゃダメだよ。」

何も考えないやうにしたいけど、考えてしまう。

「そ、ら、おれ、おれは、誰なの。」

「ちーはちーでしょ。ちーは俺の何?」

「こ、恋人。」

「そうでしょ、ちーは、僕の恋人の千秋だよ。それはずっと変わらないからね。」

---コクリ

「今日はもう疲れたでしょ?いったんゆっくりして、またその後で考えよ?」

「ん。ありがと、空」

「お礼は、今日の夜ご飯チーズオムライスでいいよ。」

空らしい。

「うん。いいよ、作ってあげる。」

「やった。夏休みの間の計画も立てようね。どっか行きたい。ちーと。」

そっか、空は今夏休みだ。

「俺も空とどっか行きたい。」

「ちーは墨入ってないからどこでもいけるね。」

「海とか行く?」

夏といえば多分海

「・・・・」

「海嫌いだった?」

「ちーがいなくなんないならいいよ。」

あ、そっか。俺が一度自殺しようとした場所だから。

抱きしめられてる空を俺がさらに強く抱きしめた。

「空のそばをもう離れないって言っただろ?俺泳げないから空がずっと近くにいて?」

「うん。じゃあ海行こう。かき氷買ってあげる。」

「・・・いちご練乳が食べてみたい。この間テレビでやってた。」

「うん。一緒に食べよ。」


空のおかげでもう落ち着いてる。
さっきまであんなに暗い気持ちだったのに。

「空」

「ん?なに?」

「ありがとう。」

そのありがとうの意味、ちゃんと伝わったかな。

「っ、どういたしまして」

俺の好きな空の微笑んだ顔でそう言ってくれた。
よかった。伝わったみたいだ。
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