【完結】優しくしないで

にゃーつ

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【第一部】 2章

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「お兄ちゃんのなまえはなあに??」


「俺は、牧野 千秋」


「じゃあちーくんだね!!ちーくん!!」

ちーくん?初めてあだ名なんかで呼ばれた。

「パパとママがね、1番おくのへやは入っちゃだめよっていってたから、ぼくと嵐ね、やくそくまもってたの。でも、なんかはいんなきゃだめな気がして入っちゃった!!」

「俺と君は住む世界が違うから、もうここに来ちゃだめだよ。」

そう、住む世界が違う。俺なんかが接していい子じゃない。

「なんで?いっしょのおうちに住んでるよ?」

「君はパパやママやみんなに望まれて、愛されて生まれてきて、これからの人生も期待されてる愛されてる子だ。俺は違う。望まれない、生まれてこなきゃよかった子どもなんだよ。だから、もうあえない。早くここからでてってくれ。」


やめて。はやくでてって、もうこれ以上、見ていたくない。眩しいよ。羨ましいよ。なんで俺は愛されなかったの?なんで望まれなかったの?


「やーだ!!!僕がちーくんのことあいしたらちーくんは僕とまた会ってくれるの?僕ちーくんのことだいすきだよ?」


そう言って5歳の子供に頭を撫でられた俺は、知らぬ間に、涙を流していた。止めたいのに止まらなくて、ずっと泣き続けた。


簡単に信じちゃだめだって学んだはずなのに、俺にそんな価値なんてないのに、どうしようもなくて、涙を止めることができなかった。


その日俺が泣き止むまで頭を撫でたり抱きしめたり涙を拭ってくれたその子は毎日顔を出すようになった。
いつの間にかちーくんからちー呼びに変わったり、すぐ膝の上に乗ってくるようになった。


「ちーくん!!今日は僕のおやつもってきた!!いっしょにたべよ!!」

この3年まともに食事を取ってないし、すぐ吐いてしまう俺にお菓子なんて食べられるだろうか。


「今日はね!ばーくむーへん!!」


「ばーくむーへん??初めて聞いた。おいしいの?」

ここに来るまでお菓子なんか食べたことなかった俺はこの子から学ぶことも多い。


「おいしいよ!!ちー!半分こしよ!」

「いいよ、空さんが食べなよ。」

「や!!そらさんっていや!!そら!!!」

「でも、若の子どもだし、、」

「やだ!!そら!!!」

でも、失礼な態度取ったら大好きなみんなから殴られちゃうかもしれない。翔太さんのときみたいに。

あ、やばい、翔太さんのこと思い出しちゃった。

--ガクガク

「ちー?大丈夫?ぎゅーしてあげる!!」


---ギューッ

「そ、ら、そら、そら」

「やったあ!!そらってよんだ!!」

「空、もっかいぎゅってして。」

だめだ。そんなこと言うな。そんなこと言っちゃだめだ。

「うん!!ぎゅーする!!」

空が抱きしめてくれると何か胸のあたりが暖かくなるんだ。


「ちー?もう大丈夫??」

「うん。大丈夫。」

「じゃあはい!!ばーくむーへん!あーして!」


あーん

「おい、しい、空!これおいしい!!」

「へへっ!!でしょ?おいしいの!!僕もあーー!」

空の口にも入れてやる。

「おいしいね!!」

毎日あるこの時間が幸せに感じた。

久しぶりに吐かずに食べれたけど、少し気持ち悪くなっちゃって、でも吐きたくなくて布団に入った。
空も入ってきて、

「ちーが寝るまで見てる!!はやくねて!!元気になったらまたそらとあそぼ!!」

そう言って頭を撫でてくれるから瞼が閉じるのなんてあっという間だった。

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