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【第一部】 1章
6 蓮side
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大急ぎで病院に向かう。
「若、京平から 心構えして来た方がいい。 と連絡が入りました。」
「心構え?詳しく書いてないの?目覚ましたから安心なんじゃないの?千秋になんかあったの?」
「蒼真落ち着け、とにかく会ってみねえとわかんねえ。急ぐぞ」
心構え、そんなものでどうにかなるもんじゃなかった。
病室には、
「若。ごめんなさい。」
無表情で謝る千秋がいた。
表情がない。目も焦点が合ってない。
「千秋、すまなかった。すぐに気づいてやれなかった。俺の落ち度だ。翔太は本家付きに戻した。退院したら安心して屋敷に戻って来てくれ。」
「いえ、俺が悪かったんです。ごめんなさい。俺なんかが生まれてなければ若の手を煩わせる必要もなくて、僕なんか殴られるのが当たり前だから。この半年で忘れてしまってました。ごめんなさい。もう何も期待しないから、いい子にするから、ごめんなさい。」
光のない目で下向いて淡々と言う千秋を俺は気づいたら抱きしめていた。
「千秋、そんなこと言うな。俺たちはお前が生きてることが嬉しくてたまらないんだ。生きててくれてありがとうな。」
「そうですよ千秋、回復したらまたお勉強一緒にしましょう。あなたが生きててくれるだけで嬉しいんですから。」
「千秋、俺一緒に屋敷いたのに気づいてやれなくてごめん。生きててよかった。またゲームしような。」
「千秋、屋敷に帰ったら何食べたい?特別にお前の嫌いなピーマン出さずに好きなもの出してやる。生まれて来てくれてありがとうな。」
俺たちの言葉に何の返事もしない千秋。
近くで見るとわかる。体が小刻みに震えている。
俺たちや男に対しては恐怖心を出してこなかった千秋だが、おそらくもう人間が恐怖対象になっちまったみたいだ。
「俺たちまた明日来るからな。ゆっくり寝るんだぞ。」
そう言って病室を出る以外に方法が見つからなかった。
あれから1ヶ月
内臓の回復までは入院となってる千秋。
退院にはあと2ヶ月かかる。
その頃には俺のガキも生まれてる。
目が覚めて最初に話した以来、ごめんなさいしか言わなくなってしまった。
病室に人がいると震えているらしい。
明が言うには、手や腕を噛む自傷行為が続いているそうだ。心の医者に見せることも考えたが、新しい人間が急に現れることも恐怖対象なのか、看護師が変わっただけで、震えが大きくなり、食事も嘔吐してしまったらしい。
表情もまだ戻ってない。
俺たちに対してもまだ震えている。
どうしたらこいつの心を少しでも助けてやれるんだ。
何もできないまま、退院の日を迎えてしまった。
「若、京平から 心構えして来た方がいい。 と連絡が入りました。」
「心構え?詳しく書いてないの?目覚ましたから安心なんじゃないの?千秋になんかあったの?」
「蒼真落ち着け、とにかく会ってみねえとわかんねえ。急ぐぞ」
心構え、そんなものでどうにかなるもんじゃなかった。
病室には、
「若。ごめんなさい。」
無表情で謝る千秋がいた。
表情がない。目も焦点が合ってない。
「千秋、すまなかった。すぐに気づいてやれなかった。俺の落ち度だ。翔太は本家付きに戻した。退院したら安心して屋敷に戻って来てくれ。」
「いえ、俺が悪かったんです。ごめんなさい。俺なんかが生まれてなければ若の手を煩わせる必要もなくて、僕なんか殴られるのが当たり前だから。この半年で忘れてしまってました。ごめんなさい。もう何も期待しないから、いい子にするから、ごめんなさい。」
光のない目で下向いて淡々と言う千秋を俺は気づいたら抱きしめていた。
「千秋、そんなこと言うな。俺たちはお前が生きてることが嬉しくてたまらないんだ。生きててくれてありがとうな。」
「そうですよ千秋、回復したらまたお勉強一緒にしましょう。あなたが生きててくれるだけで嬉しいんですから。」
「千秋、俺一緒に屋敷いたのに気づいてやれなくてごめん。生きててよかった。またゲームしような。」
「千秋、屋敷に帰ったら何食べたい?特別にお前の嫌いなピーマン出さずに好きなもの出してやる。生まれて来てくれてありがとうな。」
俺たちの言葉に何の返事もしない千秋。
近くで見るとわかる。体が小刻みに震えている。
俺たちや男に対しては恐怖心を出してこなかった千秋だが、おそらくもう人間が恐怖対象になっちまったみたいだ。
「俺たちまた明日来るからな。ゆっくり寝るんだぞ。」
そう言って病室を出る以外に方法が見つからなかった。
あれから1ヶ月
内臓の回復までは入院となってる千秋。
退院にはあと2ヶ月かかる。
その頃には俺のガキも生まれてる。
目が覚めて最初に話した以来、ごめんなさいしか言わなくなってしまった。
病室に人がいると震えているらしい。
明が言うには、手や腕を噛む自傷行為が続いているそうだ。心の医者に見せることも考えたが、新しい人間が急に現れることも恐怖対象なのか、看護師が変わっただけで、震えが大きくなり、食事も嘔吐してしまったらしい。
表情もまだ戻ってない。
俺たちに対してもまだ震えている。
どうしたらこいつの心を少しでも助けてやれるんだ。
何もできないまま、退院の日を迎えてしまった。
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