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しおりを挟む「2人ともご飯できたわよ~。今日はお父さんもお姉ちゃんも遅いから先に2人食べちゃいなさい」
蒼の出てるテレビを一緒に見ていた俺たちに母さんが声をかけてくれた。
「うん、ありがとう。」
「おばさん、今日何??」
「今日はカレーよ。蒼くんいっつもちゃんと食べてるの?適当なものばっかり食べてたら蒼くんママも心配するわよ?」
カレー、ずっと匂いしてたから分かってた。カレー・・・か。匂いが強くて色も濃いからなんでも混ぜれちゃうんだ。
そう考えちゃう俺が嫌だ。母さんのご飯なのに、小さい頃から食べてた母さんのご飯なのに・・・
「食べてる食べてる大丈夫だよ。ほら、伊織行くぞ?」
「うん。」
「「いただきます。」」
おいしそうなんだ、なのに・・・あぁ、だめだ。胃がムカムカして食べてないのに吐きそうになる。
「伊織、俺先に食べるぞ。ん!うまっ!めっちゃうまいよ!ほら、あーんしてみろ」
「あーん」
あ、スプーンそのまま・・間接キスじゃん。って、中学生みたいなことで照れんな俺。
口に入ってきたカレーはなんだか久しぶりに食べた気分だった。
・・・うまい
気持ち悪くもなって、ない。
「食べれた?ほら、もう一口」
結局一度もスプーンを持つことなく俺と蒼は食事を終えた。
「もうちょい食ってほしいけどな。1人前の1/2くらいか、まあ最初としてはいいか。伊織、気分は悪くないか?平気か?」
「うん、大丈夫。食べれた。母さん、ごちそうさ、ま、、どうしたの?」
母さんの目からはポロポロと涙が流れていて急すぎてびっくりしてしまった。
「伊織がご飯食べ終わって笑うの久しぶりに見たからっ、、良かった、、。」
毎日どんどん痩せていってたくさん不安にさせていたんだと思う。
それも分かってたから最近は母さんの見えるところで食事しないようにしていたんだ。
「ごめんね、母さん。俺頑張るから。」
「頑張んなくていい。」
「・・・え?」
「もう十分頑張ってんだろ。それ以上頑張ろうとすんな。俺が支えるから。それ以上は頑張んなくていい。食事だってゆっくりでいい、栄養とりながら少しずつ量増やせればいい。それ以上心に負担かけるんじゃねえ。」
「そうよ。頑張らなきゃなんて思ったら大変でしょ?だからいつも通りでいいの。食べれそうにないものだったら無理しないでいいのよ。伊織、たくさん頑張ってきたんだから自分を褒めてあげなきゃ。ね?」
「・・うん。ありがとう・・・」
頑張んなくて、いい、のか。
ここ数年で耐えることに慣れてしまっていた。でも耐えた先にいいことは別になくて、苦しいのが2倍3倍になっていくだけだった。それでも時間は止まってくれなくて、辛いのが続くだけで1日がなんて長いんだろうってそう思う毎日だった。
でも、今日はそんなことなかった。楽しかった。笑えた。蒼が、こんな俺を褒めてくれた。母さんも褒めてくれた。
「おばさん俺伊織の部屋に泊まるね~」
「寝巻きはどうするの?伊織の服じゃ入らないわよね?お父さんのも背が足りないわね、、」
「大丈夫、持ってきてる」
「お風呂も好きな時に入っていいわよ。」
「おじさんより先には流石に入らないよ。」
「父さん、いっつも最後だよ?」
「え、そうなの?」
「うん、父さんが終わった後の風呂掃除までしてる。」
うちは風呂掃除とトイレ掃除は男が担当する。あと庭の草むしりも。
結構仲がいいから昔は家族でねずみのランドとか行ってたんだよな~。
俺がこんなんになっちゃったからもう数年できてないけどさ。
俺がちょっと暗いこと考えてるのがわかったのか蒼がごちそうさまでしたって母さんに声をかけて俺を部屋まで引っ張っていった。
部屋の座椅子に座ったと思ったら膝を叩いてん!!って言ってくる。そこに座れってことなんだろうけど、そんなの恥ずかしくてできるわけない。
だから横に座ったらすんげえ不満そうな顔して無理やりあぐらの中に入れてきた。
こういうちょっと強引なとこ昔から変わってねえ・・・
「これ恥ずいから嫌なんだけど。普通に座ればいいだろ。」
「俺がこうしたいからいいんだよ。お前軽いし。」
「ふーん。」
「嫌だとか言っときながらお前も嬉しいんじゃねえか。」
「別にそんなことない。」
嬉しいなんて言ってないのに蒼の腕が俺の前に回ってきて蒼の匂いが一気に香って包み込まれている感がすごい。
こういうとき手の位置とか足の位置とかどうしたらいいのか全然分からない。俺1人焦ってて恥ずかしいなんて思っていたら背後から速い鼓動が聞こえてきて、ああ、蒼もドキドキしてるんだってそう思うとなんだか嬉しくてちょっとだけ体重を預けてみた。
そのあとは風呂に入って髪乾かして父さんたち帰ってきたから蒼が少し話してて、さあ寝るぞってなった時、唐突にこんなことを聞かれた。
「なあ、お前のこと苦しめた奴の名前教えて。」
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