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10 蒼side
しおりを挟む平日の今日なら伊織は学校か・・・
ならまず最初におばさんに会うか、、。
そう思い俺は伊織の家に電話をかけた。
「はい、もしもし。」
「もしもし。俺です、蒼です。」
「蒼君・・・ごめんね、まだあの子連絡絶ってるのね。」
「はい・・・。あの、伊織のこと聞きたいんです。今こっちに帰ってきてて・・・俺、あいつに何があったのか何も知らない、俺が嫌われただけなのか、あいつに何かあったのか、何も知らないんです。」
「・・・っ、、、そぅ、、よね、、。」
電話の向こうでおばさんは泣いていた。最近、おばさんとこうしていて電話しているうちに俺はあいつの身に何かが起こっていたことを察していた。
「おばさん、頼むよ。俺もおばさんたちと一緒に伊織を支えてぇんだ。」
「・・・蒼君、蒼君の家で話せる?伊織家にいるのよ。聞かれたくなくて。」
「分かりました。待ってます。」
伊織、家にいんのか。体調悪いのか、?そんな日におばさん外に連れ出しちまって申し訳ないことしたな。
そう思っていると家のインターホンがなった。まあ、家隣だしこんぐらいの速さで来れるもんな。
---ガチャ
「おばさん、お久しぶりです。さ、入って。」
「蒼君、久しぶりね。テレビとか雑誌とか見てるわよ。あっという間に芸能人になっちゃっておばさんびっくりよ。」
そう笑顔で言うおばさんだが、これからする話は良くない話なんだろう。笑顔を貼り付けただけの悲しい顔に見えた。
「・・・・」
「・・・・」
「・・・何から話せばいいのか、、。あのね、伊織は今家から出られない状況なのよ。」
家から、出られない?
「伊織、どっか悪いんですか・・?」
なんか重い病気とかなのか?
「ううん、体は大丈夫、、とは言えないけど。病気ではないのよ。そうね、順を追って話しましょう。私たちも全部を知っているわけじゃないんだけど。」
おばさんが話し始めたことは俺が想像すらしてないことだった。
「・・・いじ、め、、。」
「っ、、ぇぇ、、。あの子、相当酷いいじめにあってたみたいなのよ。それが原因で頑張って勉強して受かった高校にもいけなくて、食事も満足に取れなくて、最近は眠れてもないみたいで。」
高校に受かった時、あんなに嬉しそうにしていたのに。
「・・・っ。」
悔しかった。なんで俺は伊織が辛い時にそばにいてやれなかったんだって、離れた場所で生活して、メッセージや電話でなんで満足してたんだって。
「中2の2学期からみたいなの。でも、私たちがそれを知ったのは高校の合格発表の日。病院から電話があって、伊織が暴行されたって聞いて慌てて病院に行ったら怪我だらけの伊織がいてね。病院の先生が手のひらと背中に火傷があったって。背中の火傷はタバコの火を押し付けられたものでその公園に同じ中学の子達がいたのを目撃した人がいたからいじめじゃないかって。あの子、ずっと隠してたのよ。・・・これ、あの子の部屋で見つけたものなの。」
おばさんが見せてくれたのは伊織の日記だった。
その中には伊織の辛い日々が記されていた。誰にも相談できなくて、辛くて、どこかに吐き出したくて書き殴ったんだろう。いおりの字ではあるが書いたというより書き殴ったような筆跡だった。
1ページずつゆっくりと読んでめくっていく。伊織の心の叫びがそこには書いてあった。信じられないようないじめの内容に読んでいるだけの俺ですら胸が苦しくて気分が悪くなる感覚がした。伊織はこれを1年以上耐え続けたっていうのか?
中学を卒業してからは数日に1回しか書いていなかったみたいだが、最後は高校を辞めた日だった。
---高校を退学した。蒼の近くに行きたくて、なんかの形で蒼を支えたくて東京の大学に行くことを目標にいじめにも耐えた。なのに、それは叶わなくなった。家から出られない、ご飯も満足に食べられない。
もう、頑張る理由がない。
もう、生きている意味がないような気がしてたまらない。---
そう書かれていた。その文章を読んで俺の目からは涙が出ていた。俺何悩んでたんだよ、伊織はいつだって俺のこと大事に思ってくれてる。俺がいじけててもなんの意味もねえよ。デビューする前もしてからもずっと俺を支えてくれたのは伊織だ。だから、今度は俺が伊織を支える番だ。
「おばさん、伊織に会わせて。てか、ごめん、ダメって言われても勝手に家入る。」
「蒼君・・・。うん、そうね、あなたならいいわ。蒼君、私たちと一緒に伊織を救う手助けをお願いします。」
「ちょっと、おばさんっ、、頭なんて下げないでよ。俺、善意だけで言ってんじゃねえよ?俺、伊織のこと好きだからさ。だからあいつのこと俺が支えたいだけなんだ。」
「あら、私にそんな宣言するなんて。」
「まあ、それくらい本気ってことにしといてくれよ。」
伊織に告る前におばさんに言っちまったけど、まあ外堀から埋めるってことにするか。
おばさんと伊織の家に入り、おばさんはリビングにいてもらって階段を上がっていく。階段上がって左側の奥の扉。何度も何度も来たことのある部屋から泣き声が聞こえる。
「もぅ、、いゃだ、、、、そう、、、たすけて、、」
そんな声が聞こえて居ても立っても居られず部屋の中へ入り泣いている伊織を思いっきり抱きしめた。
「バカ、何でこんなになるまで頼らなかったんだよ。バカ伊織、バカだ、伊織はバカ野郎だ。」
「うぅぅぅ、、そ、そう、、、?」
「ごめん。こんなになるまで放っててごめん、無理してでも会いに来なくてごめん。」
「~っ、、ぅ、、、」
俺にしがみつきながら涙をポロポロと流してなく伊織を俺を強く強く抱きしめた。もう離さない、これ以上辛い思いなんてさせないってそう誓った。
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