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しおりを挟む「すごいな木村!!北高合格おめでとうな!!」
学校に報告に行くと担任や学年の先生たちが褒めてくれた。だが、俺は先生たちにあまり感謝とかはしていない。俺はまだガキだから自分が助けを求めたのに助けてくれずに逆に地獄に突き落としたような相手を良いようには思えねえんだ。
「さっき鈴木と橋下も報告に来たぞ。鈴木と橋下と木村の3人が北高合格者だな。我が校から3人も出るなんて良く頑張った!高校に入ってからもしっかり頑張れよ!!!」
裕貴と晋作も受かったのか、、、、。
俺がいじめられるようになってから一度も話していない。俺の元友達。
俺の友達は蒼だけだ。蒼にすごいって言ってもらえたって事実だけで今こんなにも心が踊っている。それに俺の夢に一歩近づいたんだ。あとたった3年、たった3年頑張れば蒼の近くに行ける。それに新しい高校には久保君はいないし、俺をいじめてた主犯たちもいない。友達を作ろうとは思わないけど、怪我をすることもたぶんないだろう。ようやく終わったんだ、地獄が終わった。
そう思ったのに・・・
---ドンッ
後ろからたぶん、蹴られた。思いもよらなかった衝撃に受け身を取ることもできずに前へ倒れた。反射的に何事かと後ろを向くと久保君のグループがそこにはいた。
「お前、北高受かったんだって?さっき学校行ったらお前が北校に受かったって先生たち自慢しまくってたよ。俺は北高落ちたってのによ。」
久保君も北高を受けてたのか。
「北高に受かった超エリート様だなあ?お前、最後に憂さ晴らしさせろよ。」
そう言って俺は近くの公園まで連れてこられた。抵抗したけど痩せ細ってしまった俺1人が俺よりガタイのいい男6人に力で勝てるわけもなく彼らからすれば無抵抗と同じだっただろう。
平日の昼過ぎだが遊具のないこの公園には普段から人がいない。だから俺を連れてくるには絶好の場所なんだろう。今から殴られるのかな、蹴られるのかな。見えるところは母さんが心配するからやめて欲しいなって考えながら他人事のようにぼーっとしていた。
落ちたことの憂さ晴らしなんだろういつもよりも容赦なかった。かなり痛い。6人がかりでやられればそりゃあ痛いんだけど、いつもはやられなかった顔や頭も蹴られるからいつもよりダメージを感じる。
「こいつ、蹴ってもあんまり反応良くねえよな。・・・おい、上脱がせろ。」
久保君のその一言で俺は上の服を脱がされた。なんだ?また水でもかけられるのか?そう思っていたが両側から腕をガッツリ押さえられ身動きが取れない中残りがみんな俺の背後に回った。何をされるか分からない分いつもより恐怖心があったと思う。
「ぅぁぁぁぁあああ」
何をされたか分からなかった。背中に痛みが走った。何かが背中に押しつけられてものすごい痛みが走って逃げ出したいのに押さえられて逃げられなくて。その押しつけられたものが離れたあと背中がヒリヒリとした。そして間髪いれずにまた痛みが走る。途中でその何かが地面に捨てられようやく分かった。俺の背中には火のついたタバコが押し付けられていたんだ。このヒリヒリは火傷によるものなんだって。
「ま、こんなもんか。火傷して可哀想だから冷やしてやるよ。」
いつの間にか準備していたのか公園のトイレからくんできたであろう水を頭から思いっきりかけられた。服という防御もなくそのあと何分、何十分と蹴られていたと思う。ふと視界に蒼のぬいぐるみグッズが落ちているのに気がついた。ズボンから落ちてしまったんだろう。
ぬいぐるみの蒼と目があってなんだか恥ずかしくなった。こんなやられっぱなしの俺を蒼に見られている気がして嫌だった。それに水をかけられたことで周りの地面はぐずぐずになっていて蒼が泥で汚れてしまうかもしれない。
それだけは汚したくなくて拾おうとした時、久保君に拾われてしまった。俺はこれまで久保君たちに強い抵抗なんてしたことなかった。でも、それだけは奪われたくなくて
「返して!!!」
おそらく彼に初めてこんなに大きな声を出した。それが気に食わなかったんだろう、久保君は容赦なく蒼のぬいぐるみにライターで火をつけ地面に放った。
「こんなぬいぐるみ持ってるとかキモすぎんだろ。お前の持ち物なんて全部ゴミだかんな。」
俺はそれを素手で拾って手に火傷を負いながらも必死に消した。火が消えた時には周りには誰もいなくて、ようやく終わったんだと安心した。
俺の意識はそこで途切れた。
次に目が覚めたときには真っ白の部屋で涙を流した母さんと父さんと姉ちゃんが俺を覗き込んでいた。
「伊織っ!!!よかったっ、、ぅ、、よかった。」
心配させたくなくてずっと隠してたのに、結局心配させちゃったな。父さんからあの後のことを聞いたら公園で倒れていた俺をあの近くに住んでいた人が見つけて救急車を呼んでくれたらしい。制服を着ていたから学校にも連絡が入ったみたいで明日担任がここに来るみたいだ。まあ、誰がどう見たっていじめの現場だしな。
「伊織、ごめんねっ、、気づかなくてごめん。」
「ううん、俺が言わなかっただけだから。」
「伊織、いつからいじめられていたんだ。すまん、辛いことを聞くが・・・」
「・・・2年の、2学期から。」
父さんも母さんも姉ちゃんもかなり驚いていた。1年以上も前からだなんて思わなかったんだろう。母さんはその場に泣き崩れてしまって俺にひたすら謝っていた。母さんは何も悪くないのに、俺が言わなかっただけなのに。
「ねえ母さん、1つお願いがあって。」
「なに?」
「・・・蒼には、このこと言わないでほしい。あいつの邪魔したくないんだ。」
「・・・きっと黙ってたら怒るわよ?蒼君。」
「いいんだ。バレるまでは言わない。多分バレないし。」
「分かった。伊織、数日は入院みたいだけど何か欲しいものある?」
「あ、明日蒼のモデルしてる雑誌の発売日だから買ってきて欲しい。特集ページ組んでもらったって言ってたから。」
合格発表の次の日がからすごく楽しみにしていたんだ。
「あんたって子は・・・。分かったわ、買ってくる。あと、伊織が握ってたぬいぐるみねボロボロだけどどうする?あれ蒼君のグッズでしょ?」
やっぱりボロボロになっちゃったか。それでも、捨てることはできないよ。
「捨てないで。」
「分かった。」
母さんたちは何か言いたげだったけど何も言わずに帰って行った。
北校に受かったって連絡した時にはあんなに喜んでたのに。
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