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家族

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「紫苑~何で泣いてるの~」

退院して自宅に戻ってきてからは大変さが倍どころではなかった。

少し前までは生活感もあまりなく綺麗に整頓されていたこの家も今では床におもちゃやおむつが置いてあり片付いているか片付いていないかで言えば片付いていない部屋となっていた。

れおんは育休をとってくれて半年の間は休みなのだが今日は重役会議があり3時間だけ仕事に行っている。

僕はその間紫苑と2人きり。5分前まで可愛い顔で眠っていたのに、今は小さな怪獣のように泣きじゃくっている。

おむつも変えたしミルクはさっきあげたのになぜ泣いてるのか分からなくて僕が泣きたくなるけどそれでも紫苑が可愛くて抱っこしてあやす。

「紫苑~ごめんね~ママ紫苑の言いたいこと分からなくてごめんね。でも、ずっとこうやって抱っこしてるからね。紫苑のこと大好きだからね~。」

話しかけながら抱っこしていると紫苑はだんだんと泣き止んでくれて僕の服をキュッと握ってくれた。

可愛過ぎて悶絶しそうだった。

れおんが帰ってきたら自慢するの決定だ。

れおんは最近元気がない。なぜかと言うと、紫苑がれおんに抱っこされると100%泣くからだ。僕が抱っこしても泣く時もあるんだけど、れおんに抱かれると絶対泣く。だかられおんはおむつを変える時と眠っている時くらいしか泣かない紫苑に触れられていない。

それに追い打ちをかけるように紫苑はれおんの友人である泰生さんのことが大好きみたいで泰生さんが遊びに来ると彼に手を伸ばす。抱っこされると全く泣かずに笑うんだ。それに拗ねたれおんが泰生さんを出禁にしようとしていたのは記憶に新しい。

僕もれおんも初めての育児でてんやわんやしているけど毎日幸せを感じることができている。

ふとあの頃を思い出してしまうこともあるけれど、あの頃がなければ僕はこんなに早く子供を授かれることもなかったしれおんとも再開できてなかったかもしれない。そう思うと過去のことを苦しんでいる時間なんてもったいないって思えるようになった。




「ただいま!!!ごめんね!」

「れおん!おかえり!ほら、紫苑~パパが帰ってきたよ~」

「紫苑ただいま~、今日は抱っこさせてくれる?」

れおんの腕の中に紫苑を移すとその途端に


「んぎゃぁぁぁぁ~」

また怪獣がやってきたみたいだ。

オロオロしているれおんだが、懲りずにあやそうとしてくれるから僕はいいパパだと思うんだ。

夕飯の支度をしているとぎゅっと後ろから抱きしめられた。

「ねぇ周?」

「んー?」

「ムードとかなくてごめん、でも今どうしても言いたい。」

「ぅ、うん?」

「俺と結婚して同じ苗字になろう?」

元々は大学卒業のタイミングで籍を入れる話をしていたが、子供を授かって出産してとバタバタしていてその話をしていなかった。僕自身頭になかったがれおんは考えてくれていたんだな。

「いいの?」

「もちろん。俺と一緒に幸せになってほしい。」

「うん、僕も。れおんと結婚する!」

小さい頃の夢が叶った。

れおんのお嫁さんになりたいってそう思っていたから。


「れおん!僕幸せ!!!愛してる!!」

「俺も愛してる。」

ぎゅっと抱きしめてくれるこの腕が一生僕から離れませんように。いつまでも抱きしめ返せますように。

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