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家族

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「養子縁組が必要な理由を教えてもらえませんか?困るという言葉を使うならそれ相応の理由があるんでしょう?」

「自分の可愛い孫なのよ、引き取りたいと思うのは当然じゃない!」

「なら、一緒に暮らしたいと言えばいい。私が聞いてるのはなぜ法的な結びが欲しいのかですよ。」

れおんの冷たい視線はまっすぐおじいさんとおばあさんを捕える。

2人は目線を互いに交わしたが特に何も言わずに時間が過ぎる。

僕はなんだか他人事のような感覚でこの光景を見ていた。

「れおん様、これを。」

橋本さんがれおんに何か差し出した。それをパラパラと見たれおんの瞳にさらに強い怒りが宿るのが分かった。

「あなた方、弁護士に相談していたようですね。養子にしても別に住んでいれば学費等の必要になるお金を払わなくてもいいのか、と。」

2人の肩が大きく揺れた。まずいっという顔をしていて少しおかしく思った。

「さらに?遺産相続させないという遺書も作成した、と。」

「南という後ろ盾が欲しかったんでしょう?申し訳ないですがね、私は周のこと息子だと思ってるんですよ。大事な大事な息子利用しようとしてる人に今どれだけ怒りが湧いてるか分かりますか?」

お義父さん、、、。

僕の横では大丈夫だと、肩を抱いてくれるお義母さん。目の前には僕を2人から守るように立っているお義父さんとれおんと村重さんに橋本さん。

涙が出た。おじいさんおばあさんのことが悲しくてじゃない。みんなが僕を守ってくれることが嬉しくてだ。

約1年前、僕には何もなかった。家族もいない、友達もいない、楽しいことも嬉しいこともない。孤独で辛くて惨めな時間を過ごしていた。そんな日々が当たり前だった。

でも今、僕には大切な家族がいる。れおんが愛をくれる。

僕は一歩踏み出した。

「れおん、どいて?」

おじいさんとおばあさんの前に立つ。2人の目をしっかり見ながら告げるんだ。

「あなた方と会えてよかった。でも、僕の大切な人を利用しようとしたのは許せません。僕の家族はここにいる人とお母さんです。あなた方と養子縁組はしません。金銭的援助もしません。もう2度と会いません。」

はっきりそう告げるとおじいさんもおばあさんも顔を真っ赤にして怒っていた。血が繋がっているのにそんな風に言うなんて、と。そんな2人を村重さんと橋本さんが2人がかりで追い出してくれた。

今後はこの家にも会社にも現れた時点で追い返すよう警備の人に通達するみたいだからもう会うことはない。

お母さんの両親だから、お母さんに少し申し訳ない気持ちもあるけど後日橋本さんから聞いた話によると当時の増田家と繋がりが欲しくての結婚でお母さんには当時付き合っていた恋人もいたみたい。それを別れさせての無理矢理な結婚だったようだから、あの人たちは自分の子供すら自分たちのために利用するような人だったんだなと。そう思った。

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