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苦しみ れおんside
しおりを挟む扉を開けた先はいつものように音がしない。
とにかく周に会わなければと思い、ゆっくりとリビングへと向かう。
自分の足音や呼吸音が異様に大きく感じるほど緊張している。
打たれた薬の後遺症でまだ少し熱が出ているから思考も回らなくて、余計に緊張感が増しているのかもしれない。
---ガチャリ
開けたリビングは昨日家を出た時と何も変わらない。周は、、いない。
部屋か。
期待を込めて寝室をのぞいてみても周の姿はない。寝室は俺と周の匂いがついている。寝室にいてくれたら俺を求めてくれているような気がして期待したが、俺の独りよがりだ。俺は周を傷つけた本人。周の友人が俺の運命だと知った時でもあんなに傷付けたのに。
「いた、、。」
周の部屋のソファで布団にくるまっている愛しい人がいた。
「周、、、?」
「・・・・来ないで。あっちいって。」
冷たい声。俺の方を見てもくれない、ただ淡々と拒絶の言葉を発する。
「ごめん、、お願いだから、話がしたい。」
「・・・っ、、い、いまはっ、無理。お願い、あっちにいって。1人にして。」
「周、、、頼む、、周、、、」
「っ、、うるさぃ、、、うるさぃ!!!嫌だって言ってる!!今は顔も見たくない!!!声も聞きたくない!!!出てって!!!」
ただただ叫ぶ周にそれ以上何も言えなくて、部屋を出ることしか俺にはできなかった。
顔は見せてくれなかったけど、泣いていた。泣いていた愛しい人を抱きしめることすら許されない。
リビングに戻り持っている荷物を確認する。スマホはあの時落としたんだろう。新しいの買わなきゃな。周との写真入ってたのに。
カバンの底を見るとボタンが入っていた。俺のじゃないってことは、、あの時のか。
たった一つのボタンを見ているだけで悔しくて仕方なくて、辛くて仕方なくて、引っ掴んでゴミ箱へと入れようとした。
ゴミ箱を開けた瞬間、涙が出た。
ゴミ箱の中にはたくさんの料理とケーキ、折り紙で作られた飾り、綺麗にラッピングされた箱が捨ててあった。
ラッピングされた箱にはメッセージカードも付いていて
---れおん誕生日おめでとう!そしていつもありがとう!!大好きだよ 周---
と綺麗な字で書いてあった。
「れおん!誕生日のお祝いのご飯楽しみにしていてね!」
そう言っていたのは、これを作ってくれたからなんだ。俺の好きなミートローフに、初めて作ってくれた肉じゃがに、グラタンにサラダ。きっと時間もかかったし大変だったはずだ。
飾り付けもしてくれていた俺のための空間だったこの部屋を周は昨日、どんな思いでこのゴミ箱に捨て去ったんだろう。
もう、俺自身も限界だった。
どうすれば周の心を癒せるのか。
まだガキの俺には何もできないような気がした。
---プルルルッ
「はーい!れおん!!昨日はどうだった?周くん頑張ったでしょ?」
「っ、、かあ、さん、、」
「・・・何かあったの?」
「周を助けてほしい。」
俺は無力だ。
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