70 / 189
5
先生
しおりを挟む「失礼します!!」
校長室に入ってきたのは20代後半くらいの男の先生。
「八代先生、彼が今日からSクラスに編入する増田くんだ。教室までよろしく頼むよ。じゃあ増田くん、これからよろしくね。」
「はい。ありがとうございます。よろしくお願いします。」
お辞儀をして校長室を出た。
なんか、すごい優しい校長先生だったな。
「八代諒だ。2年のSクラスの担任だ。担当教科は数学だ、よろしくな。困ったことがあったら何でも言ってくれ。」
困ったことがあったら、、か。
先生というものに良い印象はない。
小学校の6年間、中学校の3年間、味方をしてくれた先生なんて1人もいなかった。
同級生からいじめられても、仲良くしなさいの一言だけ。僕に何したんだ、嫌なことしたんだろうと責めてくる教師もいた。運動会や授業参観に親が一度も来ない僕に、もっと頑張れば見にきてくれるぞと言った教師もいた。
当時は、何を頑張ったら良いのか分からなくて、でも頑張ったら父様は来てくれるかもしれないって思って、だから初めて体を売りに行った時、頑張りなさいの言葉に頷いてしまったんだ。そのあとは地獄だったけどさ。
そんなのもあって、先生っていうものは信じないようになったし、頼らないようになった。傷つきたくないから。
今回も、同じだ。信じることはしない。
「よし、俺が声かけたら入ってこい。紹介するからな。」
小学校のときは何回か転校生がやってきていた。すごい緊張して話していたイメージがある。そんなに緊張することなのかと思ったが、今その気持ちが痛いほどわかる。どんなふうに見られるんだろう。印象よくするにはどうしたらいいんだろう。そんなことばっかり考えている。
「じゃあ紹介するぞ~増田~入れ~」
意を決して扉を開けるとクラス中が僕のことを見ている。注目しないでくれよ。
「ま、増田周です。よろしくお願いします。」
挨拶をしてクラスを見てみると、みんなが拍手をしてくれた。よ、よかった、、何とか受け入れてもらえたっぽい?
「増田の席は1番後ろの窓際のところな。じゃあ、HR終わるからな~1年よろしく!」
休憩時間になると周りの席の子がたくさん話しかけてきてくれた。
「増田くん、めっちゃ顔かわいいね!!」
「増田くん前はどこの学校にいたの?編入でSクラスってすごすぎる!!」
たくさん質問責めにあって、パニックになっていると周りにいた人たちが急に道を開けた。
そこから僕の方に向かってきたのは可愛い感じの男の子。
「はじめまして!僕の名前は青井翔。君と同じΩだよ。Ω同士だし仲良くしよ?」
「増田周!よ、よろしくね。」
初めてΩの男の子と出会った。
な、仲良く、なりたい。
応援ありがとうございます!
4
お気に入りに追加
1,512
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる