上 下
18 / 189
2

報告 れおんside

しおりを挟む
周がこの家に来てから1週間。

「村重、報告は?」

「はい。彼の父親が捜索を始めて5日になりますが、向こうはまだ手がかりをつかめていないそうです。それと、今週末に開かれるパーティーに親子3人参加するとの情報が手に入りました。」

「そのパーティー俺も参加するやつだよな。わかった。その時に俺からも探り入れてみる。」

「会長には報告されましたか?」

「あぁ、したよ。好きにしていいってさ。高校も辞めてもいいって。周がいないなら行く意味ないしな。退学手続きしといて。」

俺はこの1週間、周の家の情報を調べていた。周をあんな目に合わせた奴らをどうやって後悔させてやろうか。ということに頭を使っていた。
周から聞けるのが1番いいんだけれど、思い出してパニックになることは避けたい。


「あ、遺骨とかは?どうなった?」

「明日には返却していただけます。少し手続きに手間がかかってしまいまして。」

「わかった。周が喜ぶよ。」

一昨日、勝俣という男に面会にいった。

勝俣と周は籍を入れていないそうだ。

「周くんの母親のことがずっと好きだったんだ。だから彼女と瓜二つの周くんとの結婚を彼の父親から言われた時に二つ返事で了承した。でも、少しの良心が残って籍入れずにいたんだ。まぁ、そんなもの無駄なぐらい彼には酷いことをしたがね。私の遺産はほとんど罰金に取られるだろうが、残ったものは周くんに入るようにしてある。
いつか彼に謝らせてくれ。


それと、あの父親の元には帰さないほうがいい。私ぐらいの年代の奴らの中で周くんは有名なんだ。あの父親は私なんかよりよっぽど黒く染まってる。」

そう言っていた。

知っているさ。あの真っ黒に染まった周の家族、いや、あんなもの家族なんて呼べない。あの3人は許すつもりも見逃すつもりもない。
俺は勝俣も許す気はないが、周と籍を入れずにいてくれたことには感謝しようと思った。

周は何もかもが嫌いと言った。
周には嫌いでいいと言ったが、俺は周のことが大好きだから、ずっと嫌われているのは堪える。
でも、周はその何十倍も辛い思いをしてきたんだ。俺がなにも考えずに生活している頃に、泣いて、苦しんで、お腹を空かせていたんだ。

どうやったら周の笑顔を取り戻せるだろう。そんなことばかり考えている。
今日からは周も普通のご飯を食べることができるから、一緒に食事を取ることを提案してみようか。

拒否されても、罵られても、なにを言われても受け止めよう。

「れおん様、到着しました。」

「ああ。」

周へのサプライズを持って彼の待つ部屋へ戻る。


手に持ったものを一旦リビングに置いて周の部屋へ向かう。

---コンコン

「はい。」



「周、ただいま。」

「・・・うん。」

「今日の昼から普通のご飯食べていいみたいなんだけど、一緒に食べない?」

「一緒に?」

「うん。嫌ならいいよ。周が選んで?」

ニコッ

「食べるよ」

「周、だめ。」

「え、なにが?」

「俺言ったでしょ?周のほんとの笑顔見れるように頑張るって。そんな作り笑いして欲しいわけじゃないから。嫌なら嫌って言っていいから。」

「・・・・・・」

「わかった?」

「別に嫌なわけじゃない。笑ったのは、癖だ。笑えばみんな機嫌良くなるから。」

「俺は笑っても笑ってなくても周がいればそれで嬉しいから。お昼は一緒に食べよう。」

「うん。」

しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

隠れSubは大好きなDomに跪きたい

みー
BL
⚠️Dom/Subユニバース 一部オリジナル表現があります。 ハイランクDom×ハイランクSub

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】

彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』 高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。 その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。 そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?

こじらせΩのふつうの婚活

深山恐竜
BL
宮間裕貴はΩとして生まれたが、Ωとしての生き方を受け入れられずにいた。 彼はヒートがないのをいいことに、ふつうのβと同じように大学へ行き、就職もした。 しかし、ある日ヒートがやってきてしまい、ふつうの生活がままならなくなってしまう。 裕貴は平穏な生活を取り戻すために婚活を始めるのだが、こじらせてる彼はなかなかうまくいかなくて…。

麗しの眠り姫は義兄の腕で惰眠を貪る

黒木  鳴
BL
妖精のように愛らしく、深窓の姫君のように美しいセレナードのあだ名は「眠り姫」。学園祭で主役を演じたことが由来だが……皮肉にもそのあだ名はぴったりだった。公爵家の出と学年一位の学力、そしてなによりその美貌に周囲はいいように勘違いしているが、セレナードの中身はアホの子……もとい睡眠欲求高めの不思議ちゃん系(自由人なお子さま)。惰眠とおかしを貪りたいセレナードと、そんなセレナードが可愛くて仕方がない義兄のギルバート、なんやかんやで振り回される従兄のエリオットたちのお話し。完結しました!

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子

葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。 幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。 一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。 やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。 ※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...