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嫌い
しおりを挟む「ここが今日から周の部屋ね。当分はベッドの上での生活になるけど、歩けるようになったらまた家の中紹介するから。」
「・・・うん。」
10畳ほどある部屋にはクローゼット、ベッド、机、ソファと生活に必要そうなものは全て揃っていた。
「周、あの家にはもう帰さないからね。周が帰りたいって言っても絶対に帰さない。」
「・・・うん。」
僕に帰る場所なんてない。
「僕は何をするの。誰に抱かれればいいの。何の仕事をすればいいの。」
こんなに優しくされるだなんて、何の見返り求める気なんだ。
またおっさんに抱かれるのか。
「周、こっち見て。」
そう言われてれおんの方を見る。
「周が何と言おうと、これだけは言っておく。そんなこと2度とさせない。君の体は君のものだ。愛してない相手とそんな行為しなくていい。君のこれまでを否定するわけじゃない。君の未来のために言ってるんだ。」
偉そうに。
僕が助けて欲しいときに日本にいなかったくせに。
僕のことなんて忘れてたくせに。
みんなみんな、僕のこと、見捨てたくせに。今更なんなんだよ。
死ねたかもしれないのに治療までして。
信用したところでどうせ手のひら返すんだ。
嫌いだ。
お前なんか嫌い。
お前の周りのやつも嫌い。
医者も嫌い。
何より、僕は僕が嫌いだ。
「周、言葉にしなきゃ俺わかんないよ。周の辛い時にいなかった俺に何言われても響かないのかもしれない。
ごめんね。でもこれだけ、聞いて?
俺はずっとずっと周のこと思っていたよ?」
「・・・そんなの嘘。」
嫌いだ。れおんなんて、嫌いだ。
「嘘じゃない。俺もうアメリカで飛び級して大学卒業までしてるのに高校通ってるのは周がいると思ったからだよ。
周に会いたかったからだよ。」
「・・・・・・」
うるさい。偽善者。
嫌いだ。嫌いだ。
「周のこと忘れたことなんてなかった。
信じてもらえないかもしれないけど、俺、ずっと周のこと好きなんだ。」
今さら、何言うんだこいつ。
好き?僕のことが?
・・・・・・・・・
「うるさい!!!!!!!」
「周?」
「うるさいうるさいうるさい!!偽善者!!!うるさい!!嫌いだ!お前なんか嫌いだ!!大っ嫌いだ!!!みんな嫌いだ!!みんな嫌い!!何もかも嫌いだ!!!」
嫌いだ。全部。全部。
うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい
---ギュッ
「うん。嫌いでいいよ。周、嫌いって言葉でも何でもいいから、外に出して。自分の中に閉じ込めないでよ。」
「・・・・・・」
「ごめんね。もっと早く助けなくちゃいけなかった。なのに今更好きだなんて言ってごめん。今更助けたって偽善者だって言われるのも仕方ないよね。」
「・・・・・・」
「周、これから俺の全部をかけて君の本当の笑顔取り戻せるようにする。君に誓う。」
「・・・・・・どうせ、お前も僕を道具として使うんだろ。」
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