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「優、手繋ぐ?」

「繋ぐ!!!」

学校を出てそのままマンション方面へと向かう。行き先はこの間見つけたカフェだ。

ケーキのイートインができて紅茶とフレッシュジュースが美味しいらしい。土日に前を通ると行列ができている時もあるくらいの人気店だけど、今日は平日だし大丈夫、、なはず。

「ママ、今日来てくれてありがとう。これまでの参観日の中で1番楽しかった!!俺すごい張り切っちゃった!!」

「うん、俺こそいかせてくれてありがとうな。何回も泣きそうになるくらい優が頑張ってるの見れて嬉しかったんだ、俺。優の学校で優の授業見て、一緒にご飯食べて、一緒に帰るなんて最高の1日だった。すごい幸せだった。」

「この1日中参観日のオープスクールは毎年あるから来年も来てくれる?あと、普通の参観日も。」

「絶対行くよ。優の姿見に絶対に行く。」

参観日ってなんであるんだろうって昔は思ってた。俺は楽しみになんてしてなかったし、親が来てみんなソワソワしていつもより授業の進行遅かったりいつもは暴れたり嫌なこと言うやつも親が来るから大人しかったり・・・偽りの状態見せて何になるんだろうって思ってた。

ただ単に俺には親がいなくて参観日が嫌だっただけなんだけど。

でも今日、親として行って分かった。どんな姿だって子供が一生懸命頑張っている姿を見ることに意味があったんだなって。子供の成長を見ることのできる貴重な機会なんだなってそう思ったんだ。

「ママ!ついたよ!!入ろう!!!」

「お、本当だ。結構混んでるけど座れるかな。とりあえず、入ろっか。」

店内に入るとケーキの甘い匂いが漂ってくる。すご、若い女の人ばっかりだ。

店員さんに案内してもらったのは奥の個室だった。今テラス席もオープン席もいっぱいだからって。

俺としては優とゆっくり話せるからラッキーだったけど。

「ほら優、どれにするんだ?」

「俺、このいちごのタルトがいい!!ママは?どれにするの?」

いちごのショートケーキに、モンブランにチョコに色々ありすぎてわかんない、、。
ケーキほとんど食べたことないしなぁ。

あ・・・

「このおすすめのバスクチーズケーキってやつにしてみる。食べたことないし。優も食べれる?チーズケーキ。」

「うん!俺好き!!」

「じゃあこの2つにして、飲み物は?俺は紅茶にするけど優は?」

「俺このオレンジジュースにする!!」

「よし、じゃあ店員さん呼んで注文しよった。」

ケーキ2つとドリンクを頼むと優から意外な話がされた。

「ねぇ、ママって理玖おじさんと松本先生どっちが好きなの?」

「んっ、、ぶっ!!・・・は、、?え、?何急に・・・」

「だって、最近2人といる時とか2人の話する時いっつもちょっと顔赤いじゃん。だから好きなのかと思ってた!!」

「いや、そう言うのはよくわかんなくて・・・」

「でも理玖おじさんもうすぐいなくなっちゃうよ?」

「うん、、、そうだよな。」

優からそんな話されるとは思ってもいなかったから驚きと動揺が隠せない。

「俺はどっちがパパになってもいいよ。ママが俺のそばからいなくならないならそれでいい。もし、2人のどっちかと一緒になるために俺がママから離れなきゃいけなくなっても・・・我慢、できるように頑張るから・・・」

その言葉を聞いて優の隣の席に移動して抱きしめた。

「もし、もし俺が誰かと一緒になるって決めたとしたら。それは優も日和も陽介も全員一緒に受け入れてくれる人じゃなきゃ俺は受け入れない。俺にとってはお前たちが1番大事だから、それを超えるものはできないよ。同じくらい大事っていうのはあり得るけど、超えるのはあり得ないから。だからそこは心配しなくていいから。ずっと一緒にいるって言っただろ?せっかく一緒に暮らし始めることができたのにそんなこと言うな。な?」

「うん。ちょっと不安に思っちゃった、ごめん。」

「ううん、俺こそごめんな。優のその気持ちに気づいてやれなくて。」

「ねえママ、俺はまだ好きな子とか出来たことないからよくわかんないんだけどさ、ママが楽しくなる人生にしてね?ママのこと苦しめる人はだめだよ?」

「じゃあ、好きな人が出来たら優にチェックしてもらおうかな。この人どう?ってさ。」

「うん!!いいよ!!俺がチェックする!」

自分の親の恋愛事情に子供ってこんなに乗り気なもんなのか、、?無理してることはないのかな。

まだ環境が変わってそんなに経ってないしと思っていたけど、理玖さんは海外に行っちゃうし、優もこう言ってくれているんだから俺も少しづつちゃんと考えないといけないのかもしれない。

「おまたせしました~バスクチーズケーキといちごタルト、お飲み物です。」

キラキラ輝くケーキが届いたが俺の頭はさっきの話でいっぱいだった。
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