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「ほら着いたぞ。さっき予約したからすぐ入れる。」

着いたと言われて車を降りたそこには寿司ではなくて鮨と書いてあった。俺でも知ってる。この鮨の字の店は絶対に高い!

「はや君!ここ高いとこでしょ!俺そんなにお金持ってない!!」

「は?お前バカなんかよ。俺お前にアピールしたくてデート誘ってんだぞ?お前に財布出させるわけなくね?ったく、お前は美味い美味いって食えばそれでいいんだよ。」

「う、、でも・・・」

「いーから!な?」

「ありがとう・・・今度はもうちょっとリーズナブルなお店で俺がご馳走するね?」

「自販機のジュースでいいぞ。」

「もうちょっと高いのご馳走できるよ!!」

「じゃあ次に期待しとくな。ほら、行くぞ。」

このお店のランチは大将おまかせのお寿司が15貫も出てきてあら汁に茶碗蒸しにと大満足なコースだった。お寿司ももちろん美味しいんだけど、茶碗蒸しが美味しすぎて手が止まらなかった俺を見てはや君が笑いながらもはや君の分までくれた。食べきれないと言ったんだけど残ったら俺が食うからとはや君は譲らなかった。はや君の分の茶碗蒸しと自分の分のコース全部食べてしまった自分のお腹にびっくりした。

「数ヶ月前が嘘みてえだな。そんだけ食べれれば健康体だな。」

「食べ過ぎかな?」

「いんや、もっと食え。足りねえよ。まだまだガリガリなんだから食って寝て太らねえとな。」

ニヤニヤしながらそう言うはや君の表情は言葉とは裏腹に安心したような顔をしていた。今思えば、20数年ぶりにあった幼馴染があんな状態だったらって考えたら・・・俺なら心配で心配で仕方ないもんな。

お会計は知らぬ間に済んでいて、俺もはや君もトイレにも行ってないのになんで?と思ったけど多分聞いたって教えてくれないから聞かずにありがとうとお礼を言った。

「優帰ってくるまで少し時間あんだろう?ちょっとドライブしてから帰ろうぜ。」

「うん。ありがとうね、休みなのに。」

「休みだから、だよ。休みだからこそ好きなやつと過ごしたいんだよ。お前と過ごせるなら普段の疲れも吹き飛ぶからな。」

「ねえ、はや君にこんなこと聞くの申し訳ないんだけどさ。」

「?なんだ?なんでも聞けよ。遠慮すんな。」

「・・・好きってどんな感じなの?俺あんまわかんない。」

「んー、どんな感じ、か。難しいこと聞くな。たぶん、人によって違うんだろうけどよ。俺は、自分のものにしたいっていう独占欲もあるし相手に幸せになって欲しいっていう気持ちもある。好きって幸せなだけじゃねえよ?ドロドロした汚ねえ気持ちも生まれるしな。」

「ドロドロした気持ち?」

「あぁ。良くも悪くも自分の心がコントロールできなくなる感じだな。苦しい時もあるしな。って、なんか恥ずかしくなるからこのくらいで勘弁しろ。」

「うん・・・。」

苦しい気持ちもあるのか。なんか恋ってふわふわしてて幸せな感じかと思ってたのにな。

「お前も誰かを好きになれば分かる。それが俺なら最高なんだけどな。」

それを言われると・・・うぅぅ、、、

「まぁ、俺のことは気にすんな。俺はお前がわらってるのが1番だよ。さ、もうそろそろ優が帰ってくる時間だろ?最後にケーキ屋寄るから優に土産買ってこうぜ。」

「はや君も一緒に食べる?」

「いや、今日は俺満足したからいいよ。優にそろそろお前のこと返す。」

ケーキ屋に寄ってイチゴのショートケーキとチョコレートケーキを買ってはや君に自宅まで送ってもらった。帰り際のはや君はニコッと笑いながら去っていった。

「あれ?ママ!!」

「優!!おかえり!」

「ただいま!!今の松本先生?だよね?」

「うん。病院終わってから一緒にご飯行ってたんだ。あ、松本先生が俺と優にケーキ買ってくれたからおやつに食べよう?」

「ほんと!食べる!!」

「飲み物何がいい?前みたいにはちみつミルク作ろうか?」

「うん!この間のやつ甘かったし美味しかった!!はちみつ混ぜるの俺がやってもいい?」

「うん、お願いするよ。優はいつもお手伝いたくさんしてくれてママ嬉しいよ。」

「何でも言ってね!!俺何でもやるからね!!」

「さ、帰って手洗いうがいしたら一緒にケーキ食べよう。イチゴのショートケーキとチョコレートケーキ買ってきたぞ。どっちがいい?」

「ママと半分こする!!」

「いうと思った。どっちも食べれてお得だもんな。」

「うん!松本先生に今度お礼言わないとだね!」

「そうだな。今度一緒にお礼言おうな。」

好きっていうのは優に対する愛しさとは違う気持ちなんだろうな。俺にもいつか分かるんだろうか。

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