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「こんにちは~。」

「楓さん、優、いらっしゃい。」

柊家に行くと優のおじいさん、つまり柊家当主が直々に出迎えてくれた。

「おじいちゃん!!」

「お招きいただいてありがとうございます。」

この場所にもう一度来ることになるとは思わなかった。それに、ずっと蔵の中にいたからこうしてお屋敷をちゃんと見るのは初めてだ。ここに来た日は車で通っただけだったから大きい家っていうことしか覚えていなかったし。

こうしてみるとしみじみと思う。俺なんかには場違いすぎる場所だ。でも、こんなにすごい家で育っても優も理玖さんも金銭感覚がおかしくなってないんだよな。スーパーでもレストランに行っても俺との金銭感覚の違いを感じたことなんて一度もない。

それはきっとこの人の育て方なんだろう。当主ならば偉そうな人なのかと思ってみれば俺に頭を下げるような人だ。まだそんなに話したことはないけれど、話し方や表情が理玖さんによく似ている。

「ママ!!2人に会いに行こう?」

「・・・うん、そうだね。会いに行こう。」

この屋敷を熟知している優に手を引かれて屋敷の中へ進む。和風の屋敷だが床はクッションフロアになっているようで歩いていて心地よい。子供がのびのびと暮らせそうな家だな。

「日和!陽介!」

リビングの襖を優が開けると中に2人が揃っていた。2人で塗り絵をしていたようだが俺と優が来たことがわかるとその手を止めてこちらに歩いてきた。

「・・・おにいさ、、あ、、、マ、マ?」

「ママって無理して呼ばなくていいんだよ?この間みたいにおにいさんでいいんだよ?」

「うん・・・あのね!ひよね!ぬりえしてたの!!」

「俺、見てもいい?」

「うん!!」

日和がぬりえをとりに行くと、俺の足元で陽介が抱っこをせがんだ。小さいその体を抱え上げると俺の胸元の服をキュッと握ってくれて泣かずにいてくれることが嬉しかった。陽介は眠いようで目が半分閉じかけてしまっている。背中をトントンしてやると体を俺に預けてきたからしばらくこうしていれば眠るだろう。

「陽介、お昼寝の時間だもんね。」

「そうだな。優、陽介抱っこしながらでも俺の膝乗って大丈夫だぞ?」

優が寂しくなるのは嫌だ。2人と会うときには常に気をつけようと決めたことだ。

「ううん、大丈夫。でも、家帰ったらいっぱい甘えてもいい?」

「当たり前だろ。俺、優が甘えてくれなくなったら寂しくて泣いちゃうんだからな?」

「うん!」

「おにいちゃん!おにいさん!みてみて!!ひよね、ようちえんのうさぎさんかいたの!!」

ぬりえを持ってくると言っていたのに日和は自分で描いた絵を持ってきてくれた。
日和が持ってきてくれた絵は幼稚園で飼っているうさぎの絵で、この間餌やり当番だった時に抱っこして可愛いかったんだそうだ。それからずっと日和はうさぎにハマっていて毎日のようにうさぎの絵を描いているんだとか。

「ひよね!いつかうさぎさんと暮らす!!」

か、かわいい・・・

日和はこの家をいつも明るくしてくれるんだと理玖さんは言っていた。

「あれ?りくおじさんは?」

「理玖おじさんはおじいちゃんとお話ししてるからちょっと待ってような。」

「あ、そうだ。クッキー作ってきたんだけど食べる?俺と優で一緒に作ってラッピングしたんだ。」

「おやつ!食べる!!」

陽介は俺の腕の中で寝ちゃったけど日和は食べてくれるみたいだから優にカバンからクッキーを出してもらった。優はそのまま日和に食べさせてくれていて微笑ましい兄妹の光景になんだか胸が熱くなった。

「ねえおにいさん、おにいさんはひよのママなんでしょ?」

「・・・うん、そうだよ。」

「ひよのことすき?」

「大好きだよ!!!日和のことも、優のことも陽介のことも!!3人のことが大好きだ。お腹にいた時からずっと!」

「おにいちゃんがね、なんかいもひよにいったの。ママはすっごくやさしいよって。」

「優が、、?」

隣を見ると少し照れた優と目があった。優が何度も日和に話していてくれたんだな。

「ねえ日和?俺、日和のママになりたい。」

「・・・うん、いいよ。ひよね、ママとおにいちゃんとようすけといっしょにいる。」

「本当?嫌じゃない?無理してない?」

「うん、だってひよね、ひよのことすきっていってくれたのうれしかったから!」

全てを理解しているわけじゃないと思う。それでも、一緒にいたいとそう言ってくれたことはとてもとても大きな一歩だ。

優も喜んでくれて早速来週からは週末に2人が泊まりに来ることになった。本格的に一緒に暮らすのは理玖さんが出発した後になった。

俺と優は夕方に帰るつもりだったが、このまま夜は遅くなったけど日和の誕生日会のやり直しをすることになった。


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