51 / 74
51
しおりを挟む
「こんにちは~。」
「楓さん、優、いらっしゃい。」
柊家に行くと優のおじいさん、つまり柊家当主が直々に出迎えてくれた。
「おじいちゃん!!」
「お招きいただいてありがとうございます。」
この場所にもう一度来ることになるとは思わなかった。それに、ずっと蔵の中にいたからこうしてお屋敷をちゃんと見るのは初めてだ。ここに来た日は車で通っただけだったから大きい家っていうことしか覚えていなかったし。
こうしてみるとしみじみと思う。俺なんかには場違いすぎる場所だ。でも、こんなにすごい家で育っても優も理玖さんも金銭感覚がおかしくなってないんだよな。スーパーでもレストランに行っても俺との金銭感覚の違いを感じたことなんて一度もない。
それはきっとこの人の育て方なんだろう。当主ならば偉そうな人なのかと思ってみれば俺に頭を下げるような人だ。まだそんなに話したことはないけれど、話し方や表情が理玖さんによく似ている。
「ママ!!2人に会いに行こう?」
「・・・うん、そうだね。会いに行こう。」
この屋敷を熟知している優に手を引かれて屋敷の中へ進む。和風の屋敷だが床はクッションフロアになっているようで歩いていて心地よい。子供がのびのびと暮らせそうな家だな。
「日和!陽介!」
リビングの襖を優が開けると中に2人が揃っていた。2人で塗り絵をしていたようだが俺と優が来たことがわかるとその手を止めてこちらに歩いてきた。
「・・・おにいさ、、あ、、、マ、マ?」
「ママって無理して呼ばなくていいんだよ?この間みたいにおにいさんでいいんだよ?」
「うん・・・あのね!ひよね!ぬりえしてたの!!」
「俺、見てもいい?」
「うん!!」
日和がぬりえをとりに行くと、俺の足元で陽介が抱っこをせがんだ。小さいその体を抱え上げると俺の胸元の服をキュッと握ってくれて泣かずにいてくれることが嬉しかった。陽介は眠いようで目が半分閉じかけてしまっている。背中をトントンしてやると体を俺に預けてきたからしばらくこうしていれば眠るだろう。
「陽介、お昼寝の時間だもんね。」
「そうだな。優、陽介抱っこしながらでも俺の膝乗って大丈夫だぞ?」
優が寂しくなるのは嫌だ。2人と会うときには常に気をつけようと決めたことだ。
「ううん、大丈夫。でも、家帰ったらいっぱい甘えてもいい?」
「当たり前だろ。俺、優が甘えてくれなくなったら寂しくて泣いちゃうんだからな?」
「うん!」
「おにいちゃん!おにいさん!みてみて!!ひよね、ようちえんのうさぎさんかいたの!!」
ぬりえを持ってくると言っていたのに日和は自分で描いた絵を持ってきてくれた。
日和が持ってきてくれた絵は幼稚園で飼っているうさぎの絵で、この間餌やり当番だった時に抱っこして可愛いかったんだそうだ。それからずっと日和はうさぎにハマっていて毎日のようにうさぎの絵を描いているんだとか。
「ひよね!いつかうさぎさんと暮らす!!」
か、かわいい・・・
日和はこの家をいつも明るくしてくれるんだと理玖さんは言っていた。
「あれ?りくおじさんは?」
「理玖おじさんはおじいちゃんとお話ししてるからちょっと待ってような。」
「あ、そうだ。クッキー作ってきたんだけど食べる?俺と優で一緒に作ってラッピングしたんだ。」
「おやつ!食べる!!」
陽介は俺の腕の中で寝ちゃったけど日和は食べてくれるみたいだから優にカバンからクッキーを出してもらった。優はそのまま日和に食べさせてくれていて微笑ましい兄妹の光景になんだか胸が熱くなった。
「ねえおにいさん、おにいさんはひよのママなんでしょ?」
「・・・うん、そうだよ。」
「ひよのことすき?」
「大好きだよ!!!日和のことも、優のことも陽介のことも!!3人のことが大好きだ。お腹にいた時からずっと!」
「おにいちゃんがね、なんかいもひよにいったの。ママはすっごくやさしいよって。」
「優が、、?」
隣を見ると少し照れた優と目があった。優が何度も日和に話していてくれたんだな。
「ねえ日和?俺、日和のママになりたい。」
「・・・うん、いいよ。ひよね、ママとおにいちゃんとようすけといっしょにいる。」
「本当?嫌じゃない?無理してない?」
「うん、だってひよね、ひよのことすきっていってくれたのうれしかったから!」
全てを理解しているわけじゃないと思う。それでも、一緒にいたいとそう言ってくれたことはとてもとても大きな一歩だ。
優も喜んでくれて早速来週からは週末に2人が泊まりに来ることになった。本格的に一緒に暮らすのは理玖さんが出発した後になった。
俺と優は夕方に帰るつもりだったが、このまま夜は遅くなったけど日和の誕生日会のやり直しをすることになった。
「楓さん、優、いらっしゃい。」
柊家に行くと優のおじいさん、つまり柊家当主が直々に出迎えてくれた。
「おじいちゃん!!」
「お招きいただいてありがとうございます。」
この場所にもう一度来ることになるとは思わなかった。それに、ずっと蔵の中にいたからこうしてお屋敷をちゃんと見るのは初めてだ。ここに来た日は車で通っただけだったから大きい家っていうことしか覚えていなかったし。
こうしてみるとしみじみと思う。俺なんかには場違いすぎる場所だ。でも、こんなにすごい家で育っても優も理玖さんも金銭感覚がおかしくなってないんだよな。スーパーでもレストランに行っても俺との金銭感覚の違いを感じたことなんて一度もない。
それはきっとこの人の育て方なんだろう。当主ならば偉そうな人なのかと思ってみれば俺に頭を下げるような人だ。まだそんなに話したことはないけれど、話し方や表情が理玖さんによく似ている。
「ママ!!2人に会いに行こう?」
「・・・うん、そうだね。会いに行こう。」
この屋敷を熟知している優に手を引かれて屋敷の中へ進む。和風の屋敷だが床はクッションフロアになっているようで歩いていて心地よい。子供がのびのびと暮らせそうな家だな。
「日和!陽介!」
リビングの襖を優が開けると中に2人が揃っていた。2人で塗り絵をしていたようだが俺と優が来たことがわかるとその手を止めてこちらに歩いてきた。
「・・・おにいさ、、あ、、、マ、マ?」
「ママって無理して呼ばなくていいんだよ?この間みたいにおにいさんでいいんだよ?」
「うん・・・あのね!ひよね!ぬりえしてたの!!」
「俺、見てもいい?」
「うん!!」
日和がぬりえをとりに行くと、俺の足元で陽介が抱っこをせがんだ。小さいその体を抱え上げると俺の胸元の服をキュッと握ってくれて泣かずにいてくれることが嬉しかった。陽介は眠いようで目が半分閉じかけてしまっている。背中をトントンしてやると体を俺に預けてきたからしばらくこうしていれば眠るだろう。
「陽介、お昼寝の時間だもんね。」
「そうだな。優、陽介抱っこしながらでも俺の膝乗って大丈夫だぞ?」
優が寂しくなるのは嫌だ。2人と会うときには常に気をつけようと決めたことだ。
「ううん、大丈夫。でも、家帰ったらいっぱい甘えてもいい?」
「当たり前だろ。俺、優が甘えてくれなくなったら寂しくて泣いちゃうんだからな?」
「うん!」
「おにいちゃん!おにいさん!みてみて!!ひよね、ようちえんのうさぎさんかいたの!!」
ぬりえを持ってくると言っていたのに日和は自分で描いた絵を持ってきてくれた。
日和が持ってきてくれた絵は幼稚園で飼っているうさぎの絵で、この間餌やり当番だった時に抱っこして可愛いかったんだそうだ。それからずっと日和はうさぎにハマっていて毎日のようにうさぎの絵を描いているんだとか。
「ひよね!いつかうさぎさんと暮らす!!」
か、かわいい・・・
日和はこの家をいつも明るくしてくれるんだと理玖さんは言っていた。
「あれ?りくおじさんは?」
「理玖おじさんはおじいちゃんとお話ししてるからちょっと待ってような。」
「あ、そうだ。クッキー作ってきたんだけど食べる?俺と優で一緒に作ってラッピングしたんだ。」
「おやつ!食べる!!」
陽介は俺の腕の中で寝ちゃったけど日和は食べてくれるみたいだから優にカバンからクッキーを出してもらった。優はそのまま日和に食べさせてくれていて微笑ましい兄妹の光景になんだか胸が熱くなった。
「ねえおにいさん、おにいさんはひよのママなんでしょ?」
「・・・うん、そうだよ。」
「ひよのことすき?」
「大好きだよ!!!日和のことも、優のことも陽介のことも!!3人のことが大好きだ。お腹にいた時からずっと!」
「おにいちゃんがね、なんかいもひよにいったの。ママはすっごくやさしいよって。」
「優が、、?」
隣を見ると少し照れた優と目があった。優が何度も日和に話していてくれたんだな。
「ねえ日和?俺、日和のママになりたい。」
「・・・うん、いいよ。ひよね、ママとおにいちゃんとようすけといっしょにいる。」
「本当?嫌じゃない?無理してない?」
「うん、だってひよね、ひよのことすきっていってくれたのうれしかったから!」
全てを理解しているわけじゃないと思う。それでも、一緒にいたいとそう言ってくれたことはとてもとても大きな一歩だ。
優も喜んでくれて早速来週からは週末に2人が泊まりに来ることになった。本格的に一緒に暮らすのは理玖さんが出発した後になった。
俺と優は夕方に帰るつもりだったが、このまま夜は遅くなったけど日和の誕生日会のやり直しをすることになった。
219
お気に入りに追加
2,940
あなたにおすすめの小説
瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜
Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、……
「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」
この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。
流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。
もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。
誤字脱字の指摘ありがとうございます
夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子
葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。
幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。
一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。
やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。
※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
この愛のすべて
高嗣水清太
BL
「妊娠しています」
そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。
俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。
※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。
両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。
気付いたら囲われていたという話
空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる!
※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。
傾国の美青年
春山ひろ
BL
僕は、ガブリエル・ローミオ二世・グランフォルド、グランフォルド公爵の嫡男7歳です。オメガの母(元王子)とアルファで公爵の父との政略結婚で生まれました。周りは「運命の番」ではないからと、美貌の父上に姦しくオメガの令嬢令息がうるさいです。僕は両親が大好きなので守って見せます!なんちゃって中世風の異世界です。設定はゆるふわ、本文中にオメガバースの説明はありません。明るい母と美貌だけど感情表現が劣化した父を持つ息子の健気な奮闘記?です。他のサイトにも掲載しています。
浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした
雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。
遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。
紀平(20)大学生。
宮内(21)紀平の大学の同級生。
環 (22)遠堂のバイト先の友人。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる