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しおりを挟む「はぁぁぁ、楓君可愛すぎるよな~。」
「社長、仕事してくださいよ。あと、オーストラリアのインテンド社の方から大事な話があるとの連絡をいただきました。できるだけ早くアポを取りたいとのことです。」
「インテンド社?それはまた大企業からの連絡だな。話の内容は?」
「それが、直接話したいことなのでとはぐらかされてしまいまして・・・」
「そうか、明日なら時間が取れると連絡しておいてくれ。」
インテンド社はオーストラリアに本社を構える外資系企業だ。ヨーロッパ、アメリカにも手を伸ばしていて成長速度が早く世界中から注目されている。日本にも進出するのかもしれないな。
そんなことを考えていた次の日
「こんにちは、インテンド社の米田と申します。」
「柊です。よろしくお願いします。」
「実は我々は日本の企業と手を取り新たな事業を進めたいと考えていまして。そこでこの会社と提携させていただきたく思っています。社長は若くしてインテンド社を立ち上げました。あなたが会社を立ち上げた年齢が社長が起業した年齢と同じだったのであなたに近しいものを感じたようです。」
かなり喜ばしい提案だった。インテンド社と手を取ることができれば俺の会社の成長にもつながるし何より俺自信新しいことに挑戦できることが嬉しかった。
「そのお話、受けさせてください。」
「ありがとうございます!・・・ただ、社長はあなたに1年ほどオーストラリアに来て欲しいと言っています。新規事業の立ち上げのためお互いの社長が共に先頭に立ちたいと。」
「オーストラリアにですか・・・」
1年離れるくらいは会社的には大丈夫だ。優秀な社員たちもいるし、俺がしなければいけないことはリモートでも済む。
ただ・・・
いや、これもいい機会なのかもしれない。オーストラリアに行って自分自身の気持ちにも区切りをつけられるかもしれない。楓君が好きだ、でも俺は兄さんの弟。気持ちを伝える資格なんてない。兄さんたちの罪を償うため彼を支えると自分で決めたのに俺の中で欲がどんどん膨らむのをここ最近は強く感じる。
だから、
「お受けしますよ、オーストラリア行き。必ず成功させましょう。」
早速だが年明けからオーストラリアに旅立つことになった。時間もない中で必要な引き継ぎを終わらせなければいけないし忙しくなりそうだが少し楽しみな自分もいた。
楓君のことは逃げるようなことをしてしまうけれど、彼を幸せにするのはきっと俺じゃないほうがいい。俺が幸せにしたい、笑顔にしたい、そんな気持ちが無いわけじゃ無い。でも、好きだからこそ彼には笑っていて欲しいし幸せでいて欲しいから。
逃げる自分だけれど、オーストラリアに行くまでは楓君に会いに行っていいだろうか。楓君のご飯を食べてもいいだろうか。
迷う暇もなく俺は会社帰りに楓君の家を訪ねた。
---ピンポーン
インターホンを鳴らし中から出てくるのを待つ。ガチャっとドアが開いた先には楓君がいて少し驚いたようだが出迎えてくれた。
「どうしたんですか?お仕事帰りですよね?」
「楓君、俺年明けから1年ぐらいオーストラリアに行くことが決まったんだ。新規事業のためにね。」
「え・・・・、オーストラリア?外国?」
「うん。楓君と優のこと近くで支えたかったんだけど仕事で急に決まってね。伝えておこうと思って。」
「そうなんですね・・・少し寂しくなりますね。」
「楓君たちのことは松本先生もいるし、幹也先輩もいつでも力になるって言ってたから困ったら頼りなね。俺も出来ることはするけど物理的な距離があるから近くの人を頼るといいよ。」
「理玖おじさん、1年もいなくなるんだ。ときどき一緒に出かけるの楽しかったのに~。」
「ははっ、また帰ってきたらどっかいこうな。っていっても俺が帰ってくる頃には優はもう中学生になるもんな。日和も小学生になるか・・・きっと今よりみんなでかくなってんだろうな。楽しみにしているよ。」
「おじさん1年もオーストラリア行ってたら婚期逃すんじゃない?あ、それかオーストラリアで美女の彼女作るとか?」
「おっ、それいいな!きっと綺麗な人いっぱいいるだろうしな!!」
向こうにいる間に楓君を忘れられたらいいけど、どうだろうな。俺には難しいかもしれねえ。
物理的な距離で忘れられなかったら俺一生独身じゃねえの?それでもいいか、可愛い甥っ子姪っ子がいるしな。
そう思えると少し楽になる。
「理玖さん、出発はいつですか?」
「一応1月の2週目ってだけ決まってるよ?また日が決まったらおしえるね。」
「はい。あの、理玖さんにはすごくお世話になったからお礼したいんですけど何がいいですか?」
「お礼なんていいんだよ。当たり前のことをしただけなんだから。」
「いえ、俺がしたいんです!!」
「じゃあ、楓君のご飯食べさせて欲しいな。この間のご飯めちゃくちゃ美味かったからさ。」
「そんなことでいいなら!何回でも!何でも作りますよ!!」
「じゃあ御言葉に甘えるね。」
君の顔を目に焼き付けて、君の味を忘れないようにして俺は異国の地で君を忘れる努力する。
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