40 / 74
40 優side
しおりを挟む「日和が・・・?なんで?」
「朝ごはんが召し上がったあと遊様たちが来る前にお昼寝すると言ってお部屋に行かれたんです。先ほど起こしに行ったらいなかったのです。」
「屋敷内のどこかに行ったんじゃないのか?」
「敷地内を手分けして探していますが見つかっていません。今監視カメラの映像を確認しています。」
日和、どこに行ったんだ?今日は誕生日パーティーなのに・・・
「神林さん!!!!」
スーツを着た人が顔を真っ青にして入ってきた。日和のことが何か分かったのかな?
「わ、若奥様が・・・カメラに写っていました。日和様を腕に抱いて。」
この屋敷の人はおじいちゃんのことを当主様とか旦那様とか言う。亡くなったおばあちゃんのことを奥様。
だから、若奥様っていうのは・・・お母さんのことだ。
「義姉さんが日和を連れて行ったのか。とりあえず警察に連絡だ。あの人は子供達に許可なく会うことは許されていない。すぐに捜索してもらえ。あと神林、お前は義姉さんの実家に連絡しろ。日和を連れて行く可能性があるからな。」
おじさん・・・。俺は、俺はどうしたらいいんだ。
「優、お前は陽介と一緒にいてやってくれるか?急に屋敷内がバタバタしてて不安に感じているだろうから。な?」
「うん・・・」
おじさんに連れられて居間に行くと日和の誕生日パーティーのために飾りつけがされていてそこに今日の主役はいなくて、陽介は何か怖いのを感じ取ったんだろう泣いていた。
「陽介様、泣き止んでくださいまし。」
メイドさんがあやしているけど一向に泣き止みそうにない。俺は近づいて行って陽介の顔を覗き込んだ。
「陽介~泣いてるの誰だ~?兄ちゃんが来たぞ?」
「ぅ~にいにっ」
俺のことを視界に入れると抱っこをねだって手を伸ばしてきたので陽介を抱き上げる。
「陽介~大丈夫だからな。日和が帰ってくるまで兄ちゃんと待ってような?」
俺は、この数ヶ月ママのことにばかり必死で日和や陽介なら少しも気を回せなかった・・・
俺にとってママはたった1人で、大事な家族だけど日和や陽介も俺にとって大事な家族なのに。
家の人がほとんどみんな日和の捜索に出かけたので俺は陽介とたくさん遊んだ。日和が戻ってくるまで陽介を笑顔のままでいられるようしなくちゃと思って不安な気持ちが溢れて溢れそうだったのにそれを必死で押さえ込んだ。
大丈夫、みんながきっと日和のことを見つけてくれるから。
でもこの日、日和が帰ってくることはなかった。それだけじゃない、俺がここにいる間にママにも異変が起きていたことを俺は知らなかった。
<理玖side>
優をメイドに託し俺も日和を探しに辺りを回る。神林が聞いてみたところ義姉さんの実家にはいないようだ。昨日の夜から姿が見えなくて探していたと言っていたみたいだ。とりあえず、うちの者を義姉さんの実家に行かせてもし帰ってきたらその場で捕まえることにした。
だが、実家に帰らないのならどこに行ったんだ。世間にニュースが広まっているから顔は知られているしこの柊の土地の近くでは余計にだ。
---プルルルル
ん?幹也先輩?
「もしもし。」
「理玖か?俺の助手があの女を見かけたって今連絡来たんだけどお前知ってたか?」
「それが・・・」
俺はこの数時間で起きてことを幹也先輩に話した。すると先輩は少し考え込んでから
「お前、楓君のとこ行け。」
「え?なんで・・・まさか、、、」
「俺の後輩があの女を見かけたのは病院の近くの駅前だ。俺もすぐに行く!!」
それを聞いて俺はすぐに車を走らせた。病院まで車で20分と少し・・・車の中で松本先生に電話をかけるが出ない。診察中か、くそっ!!
せっかく笑顔で毎日過ごせるようになって退院する日を楽しみにしていたのに。また楓君が悲しくなるような泣くようなことになったらっ・・・
信号が赤になるたびに焦りが募る。普段赤信号になったからって何も思わないのにこんなふうに思っちまうなんて。
病院の中は走っては行けない。そんなこと分かっているけど今は許してくれと心の中で謝りながら楓君の病室に急ぐ。
病室が近づいてくると騒がしいのを感じる。病室の前につくと中から女の人の怒鳴り声が聞こえて先輩の予測が当たってしまったことを理解する。
急いでドアを開けるとベッドから落ちていて床に座り込んでいる楓君とそれを見下ろす義姉さん、その腕に抱かれながら泣きじゃくる日和。異様な光景だった・・・
「あ・・・理玖さん」
「理玖さんなんて呼んでるの。やっぱりΩは卑しいわね、自分の体使ってαを手玉にして恥ずかしくないのかしら?」
「・・・。」
あぁ、これが嫌だったんだ。初めて会ったあの日に見た希望なんて感じてないようなあの目。今の楓君はその時の姿に重なって見えてしまう。
「義姉さん、日和を返してください。」
「日和は私の子よ!!」
「義姉さん・・・自分たちのした罪を償ってくれよ。」
「親に捨てられて役にも立たないΩに役割を上げたのよ!!感謝してほしいくらいよ!!!」
この人には、何も伝わらないのか?
「あの・・・」
楓くん・・・?
236
お気に入りに追加
2,940
あなたにおすすめの小説
瞳の代償 〜片目を失ったらイケメンたちと同居生活が始まりました〜
Kei
BL
昨年の春から上京して都内の大学に通い一人暮らしを始めた大学2年生の黒崎水樹(男です)。無事試験が終わり夏休みに突入したばかりの頃、水樹は同じ大学に通う親友の斎藤大貴にバンドの地下ライブに誘われる。熱狂的なライブは無事に終了したかに思えたが、……
「え!?そんな物までファンサで投げるの!?」
この物語は何処にでもいる(いや、アイドル並みの可愛さの)男子大学生が流れに流されいつのまにかイケメンの男性たちと同居生活を送る話です。
流血表現がありますが苦手な人はご遠慮ください。また、男性同士の恋愛シーンも含まれます。こちらも苦手な方は今すぐにホームボタンを押して逃げてください。
もし、もしかしたらR18が入る、可能性がないこともないかもしれません。
誤字脱字の指摘ありがとうございます
夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子
葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。
幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。
一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。
やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。
※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
この愛のすべて
高嗣水清太
BL
「妊娠しています」
そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。
俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。
※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。
両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。
気付いたら囲われていたという話
空兎
BL
文武両道、才色兼備な俺の兄は意地悪だ。小さい頃から色んな物を取られたし最近だと好きな女の子まで取られるようになった。おかげで俺はぼっちですよ、ちくしょう。だけども俺は諦めないからな!俺のこと好きになってくれる可愛い女の子見つけて絶対に幸せになってやる!
※無自覚囲い込み系兄×恋に恋する弟の話です。
傾国の美青年
春山ひろ
BL
僕は、ガブリエル・ローミオ二世・グランフォルド、グランフォルド公爵の嫡男7歳です。オメガの母(元王子)とアルファで公爵の父との政略結婚で生まれました。周りは「運命の番」ではないからと、美貌の父上に姦しくオメガの令嬢令息がうるさいです。僕は両親が大好きなので守って見せます!なんちゃって中世風の異世界です。設定はゆるふわ、本文中にオメガバースの説明はありません。明るい母と美貌だけど感情表現が劣化した父を持つ息子の健気な奮闘記?です。他のサイトにも掲載しています。
浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした
雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。
遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。
紀平(20)大学生。
宮内(21)紀平の大学の同級生。
環 (22)遠堂のバイト先の友人。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる