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40 優side

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「日和が・・・?なんで?」

「朝ごはんが召し上がったあと遊様たちが来る前にお昼寝すると言ってお部屋に行かれたんです。先ほど起こしに行ったらいなかったのです。」

「屋敷内のどこかに行ったんじゃないのか?」

「敷地内を手分けして探していますが見つかっていません。今監視カメラの映像を確認しています。」

日和、どこに行ったんだ?今日は誕生日パーティーなのに・・・

「神林さん!!!!」

スーツを着た人が顔を真っ青にして入ってきた。日和のことが何か分かったのかな?

「わ、若奥様が・・・カメラに写っていました。日和様を腕に抱いて。」

この屋敷の人はおじいちゃんのことを当主様とか旦那様とか言う。亡くなったおばあちゃんのことを奥様。

だから、若奥様っていうのは・・・お母さんのことだ。

「義姉さんが日和を連れて行ったのか。とりあえず警察に連絡だ。あの人は子供達に許可なく会うことは許されていない。すぐに捜索してもらえ。あと神林、お前は義姉さんの実家に連絡しろ。日和を連れて行く可能性があるからな。」

おじさん・・・。俺は、俺はどうしたらいいんだ。

「優、お前は陽介と一緒にいてやってくれるか?急に屋敷内がバタバタしてて不安に感じているだろうから。な?」

「うん・・・」

おじさんに連れられて居間に行くと日和の誕生日パーティーのために飾りつけがされていてそこに今日の主役はいなくて、陽介は何か怖いのを感じ取ったんだろう泣いていた。

「陽介様、泣き止んでくださいまし。」

メイドさんがあやしているけど一向に泣き止みそうにない。俺は近づいて行って陽介の顔を覗き込んだ。

「陽介~泣いてるの誰だ~?兄ちゃんが来たぞ?」

「ぅ~にいにっ」

俺のことを視界に入れると抱っこをねだって手を伸ばしてきたので陽介を抱き上げる。

「陽介~大丈夫だからな。日和が帰ってくるまで兄ちゃんと待ってような?」

俺は、この数ヶ月ママのことにばかり必死で日和や陽介なら少しも気を回せなかった・・・

俺にとってママはたった1人で、大事な家族だけど日和や陽介も俺にとって大事な家族なのに。

家の人がほとんどみんな日和の捜索に出かけたので俺は陽介とたくさん遊んだ。日和が戻ってくるまで陽介を笑顔のままでいられるようしなくちゃと思って不安な気持ちが溢れて溢れそうだったのにそれを必死で押さえ込んだ。

大丈夫、みんながきっと日和のことを見つけてくれるから。

でもこの日、日和が帰ってくることはなかった。それだけじゃない、俺がここにいる間にママにも異変が起きていたことを俺は知らなかった。


<理玖side>

優をメイドに託し俺も日和を探しに辺りを回る。神林が聞いてみたところ義姉さんの実家にはいないようだ。昨日の夜から姿が見えなくて探していたと言っていたみたいだ。とりあえず、うちの者を義姉さんの実家に行かせてもし帰ってきたらその場で捕まえることにした。

だが、実家に帰らないのならどこに行ったんだ。世間にニュースが広まっているから顔は知られているしこの柊の土地の近くでは余計にだ。

---プルルルル

ん?幹也先輩?

「もしもし。」

「理玖か?俺の助手があの女を見かけたって今連絡来たんだけどお前知ってたか?」

「それが・・・」

俺はこの数時間で起きてことを幹也先輩に話した。すると先輩は少し考え込んでから

「お前、楓君のとこ行け。」

「え?なんで・・・まさか、、、」

「俺の後輩があの女を見かけたのは病院の近くの駅前だ。俺もすぐに行く!!」

それを聞いて俺はすぐに車を走らせた。病院まで車で20分と少し・・・車の中で松本先生に電話をかけるが出ない。診察中か、くそっ!!

せっかく笑顔で毎日過ごせるようになって退院する日を楽しみにしていたのに。また楓君が悲しくなるような泣くようなことになったらっ・・・

信号が赤になるたびに焦りが募る。普段赤信号になったからって何も思わないのにこんなふうに思っちまうなんて。

病院の中は走っては行けない。そんなこと分かっているけど今は許してくれと心の中で謝りながら楓君の病室に急ぐ。

病室が近づいてくると騒がしいのを感じる。病室の前につくと中から女の人の怒鳴り声が聞こえて先輩の予測が当たってしまったことを理解する。

急いでドアを開けるとベッドから落ちていて床に座り込んでいる楓君とそれを見下ろす義姉さん、その腕に抱かれながら泣きじゃくる日和。異様な光景だった・・・

「あ・・・理玖さん」

「理玖さんなんて呼んでるの。やっぱりΩは卑しいわね、自分の体使ってαを手玉にして恥ずかしくないのかしら?」

「・・・。」

あぁ、これが嫌だったんだ。初めて会ったあの日に見た希望なんて感じてないようなあの目。今の楓君はその時の姿に重なって見えてしまう。

「義姉さん、日和を返してください。」

「日和は私の子よ!!」

「義姉さん・・・自分たちのした罪を償ってくれよ。」

「親に捨てられて役にも立たないΩに役割を上げたのよ!!感謝してほしいくらいよ!!!」

この人には、何も伝わらないのか?

「あの・・・」

楓くん・・・?
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