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しおりを挟むもう裁判が始まってかなり経つからか記者の数は少なかったがいるいはいる。フードをかぶっている優にさらに車に積んでいた毛布を被せて隠した。これで後部座席を撮られても優の顔や姿が映ることはない。
俺はめちゃくちゃ撮られるが本家の警備が車を誘導してくれたおかげで思ったより早く敷地内に入ることができた。そのまま本宅へと向かい車を停めてから優に声をかけた。
「優、着いたぞ。」
「なんで本宅?」
「お前、日和にも陽介にも会ってなかっただろ?2人も会いたがってるし、まず2人に会ってから家に行こう。」
「あ、そっか。ねぇ、日和にはどこまで話してるの?陽介はまだ分かんないだろうけど、日和は急に父さんと母さんがいなくなっててパニックになってるんじゃないの?」
「あぁ。日和にはまだ本当のことを話していない。毎日お父さんとお母さんは?って言ってるみたいだ。今の状況では言っても本人に混乱を与えるだけだろうと黙っている。」
「いつ伝えるの。」
「裁判が終わるまでには伝えなくちゃいけねえ。義姉さんは兄さんほど罪は重くならねえから執行猶予がつく可能性が高い。そうなった時に接触されたら困るからな。兄さんはもうこの家から勘当されてるから敷地内には入ってこれないがどこで接触されるか分からねえ。」
「じゃあ今日伝えよう、俺もいるし。日和は俺に懐いてるから俺がいない時に伝えるよりはいる時に伝えた方がいいんじゃない?ママも2人のこと気にしてたし。」
「そうだな。」
急ではあるが今から日和に真実を伝えることになった。まだ4歳の日和にどこまで理解できるか分からないが伝えなくちゃいけない。
本宅の玄関に入ると小さな足音が聞こえて来て優に抱きついた。日和だ。
「お兄ちゃん!!!ひよあいたかった!!」
「日和、久しぶりだな。ごめんな?ずっと会えなくて。」
日和を抱っこした優はスタスタと居間へと進んでいき居間にいた陽介に近づき頭を撫でていた。
改めて見ると3人とも目が楓君とそっくりだな。兄さんに似ていたから疑うことがなかったが楓君を知ってからみてみると楓君にもそっくりだ。
・・・特に日和。
柔らかい雰囲気に笑った時の顔は楓君との親子関係が顕著に出ている。
楓君を知る者なら日和を見て親子だと思うだろう。
「ねえ日和?兄ちゃんから大事な話があるんだ。聞いてくれる?」
「うん!ひよいい子だから聞くよ!」
俺はやばくなった時に手助けしようと思いここは優に任せることにした。
「俺と日和と陽介には本当のママがいるんだ。俺たちの母さんは偽物なんだ。」
「ひよのおかあさんは1人だよ?」
「日和にはまだ難しいかもしれないけど、俺たちのことを産んでくれたママがいるんだ!!ママは!ずっと父さんと母さんに酷いことされてたんだ。だから父さんと母さんはおまわりさんに捕まったんだ。兄ちゃんは本当のママのところで暮らす。日和も陽介もママのところに行こう?」
「やだ!!!ひよのおかあさんはおかあさんだけだもん!!ママなんていない!その人が偽物だ!!その人がひよからおかあさんを取ったんだ!!」
「日和!!!!!ママのこと悪く言うな!!」
優が感情的になってしまったので止めに入った。泣きじゃくる日和を抱き上げてから優の頭を撫でてやると優の目からも涙が流れた。
嫌だよな、大好きなママのことをそんな風に言われたら嫌に決まってる。でもな、お前と違って日和には楓君の記憶なんて無いし日和にあるのはある日突然おとうさんとおかあさんがいなくなったって事実だけなんだよ。だから急に本当のママがいるなんて言われても理解できないんだ。
「おかあさ、ん、おとうさんっ」
居ない2人を呼んで泣き続ける日和に俺はかける言葉もなくただ抱きしめて背中を撫でてやることしかできない。
「日和、兄ちゃんは何度だって説明に来るよ。ママは、死にかけてたんだ。俺たちを産んで、父さんと母さんに酷いことされて、ご飯も食べられてなくて、歩くこともできなかった。最近やっと普通のご飯が食べられて、少しだけ歩けるようになったんだ。ママは俺たちのこと大好きだって言ってくれた。・・・あとね、日和はママにそっくりだよ。」
優はそう言い残すと取りに行きたいものをら取ってくると言って本宅を出ていってしまった。
「日和、難しい話してごめんな?お前には何のことか分かんないよな。今はまだいい。でも、日和の大好きな兄ちゃんの話はまた聞いてやってくれ。な?ほら、おじさんは日和の笑った顔が好きだぞ~?」
お腹をこしょこしょとくすぐるとさっきまで泣いていた日和が口を開けて笑ってくれた。
「ねえおじさん、ひよの誕生日お兄ちゃん帰って来てくれる?」
「俺が連れてくるよ。」
日和の誕生日は楓君の誕生日のちょうど1週間後。この本宅で誕生日パーティーをすると父さんから聞いている。そこに優を連れて行く約束をして、日和と陽介が眠るまで遊びに付き合って車に戻ると手提げカバンを持った優が車の近くで待っていた。
「それか?取って来たかったものって。」
「・・・うん。」
「優、元気出せ。今度日和の誕生日にまた来よう。すぐには分かってくれなくてもいつか分かってくれる日が来る。」
「うん、そうだね。」
「んで?その中身なんなんだ?」
「言わない。ママに誕生日の日にあげるやつだから。」
優の暗い顔は病院に戻るまで晴れることはなかった。
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