伸ばしたこの手を掴むのは〜愛されない俺は番の道具〜

にゃーつ

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「そう!正解!!」

「な、なんで・・は、はやくんがお医者さん?」

物心ついたときから施設で一緒で、少し引っ込み思案だった俺をいつも隣で笑顔にしてくれていた俺の1番の友達。

でも、彼が里親に引き取られることになり、それ以来会うことはなかったのに。まさかこんな形で再開するだなんて思ってもなかった。

「お前の主治医俺だからさ!まあ気楽になんでも言えよ。特別にその子もここにいつでも泊まれるように病院に許可も取ってやったから。」

「本当?」

「あぁ。そのことお前の精神状態的にもその方がいいだろうしな。ただし!飯は1日3回ちゃんと食うことと、リハビリが始まったら頑張ること約束できるならな!」

「するっ!約束するよ!」

そんなことで優と一緒にいられる時間が増えるならいくらでも約束する。優が泊まりたいって言ってくれるかどうかは分からないけど・・・何時間も一緒なのは嫌かもしれないし。

でも、もしも優がまだ一緒にいたいって言ってくれるなら俺は遊と一緒に過ごしたい。

「お前そんな楽なことでって思ってるんだろけどな、お前の今の体の状態とこれまでの生活考えたら1日3回食べるのはかなりきついんだからな?覚悟しとけよ?」

「え、そんなに、、、?でもはやくん、俺施設にいた時は3回食べてたよ?妊婦の時も2回食べてた。」

「はぁ?妊婦なのに2回しか食べてなかっただと?どこのヤブ医者だそいつ。」

「はやくん、、そんなに怒らないで。優が起きちゃう。」

はやくんは昔から声が大きくてうるさい。なのに、学校の先生の前とか初めて会う人の前ではびっくりするくらい大人しくなる。

「松本先生って、こんなに賑やかな人だったんですね、、、」

ほら、理玖さんも驚いてる。園長先生は知ってたからあんまり驚いてないけど、もう30になるのにまだこんなに声大きくてうるさいのかって思ってるはず。だって俺もそう思った。

「あ、はやくん。蔵から出る時に怒ってくれてありがとう。俺、あの時は訳わかんなくてパニックになってたけどはやくんの言葉はすっと入ってきた。そのおかげで優と会えたから、ありがとう。」

「感謝にはおよばねえよ。お前は俺の特別だからな。」

特別?なんで?友達の中の友達?

やけに強調された特別と言う言葉に少しクエッションが浮かんだがはやくんは昔からこういうよく分からないことを言うのでまあいっかとすぐに考えるのをやめた。

「んでな、楓。さっきの話だが、今日から食事を1日3回取ってもらう。今の状態で大量に取るのは危険だから少しの量から食べてもらうが、かなりきついと思う。その対策としてお前の息子と一緒に食事しろ。」

「優と?」

「あぁ。朝と夜は優の学校の時間に合わせて、昼は1人になるがそこは頑張れ。優の食事も病院で用意してやる。副院長のこの俺の権限でな。息子と食べれば早く元気になりたくて食べるだろ。」

優と一緒に食事ができる。すごい、本物の親子みたいだ。優に言ったら喜んでくれるかな。

あ、でも・・・それって優は毎日ここに来なきゃいけないんじゃ?それは優の負担になるかもしれない。それに・・・

「楓君、今何考えてる?優の負担になるとか考えてる?」

「理玖さん・・・。優は学校もあるし、それにその、、、、」

「柊の本家にいなきゃいけないんじゃないかって?」

その言葉に頷いた。俺は確かにこの子を産んだけど、戸籍上は違う。戸籍上は柊さんと奥さんの子供だ。だから、優がここに通うなんて難しいことは分かる。

「そこは心配しなくて大丈夫なんだ。・・・実は今ね、兄さんと義姉さんは家に帰れる状態じゃないというか逮捕がほぼ確定している状態なんだ。」

え?逮捕?な、なんで?
意味が分からなかった。

俺は理玖さんから俺が助け出されたと同時に何が起こったのかを聞いた。柊さんと奥さんの俺への行いは罪に問えるそうで理玖さんとその知り合いの探偵さんで証拠を集めそれをマスコミに公開し、被害届の提出と民事訴訟の書類も出したとのことだった。園長が家族代理として判を押してくれたそうだ。

「そ、それって、、優は?したのふたりはどうなるんですか?俺、俺は別にどうでもいいんです。子供達が悲しい思いするのが1番嫌です!!!」

嬉しいとは思えなかった。優は小さい頃から俺の記憶があったらしく奥さんが本当の母じゃないって知っていたけど、下の子2人はまだまだお父さんとお母さんに甘えたい年頃だ。そんな小さな子たちを親から引き離してしまったの?

「落ち着いて。下2人は柊を出て嫁いで行った俺の妹が預かってる。俺含め、今回のことに関わった人たちの総意として3人とも戸籍上も君の子供とし、君が一緒に暮らして育てていくべきではないかと考えてる。君が望めばだけどね。」

「俺が、、3人と、、?」

夢でしか見なかった光景が、掴めるのか?無理だと諦めていたそんな生活が叶うっていうのか?

「すぐには無理だと思う。まず君が元気になって退院しなくちゃいけないからね。だけどそんな未来を考えてみて欲しい。兄さんたちは確実に罪に問われる。だが子供達に何か危害が起こらないように準備に時間をかけた。下2人は妹の家で元気にしているし、幼稚園も新しいところに通わせる。優は同じ小学校に通うが私立小学校だからセキュリティーは万全。送り迎えもするようにするから安全だ。優にも妹のところに行くことは提案したけど、できるだけママの近くにいたいと拒否されたんだ。」

優・・・。

さっきまででたくさん泣いたのにまた涙が出そうだった。

「今はたくさんのことが一気に起きて分からないことだらけだと思うけど、子供たちと暮らす未来のことは考えて欲しい。」

子供たちと暮らす、未来・・・
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