伸ばしたこの手を掴むのは〜愛されない俺は番の道具〜

にゃーつ

文字の大きさ
15 / 87

15☆

しおりを挟む

病室には点滴に繋がれ眠っている楓君の姿があった。番解除の処置がされた後なんだろう首には包帯が巻かれていた。蔵は少し薄暗かったから、明るいところでよく見ると外に出ていなかったから異様に肌は白くて頬はこけ、見えている腕は怖いほどに細い。

先ほど園長に施設にいた時の写真を見せてもらったがその写真が嘘なんじゃないかと思うほどに変わり果てた姿。

園長はその場に崩れ落ちた。

「、っぅ、、結婚なんてさせなければ、、」

言葉で聞いた時には現実味のなかった事実が目の前の姿から嫌なほどに襲ってくる。楓君のことを知らない人だってこの姿を見たら何か外的要因があったことをら察する。29歳とは思えないその姿、そしてこれから先以前のように完全に元気になる可能性はほぼ0に近いという説明を松本先生に受けた。

人を殺すことの方が罪は重い。だが、これから先の人生も傷つけ、心も傷つけた。考え方によっては殺人よりも残忍なことをしていることを兄さんと義姉さんは分かっているのか?あと数時間で彼らはマスコミと世間の注目の的。バッシングは免れないだろう。それに、今回彼が目覚めたら被害届を出そうと動いている。幹也先輩が以前勤めていた弁護士事務所の所長が協力してくれることになり民事でも訴訟を起こす予定だ。

「園長先生、大丈夫です。俺が絶対に楓を元気にしてみせます。俺が医者の家に引き取られたのはこのためだったんだと思えてならないんです。大事な友達救えなくて医者なんて名乗れない。俺の医者人生全てをかけて楓のことを救ってみせます。」

「隼人くん、、そうね、信じなきゃ。こんなに優しい子を神様が見放すはずないわ。きっと元気になる。」

松本先生の話だと今は眠っているだけなのでじきに目を覚ますとのことだった。

少ない量でも1日3回食べるところか始め、徐々に量を増やしていくみたいだ。それと同時にホルモン剤を使用して番欠乏による身体機能の低下を回復させる。

あの蔵から出す時に兄さんを求めていたから目が覚めて番解除されたことがわかると パニックになる可能性が高い。それに、治療をしていく中でも混乱するかもしれない。

そのため、兄さんの弟である俺のホルモンを治療に少量使うみたいだ。詳しいことは専門的すぎて分からないが、徐々に兄さん離れさせるそうだ。

優を会わせるかどうかは目が覚めた時の状況によって松本先生が判断してくれることになった。

「理玖おじさん、ママ元気になる?」

「優、大丈夫だよ。松本先生がママのこと治してくれるよ。」

「先生、ママを治してください。俺、ママに授業参観来て欲しいんです!」

「授業参観?」

松本先生も園長も不思議そうな顔をしていたので優がお腹の頃の記憶や産まれた時の記憶があることを話した。2人はかなり驚いていたが、優に楓君のことを聞いてくれていて優もずっと話したかったママの話を俺以外にもできることが嬉しいのか子供らしく饒舌になっていた。

2人も楓君の小さい頃の話を優にしてくれていて、実は小さい頃からずっと茄子が嫌いで食べられなかったんだとしると優はすごく嬉しそうな顔をして

「俺も!俺も茄子が嫌いなんだ!ママと一緒だ・・・ママと一緒。」

共通点を見つけられたことがよっぽど嬉しかったのか目の前で聞いていた俺に同じ話を聞かせてくれた。

まだ目が覚めない楓君の病室で今後のことを全員で話し合う。自分の父親と母親の話だからと優は部屋を出そうとしたが頑として出ようとはしなかった。

「柊結弦の方は証拠が十分ですが、妻の方は何も見つかっていない。里子だと聞かされていたと言われればそれで終わりになります。」

「・・・お母さんはママのこと嫌いだって言ってたよ?お父さんに。それに、お母さんの日記に全部書いてあるよ。」

日記だと!?自分の字で書いてあるものなら十分な証拠になるじゃないか!!

「優、それどこにあるかわかる?」

「うん、お母さんのドレッサーの中だよ!」

留守にしている今なら取れる。そうすれば兄さんも義姉さんも立件できる。

「他に、お父さんが大事なもの隠してるところとかわかる?」

「お父さんは書斎の机の2段目の引き出しの中に入ってるよ。」

優がこんなにも大事な情報を知っていたとは。知っていたというか気づいたという感じか?

「優、ありがとうな。おかげでママのことをいじめていた人を全員懲らしめられる。でもいいのか?それはお前のお父さんとお母さんなんだぞ?」

「・・・別にいい。俺はママの記憶があるからお母さんのことはずっと他人だと思っていたし、時々見ていたママがいつも苦しそうなのに放置していたお父さんも嫌いだ。それに、2人してママの悪口よく言ってた。俺を産んでくれたママなのに。お腹にいた俺にあんなに優しく話をしてくれたママなのに。だからいいんだ。」

「優、、、」

「俺、もう2度とママに会えなくなってもいいよ?ママが俺に会いたくなかったら会わなくていい。でも、ママのことだけは元気にしてほしいんだ。」

きっと抱きしめてほしいだろうに。

さっき言ってたように授業参観にもきてほしいはずなのに、、、。

「優君、俺の話を聞いて?」

松本先生、、?
しおりを挟む
感想 36

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻本作品(オリジナル)の結末をif(運命の番)ルートに入れ替えて、他サイトでの投稿を始めました。タイトルは「一度目の結婚で愛も希望も失くした僕が、移住先で運命と出逢い、二度目の結婚で愛されるまで」に変えてます。 オリジナルの本編結末は完全なハッピーエンドとはいえないかもしれませんが、「一度目の〜…」は琳が幸せな結婚をするハッピーエンド一択です。

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

昔「結婚しよう」と言ってくれた幼馴染は今日、僕以外の人と結婚する

子犬一 はぁて
BL
幼馴染の君は、7歳のとき 「大人になったら結婚してね」と僕に言って笑った。 そして──今日、君は僕じゃない別の人と結婚する。 背の低い、寝る時は親指しゃぶりが癖だった君は、いつの間にか皆に好かれて、彼女もできた。 結婚式で花束を渡す時に胸が痛いんだ。 「こいつ、幼馴染なんだ。センスいいだろ?」 誇らしげに笑う君と、その隣で微笑む綺麗な奥さん。 叶わない恋だってわかってる。 それでも、氷砂糖みたいに君との甘い思い出を、僕だけの宝箱にしまって生きていく。 君の幸せを願うことだけが、僕にできる最後の恋だから。

運命よりも先に、愛してしまった

AzureHaru
BL
幼馴染で番同士の受けと攻め。2人は運命の番ではなかったが、相思相愛だった。そんな時、攻めに運命の番が現れる。それを知った受けは身籠もっていたが、運命の番同士の子供の方が優秀な者が生まれることも知っており、身を引く事を決め姿を消す。 しかし、攻めと運命の番の相手にはそれぞれに別の愛する人がいる事をしり、 2人は運命の番としてではなく、友人として付き合っていけたらと話し合ってわかれた。 その後、攻めは受けが勘違いしていなくなってしまったことを両親達から聞かされるのであった。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

運命じゃない人

万里
BL
旭は、7年間連れ添った相手から突然別れを告げられる。「運命の番に出会ったんだ」と語る彼の言葉は、旭の心を深く傷つけた。積み重ねた日々も未来の約束も、その一言で崩れ去り、番を解消される。残された部屋には彼の痕跡はなく、孤独と喪失感だけが残った。 理解しようと努めるも、涙は止まらず、食事も眠りもままならない。やがて「番に捨てられたΩは死ぬ」という言葉が頭を支配し、旭は絶望の中で自らの手首を切る。意識が遠のき、次に目覚めたのは病院のベッドの上だった。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

処理中です...