95 / 105
94☆
しおりを挟むルイが最初に出発してから2年が経った。半年ぐらい経ったときに一度帰ってきてくれてからは行きっぱなしで1年半顔を見ていない。
本来はもう少し早く帰る予定だったが、ルイと公爵はみるみるうちに他国との関係を現時点よりもプラスにしていった。
これまで友好国だった国や、関わりのなかった南の大陸の国々をはじめ敵対していた国とまで友好条約を結んだことには僕も父上も驚きを隠すことはできなかった。それほど偉業を達成したのだ。
公爵から送られてくる手紙での報告によるとルイの功績がかなり大きいとのことだった。それを見るたびにルイが頑張っているんだと少しでもルイを感じることができて嬉しく思うと同時に、やはりこの腕の中に閉じ込めていたい、誰にも見られたくないと嫉妬心を燃やしてしまう。
1年ほど前からはルイのいない生活に耐えることが難しくなり自室をほとんど使わずにルイの部屋で寝るようになった。掃除もしてあり、シーツや布団も洗濯しているためルイの匂いが残っているわけではないがこの部屋にはなんだかルイがいるようなそんな感覚がして少しだけ寂しさが和らぐのを感じた。すぐにまた寂しくはなってしまったのだけれども。
それでも、自分の部屋にいるよりはマシになった。
ルイの名前はあっという間に国内に広がった。外交の才があり誰もに等しく優しい女神のような人だと。僕が公務で外に出るたびに、
「ルイ様とはどんな方なんですか?」
「天使のような容姿だと伺いました。さぞ素敵な方なんでしょう。」
「俺はこの間トンタに商売に行ったらルイ様をお見かけしたんだ!!それはもう美人だったぞ!!」
そんな声が聞こえてきた。僕だってもう1年以上会ってないし見てないのになんでどこのやつかも知らない男がルイを見ることができるんだと心が嫉妬に支配される。
ルイは僕のだ。僕の婚約者だ。
国内でもこんなに注目の的となっているルイは他国でどれほどなんだろう。私よりカッコよくて心が広い人に出会ったらその人の方が良くなってしまうんじゃないか。
ルイが1番好んで読んでいる本に出てくる王子様は誰にでも分け隔てなく優しくて、姫のすることなんでも許してくれて、大きい心を持ってて、それはそれは容姿端麗な人。そんな人が現実にいてルイと出会ってルイに惚れてしまったら、、、僕みたいにルイのしたいことに嫌々なんて言わず快く送り出すんだろう。
そんなことを想像しているかも分からないそんな相手に嫉妬の炎をメラメラと燃やす。
そんな日々の繰り返しだった。日々の癒しも無くなってしまったこの2年のたった1つの心の支えになったことは、僕の功績が大きくなればそれは他国にも伝わる。このサベルクの地でルイに負けないように頑張れば頑張るほどルイに僕の名が届く。ルイが少しでも僕の存在を感じられるように、できれば毎日。
もちろん国のためでもある。ルイがもたらしてくれた平和の糸を切れないほど太く頑丈にするのが僕の役目。ルーチェとスカナとの争いで小さくはあったが不安の芽は各地に芽生えていた。ルイが帰ってくるまでに国内を安定させることが最優先となった。
毎日、毎日、どれだけ頑張ってもルイは帰ってこない。手紙は届くから無事は確認できる。でも、ルイのいない日々の寂しさから抜け出せる日は来るのかと不安が募る毎日だった。
枕の下に、ルイからもらったクッキーの袋とありがとうと書かれた小さな手紙を入れて夜寝る前に見るのが日課になっていた。
だから今日も視察終わりに手紙を見て疲れを少しでも癒そうと考えていた。
「おかえりなさいませ、殿下。」
「レスター、起きててくれたのか。遅くなった。」
「本日もルイ様のお部屋で休まれますか?」
「・・・あぁ。」
「今日はサプライズがあるかもしれませんね。」
サプライズ?なんか差し入れでもあるのか?
まあいい、今日はなんだかどっと疲れた。すぐに風呂に入って眠ろう。
「誰だ。」
眠ろうとベットへ向かうと布団が膨らんでいる。敵か?僕の命を狙ったか?
いつでも攻撃魔法を放てるよう体制を整えていると、ひょっこりと目が見えた。
夢にも妄想にも出てきた目が。
「ぇ、、、ル、イ?」
132
お気に入りに追加
3,560
あなたにおすすめの小説
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
優しく暖かなその声は(幽閉王子は最強皇子に包まれる・番外編)
皇洵璃音
BL
「幽閉王子は最強皇子に包まれる」の番外編。レイナード皇子視点。ある日病気で倒れたレイナードは、愛しいアレクセイに優しくされながら傍にいてほしいとお願いしてみると……?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています
ぽんちゃん
BL
病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。
謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。
五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。
剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。
加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。
そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。
次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。
一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。
妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。
我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。
こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。
同性婚が当たり前の世界。
女性も登場しますが、恋愛には発展しません。
婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する
135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。
現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。
最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
キミと2回目の恋をしよう
なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。
彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。
彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。
「どこかに旅行だったの?」
傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。
彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。
彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが…
彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?
【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜
ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。
そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。
幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。
もう二度と同じ轍は踏まない。
そう決心したアリスの戦いが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる