【完結】18年間外の世界を知らなかった僕は魔法大国の王子様に連れ出され愛を知る

にゃーつ

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ルイが最初に出発してから2年が経った。半年ぐらい経ったときに一度帰ってきてくれてからは行きっぱなしで1年半顔を見ていない。

本来はもう少し早く帰る予定だったが、ルイと公爵はみるみるうちに他国との関係を現時点よりもプラスにしていった。

これまで友好国だった国や、関わりのなかった南の大陸の国々をはじめ敵対していた国とまで友好条約を結んだことには僕も父上も驚きを隠すことはできなかった。それほど偉業を達成したのだ。

公爵から送られてくる手紙での報告によるとルイの功績がかなり大きいとのことだった。それを見るたびにルイが頑張っているんだと少しでもルイを感じることができて嬉しく思うと同時に、やはりこの腕の中に閉じ込めていたい、誰にも見られたくないと嫉妬心を燃やしてしまう。

1年ほど前からはルイのいない生活に耐えることが難しくなり自室をほとんど使わずにルイの部屋で寝るようになった。掃除もしてあり、シーツや布団も洗濯しているためルイの匂いが残っているわけではないがこの部屋にはなんだかルイがいるようなそんな感覚がして少しだけ寂しさが和らぐのを感じた。すぐにまた寂しくはなってしまったのだけれども。

それでも、自分の部屋にいるよりはマシになった。

ルイの名前はあっという間に国内に広がった。外交の才があり誰もに等しく優しい女神のような人だと。僕が公務で外に出るたびに、

「ルイ様とはどんな方なんですか?」

「天使のような容姿だと伺いました。さぞ素敵な方なんでしょう。」

「俺はこの間トンタに商売に行ったらルイ様をお見かけしたんだ!!それはもう美人だったぞ!!」

そんな声が聞こえてきた。僕だってもう1年以上会ってないし見てないのになんでどこのやつかも知らない男がルイを見ることができるんだと心が嫉妬に支配される。

ルイは僕のだ。僕の婚約者だ。

国内でもこんなに注目の的となっているルイは他国でどれほどなんだろう。私よりカッコよくて心が広い人に出会ったらその人の方が良くなってしまうんじゃないか。

ルイが1番好んで読んでいる本に出てくる王子様は誰にでも分け隔てなく優しくて、姫のすることなんでも許してくれて、大きい心を持ってて、それはそれは容姿端麗な人。そんな人が現実にいてルイと出会ってルイに惚れてしまったら、、、僕みたいにルイのしたいことに嫌々なんて言わず快く送り出すんだろう。

そんなことを想像しているかも分からないそんな相手に嫉妬の炎をメラメラと燃やす。

そんな日々の繰り返しだった。日々の癒しも無くなってしまったこの2年のたった1つの心の支えになったことは、僕の功績が大きくなればそれは他国にも伝わる。このサベルクの地でルイに負けないように頑張れば頑張るほどルイに僕の名が届く。ルイが少しでも僕の存在を感じられるように、できれば毎日。

もちろん国のためでもある。ルイがもたらしてくれた平和の糸を切れないほど太く頑丈にするのが僕の役目。ルーチェとスカナとの争いで小さくはあったが不安の芽は各地に芽生えていた。ルイが帰ってくるまでに国内を安定させることが最優先となった。

毎日、毎日、どれだけ頑張ってもルイは帰ってこない。手紙は届くから無事は確認できる。でも、ルイのいない日々の寂しさから抜け出せる日は来るのかと不安が募る毎日だった。

枕の下に、ルイからもらったクッキーの袋とありがとうと書かれた小さな手紙を入れて夜寝る前に見るのが日課になっていた。

だから今日も視察終わりに手紙を見て疲れを少しでも癒そうと考えていた。

「おかえりなさいませ、殿下。」

「レスター、起きててくれたのか。遅くなった。」

「本日もルイ様のお部屋で休まれますか?」

「・・・あぁ。」

「今日はサプライズがあるかもしれませんね。」

サプライズ?なんか差し入れでもあるのか?

まあいい、今日はなんだかどっと疲れた。すぐに風呂に入って眠ろう。

「誰だ。」

眠ろうとベットへ向かうと布団が膨らんでいる。敵か?僕の命を狙ったか?

いつでも攻撃魔法を放てるよう体制を整えていると、ひょっこりと目が見えた。

夢にも妄想にも出てきた目が。

「ぇ、、、ル、イ?」




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