【完結】18年間外の世界を知らなかった僕は魔法大国の王子様に連れ出され愛を知る

にゃーつ

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「わぁぁぁぁあ!!!!!すごい!!」

大きく口を開けて目も開き夜空を見上げ、笑っているのに涙を流し泣いているその姿は儚くも美しかった。

街の職人に頼み、特大の青い花火を打ち上げた。盛大に、何発も。

以前、アンナさんから聞いた。
ルーチェでは王族の誕生日に男ならば青、女ならばピンクの花火を打ち上げることで国全体で祝うのだと。

使用人の立場の自分ではどうすることもできなかったが自分の誕生日の日に夜空に上がるピンクの花火を悲しそうな目で見ていたルイの姿が忘れられないのだと。

だからルイの19歳の誕生日にはこの盛大な花火で祝おうと決めていた。ルーチェで見るより大きくて、明るいものを。青一色といっても濃い青から水色まで様々な青を使い鮮やかに仕上げた。

この光景を目に焼き付けるようにして空を見上げているルイの手をそっと握ると、こちらを向くことなくギュッと握り返してくれた。

ルイに出会ってからの1年という月日はあっという間のようなすごく長かったようなどちらとも言えない期間だった。今横にルイがいることが幸せでたまらない。来週からルイが他国へと旅立つことが寂しくて仕方なく思っているが、僕とルイはたった数ヶ月しか言葉を交わして、同じ時間を過ごすということをしていない。僕が鳥になっていた時期は長かったが僕が勝手にそばにいた感じだしな。

「ねぇ、セド。」

「ん?」

「僕あの日、セドと会えてなかったらどうなってたかな。まだあの城にいたかな。」

本当にただ疑問に思ってるという目で聞いてきたことを僕自身も実は何度か考えた。あの日、父と母がパーティーを勧めなければ行かなかったし、抜け出して会場を出て右に行かずに左に行けばルイに会わなかったんだから。

でも、僕の出した結論は

「きっと僕たちならあの日で会わなくても、別の形で会ってたと思うよ?」

「そっか。そうだね。」

「ルイ。来週からの外交楽しみ?」

「うん。でも、寂しいは寂しいよ?セドと毎日一緒にいて、最近は寝るのも一緒だから。」

「うん、僕も寂しい。」

「じゃあ一緒だね。」

一緒、か。

「セド、不安?」

「うん。ルイが自由に好きなことをするのは僕の望みだ。でも、飛んだまま戻って来ないんじゃないかって。ごめん、一回納得したのにまた掘り返して。」

ルイが新しいものにキラキラした目で向き合ってたのは僕が1番見てきた。これまで頭にインプットしたことをアウトプットする楽しさを知ったルイは生き生きしていて楽しそうだ。

「僕、セドの横に立つのにふさわしくなって帰ってくるから。待ってて?」

「今度は僕が迎えに行くんじゃないんだね。僕は待つ側か。」

「そうだよ。今度は僕が自分の足でセドのところへ戻ってくるよ。」

そんなまっすぐな目をされたら応援する以外の選択肢なんてなかった。









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