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しおりを挟む僕がしたいことは大きく二つ。
一つ目はルーチェの孤児院や教会に捨てられた初子であった男の子たちの支援の活動。
ルーチェ国内に何百人もの男の子が初子であるがために酷い扱いを受けていた事実が明るみになった。
同じ立場だった僕だからこそできることがあるのではと考えたのだ。
そして二つ目、これがセドが納得してくれなかった大きな要因だ。
これまで自覚していなかったが、このサベルクに来てから自身の言語能力が他者よりも高いことを知った。
セドはこの大陸全体を平和にしたいと言っていた。僕はその力になりたい。
アスバル家は外交の要となっている家だ。今回の争いにより多少影響が出てしまうため来月からお父様は友好がより深くなるようにと各国に赴く。
僕はそれについていきたいと希望した。セドは反対するというよりは、離れたくないと2週間説得が必要だった。
今回の外交は何度かサベルクには戻ってくるが約1年かけて友好国を回るのだ。セドの公務と被ってしまえば1年会えない可能性もある。
僕だって寂しいけれど、僕はセドと結婚するんだから。この国の人々にも、他国の人々にも祝ってもらえるような受け入れてもらえるような人物になりたい。
そう伝えると渋々納得してくれた。
「来月にはアロスタに行く予定だ。それについてくるというのか?」
「はい、ついていきたいです。僕なんでもします。」
「私としては、この大陸で使うほとんどの言語を話すことのできるルイがついてきてくれればすごく心強い。でもいいのかい?セドリック様と離れ離れになってしまうんだよ。」
セドとはずーっと一緒にいるって思ってたけど、僕はまだまだ世界を知らない。
もっともっとこの広い世界を目にして成長したい。
「僕、胸を張ってセドの横に立ちたいんです。」
「そうか。分かった、来月からの外交に同行してもらおう。」
「ありがとうございます!!」
よかった、許可をもらえた。
もう1ヶ月を切ってる。あと3週間ほどか、、、。ここで1週間過ごすから、セドと過ごせるのは2週間。
今、お父様と話したばかりなのに残り2週間だと思っただけで決心したはずの心が揺れる。
「ルイ、花や植物が咲いてる庭園を見にいかないか?うちには珍しい他国のものもたくさんあるんだぞ?」
「ベルト兄様!!行きたいです!!」
「よし!行こう!」
ベルト兄様が連れて行ってくれた庭園には僕が図鑑でしか見たことのなかった植物や、図鑑でも見たことのないものがたくさんあって、
「ベルト兄様!!これなんですか!!僕見たことないです!」
と質問すると、多分本当は詳しくないのに僕のために調べてくれたんだろう説明をしてくれた。だってベルト兄様、ずっと手にメモを持ってるんだもの。
でも、僕に話すときにはそのメモを後ろに隠すから少し面白くなってしまった。
ちょっとしたいたずら心で
「ベルト兄様これは?」
と知っている植物を指差す。
「あぁそれは、キジカクシ科のアベベという植物だ。」
「ベルト兄様、これはアガベですよ?ふふっ」
「ルイ~!知っててからかったな~!!」
「わ~!!!ははっ!!ごめんなさーい!!」
こいつ~とベルト兄様にくしゃくしゃにされながらもなんだかんだ初めての兄弟としての時間を楽しむことができたんだ。
「・・・なあルイ?本当に大丈夫なのか?セドリックと離れて。1人になるわけではないが、この国に来てからずっとセドリックと一緒だっただろう?」
「うん、、、、。でも、セドってすごくかっこいいんです。カッコ良過ぎていつも胸がドキドキしてしかたないくらい。今の僕じゃセドの横に立てないから。セドが国を守る人になるなら、僕は国を守るセドを守れる人にならなくちゃいけないから。」
「そっか。アスバル家次男は男前だな。兄様は誇らしく思うよ。」
と言って頭を撫でてくれた。
この日から1週間、お父様やお母様、兄様や姉様といろんなことをして過ごした。領地の視察に連れて行ってくれたり、動物園っていうたくさん動物のいるところに連れていってくらたり、お母様とクッキーを作ったり、兄様に乗馬を習ったり、、、本当にたくさんのことをした。家族で過ごす時間というものを経験させてくれた。
毎日全力ではしゃいで、毎日のように疲れて眠った。ずーっと1人で寝るかセドと寝る毎日だったから、お父様とお母様に挟まれて眠ったのはすごく緊張したけど、すごく、すごく嬉しかった。
僕にとってはすごく楽しくて濃い1週間だったけど、
「ルイ、迎えに来たよ!!早く帰ろ!!」
セドにとっては寂しい1週間だったのかな。
そう言ってセドが迎えに来たときにはみんなして笑っていた。
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