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しおりを挟むあの日から、2週間が経った。
ルーチェとスカナは新しい王を立てるか、サベルクの国土としサベルクのものとなるかの国民投票が行われて両国とも後者が選ばれサベルクはさらに国土を広げた。
ラフマはほとんどの国土はいらないかわりにルーチェの南側の山を欲した。なんでも、獣人たちの生活に必要な植物や薬草が多く生息している場所らしい。
そして、ルーチェ教は完全に廃止となった。文献は全て燃やされ、今後一切進行することが禁じられた。もちろん、不満は出たがこれまでに王政がしてきたこと、国王の本当の初子であったマリクさんに起きた悲劇と、僕がされていたことが公表されたことと、実際に平民貴族問わず男であったがために酷い扱いを受けたもの、捨てられたもの、女として育てられたものもいたため、最終的には納得の声が多く上がった。
「生まれたときの性別で扱いが変わるなんておかしい。」
セドは何を言われてもそう唱え続けてくれた。今回のことと僕のことで国民全員が自慢したくなるような、誇れるような国にすると改めて思い、サベルクだけでなくこの大陸全体を平和にしたいとそう誓うと言っていた。
ルーチェとスカナの国王たちが懐に溜め込んでいた財宝は両国の貧しさに苦しんでいた国民や初子だったため迫害されたものたちのために使われることになった。特にルーチェの国庫にはこれまでの国の状況と辻褄の合わないほどの財宝があった。国民から搾取した財で贅沢生活を送っていたんだ。
そもそも、ルーチェ教は昔の国王が国民から税を多く巻き上げても反乱が起きないようにと定めた宗教であることが国庫内にあった書物に書いてあった。初子が男だと不幸になるというのは、この宗教を伝え始めた当時の国王の前の代までは3代連続初子が女でありかなり政治が上手くいっており財も潤っていたのに対して当時の国王は初子が男であったことと天災に見舞われ国の財力が落ちていた。そのことに腹を立てた国王が自身の子が男であるからだということで悪いのは初子である王子だと自身を正当化した。
「あの国王が死んだのは因果応報という言葉がぴったりだ。先祖は自分の私利私欲のために恐ろしい教えを国民に半強制的に根付かせ、自身も最後まで自身の欲を優先した。」
「うん。」
ニアたちも、罪人の乗る馬車に乗り北の地へ向かったらしい。もう一生、会うことはないだろう。血の繋がった母親や妹たちがそんな目にあったのに僕自身は何も感じなかった。ざまあみろとか、悲しいとか、そんなことも感じず何も感じないという言葉が相応しいほどに何も。
それが異常に感じてセドに言ってみると
「ん?ルイは僕のことだけ考えていればそれでいいんだよ?」
なんで答えにならない答えをもらった。
僕はというと、帰ってすぐに国王様から話を聞いたお父様とお母様、ベルト兄様に叱られた。なんて無茶をしたんだと、セドと同じくもうしないようにと怒られ、その後褒めてもらえた。
さらにお父様は、マリクさんが戻ってきたらアスバル公爵家に養子に来たければ受け入れることを伝えると言ってくれた。僕と異母兄弟であるマリクさんを戸籍上本当の兄弟にと提案してくれた。
マリクさん本人がどう思うかは本人に言ってみないと分からないけれど、僕らのことを考えてくれているお父様に胸がほっこりした。
そして今日から1週間、僕はセドと離れてアスバル家に滞在する。
僕がしたいことを叶えるためにお父様と話し合いをしにきた。
なぜ今日からかというと、僕がしたいことをセドに納得してもらうのに2週間かかったからだ。
「セド!行ってきます!!」
「んー、公爵にここに止まって貰えば?僕、ルイたちと離れるの嫌なんだけど。」
「んー!!」
最近のセドはすぐにキスして誤魔化そうとする!!
「んぁ、っ、、、んっ、ゃ、セドっっ!誤魔化しちゃダメ!!そうやってすぐ大人のキスするんだから!!」
「だって、、。」
「大丈夫だよ!!セドも今週はお仕事忙しいんでしょ?帰ってきたらまたキスしよ?」
そう、セドは今週スカナとルーチェの現状を視察に行くんだ。その土地をどの貴族に納めてもらうべきかそろそろ決めなくちゃいけないんだって。
国王様とセドはその貴族をルーチェとスカナの国内から選ぶ予定でいるみたいだから今大忙しなんだって。
「ほら!もうそろそろお父様来るから行こ?」
そう言って手を出すと素直に握ってくれるから、なんだか可愛い。
僕は今日初めてセドと離れて生活する。少し緊張するけどお父様とお母様が馬車の中でずっと手を握ってくれた。
「ルイ、今後のことで話したいことがあると言っていたがそれはなんなんだい?」
「お父様、いつか僕お父様について外交がしたいです。」
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