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しおりを挟むなんのアイデアも思い浮かばないまま2週間が過ぎてしまった。
僕自身には何も変化のない2週間だったが、1週間ほど前からセドの様子が少しおかしかった。何か言いたげな顔で僕を見るんだ。
だが、なんとなく聞きづらくてそのままにしていた。
僕は今セドと共に国境近くの街の宿にいる。といってもセドと行動を共にする許可をもらったわけではない。セドにもお父様にもたくさんお願いして、国境近くまでは一緒に行ってくれることになった。
それ以上は譲歩できないと宣言もされたけど。
国王様にセドに、国王様の側近のリーベさんも同じ宿に滞在している。この3人がこの軍の長になる。
「そういえば、セドには側近の人いないの?あ、レスターさんは?」
「レスターは執事だからね。戦いには参加しないさ。僕には側近候補が1人いるよ、今度紹介するね。面白いやつだから。」
そんな普段と変わらない会話をしていると余計に不安が膨らむ。
---ギュッ
「セド、怪我しないでね。」
「大丈夫だよ、僕が強いの知ってるでしょ?」
「・・・うん。」
知ってる。誘拐された時屋根吹っ飛ばしてたから。
でも、不安は尽きない。
「ルイ、もしかしたら今日だけで終わるかもしれないけど、何日も続く可能性もある。それに、人が死ぬこともある。それが戦争だ。僕たちはそれを起こす。大切な人が傷つけられたから。」
「僕のせい?」
「違うよ。この国は人を傷つけ過ぎている。ルイにルカにアンナさん、それにサベルクに逃げてくる人は年間何百人もいるんだ。平民の中には1日の食事も満足にできない人々がたくさんいる。王家にはたくさんお金があるのにね。」
僕はルーチェの城から出たことがないからルーチェという国をちゃんと見たことがない。城は立派な作りで元家族の着ていた服も煌びやかだったし、宝石もたくさんついていた。
でもセドから聞いた話では亡命してくる人々は皆栄養失調でギリギリ生きていられた人ばかり。
サベルクに来てからサベルクのしてきた政策をたくさん勉強した。そして、ルーチェの歴史もサベルクに伝わっている分で習った。
僕の頭は僕の中に根付いているルーチェ教を否定する。ちゃんと頭では分かってる。
だから今回のことも王家にとっては悪いことが起こるが一部の平民にとっては国が良くなることなのかもしれない。
血を流さないのが1番だけれど、それも難しいのかもしれない。
「国境近くのこの街からルーチェに文を出す。降伏するか戦うか。」
戦うことをあの人たちが選択すればすぐさまこの街から進軍する。同じことがラフマとの国境でも行なわれる。
セドは僕と約束してくれた。民間人は殺さないと。
ルーチェの城を目指し城に攻め入ると。
僕はここで待つだけだ。
「国王様!!ルーチェからの返答が来ました!」
「中身は!!!」
---降伏はしない。我が国から攫った者も返してもらう。---
そう書かれていた。血を流す選択をとったということだ。
「うむ、仕方ないな。全軍!進軍の用意をしろ!!明朝に立つ!!」
国王様の声が響いた。
戦争が、始まる。
「ルイ、今日は早めに夕食とって眠ろう?」
僕が動揺したのが伝わったんだろう。セドが部屋へ運んでくれた。
「ルイ、ルカ、聞いて。僕は明朝、ルーチェの国内に入って攻撃を仕掛ける。君たちが生まれた国だけど、僕は容赦しない。明日が勝負の日だ。明日決着がつかなければ長い戦いになってしまう。だから、僕も父もレオ殿も、明日1日で勝負をつけるつもりでいる。」
「うん。」
「だから、明日の夜またここで会おう?明日の夜も会えなきゃおやすみのキスできないもんね?おはようとおやすみのキスは毎日欠かさない。ね?約束する。」
「うん、今日の分は今するの?」
「するよ。ルイをチャージしていかなきゃ。」
「んっ、、」
「んっ、、次はルカにね。」
2回目のキス、、。
戦争なんて始まってほしくない。このまま時間が止まればいいのに。
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