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しおりを挟むルイに改めてプロポーズをした日の夕食時にその情報は入った。
---スカナがルーチェに接触した---
「やはりスカナか。」
「殿下、先ほどルイが犯人がぺぺ語を話していたと言っておりましたよね。ということは、、、」
「ルイ君がぺぺ語を話せるとはな。あの子は、、どれほどの才を隠し持っているんだ。」
「父上、公爵、ルイはぺぺ語を話しているのを聞いたと言っていました。」
ぺぺ語は、スカナの古い公用語だ。他国に出回る文献で習得することはほぼ不可能と言われているので僕も含めこの国の中枢の者で話せる人数は0。
そのためぺぺ語はスカナが秘密裏の作戦を話すときや他国に忍び込んだ際に使われる。
会話や作戦を聞かれても内容がわからなければ意味がないからな。
「陛下、殿下、今回の件とスカナがルーチェに接触したこと、偶然とは思えませんな。」
「そうだな。スカナがルーチェの土地を利用して我が国に攻めて来ることが可能であれば我が国が警戒しなければいけない国境がこれまでと比べ物にならないほど広くなる。それが狙いだろう。」
「ルイを返せという抗議文は来続けているのですか?」
「元々は宛先が父上宛だったものが最近僕宛になり、送り主がルーチェ国王だったのがルイの双子の妹であるニナになりました。」
僕の最近の憂鬱はこれだ。
ニナからの手紙が1日に何通も届くのだ。
最初は
---ルイを返してください---
---ルイといると不幸になります---
などのルイ中心のものだったが、どんどんと内容がおかしくなってきた。
---セドリック様と結婚するのは私です。---
---セドリック様、大好きです。---
---セドリック、愛してるわ---
---セドリック、愛し合っているのに国が違うとなかなか会えなくて寂しいわ---
と、こんな風に段々と僕の恋人かのような内容になってきたのだ。
気持ち悪くて頭がおかしそうになる。
「何か仕掛けてくるかもしれませんね。セドリック様、今度こそ、ルイをよろしく頼みますぞ?」
今回ルイを守れなかった僕なのにそう言ってくれる公爵に感謝だな。
「はい。公爵、父上、僕の考えを少し話させていただいてもいいでしょうか?」
「かまわん。」
以前ベルトから話を聞いた時から考えていたことを父たちに話す。
「それは無謀ではないでしょうか。」
「でも、試してみる価値はあるでしょ?」
僕の提案に最終的には賛成してくれた父上と公爵。僕はルイを本当の意味で自由にするために全力を尽くす。
そう思いプロポーズしたんだ。
このプロポーズの3日後のことだ。
「殿下!!城の前にルーチェの第一王女がおいでです。」
ルイの双子の妹か。国境よりルーチェの馬車が入ったと連絡は来ていた。
ルーチェはまだ友好関係のある国。お互いの国の行き来に制限はない。いつか乗り込んでくるとは思っていたがこの幸せな時に来やがって。
あのプロポーズの夜からルイは僕にたくさん好きと言ってくれるようになった。
朝と夜にキスするのも日常になった。
僕は今、世界で1番幸せな自信がある。
なのに、ルイの記憶を呼び起こすような存在がこの城に入るなんて。
「おい、城の一階の客間に通しておいてくれ。」
「かしこまりました。一階でよろしいのですね?」
この城に客間は5つある。重要度の高いお客様になればなるほど上階の客間に通すのだ。本来国王や王女であれば最低でも4階、基本は5階にお通しする。
「あぁ。あとレスター、客間に結界を張っておいてくれるか。ルイが行きたいと言えば連れて行く。」
「ルイ様をお連れするんですか?ー
「行きたいと言えば、だ。もちろん2人になんてさせねぇ。」
「かしこまりました。私も同席させていただきますからね。」
「あぁ、頼む。」
レスターの結界は強力だ。何が起こっても大丈夫だろう。
ルイはこの時間なら部屋で本を読んでいる頃だろう。
部屋のドアを開けるとサベルクの古語で描かれた物語を読んでいるようだった。集中した真剣な眼差しを本に向けていたのに、僕が部屋に入った途端ふっと微笑んで本を閉じこちらにむかってきてくれる。あのルーチェの奴らを一生恨むが、ルイという存在をこの世に生み出してくれたことだけは感謝だな。
「セド、おかえり!」
「あぁ、ただいま。」
これだ、この時間が至福だ。
公爵がただいまとおかえりをルイに教えてからというもの、僕が執務から帰ってくる時には城内での執務の際であってもルイは必ずおかえりと言ってくれる。
「ルイ、ちょっとトラブルが起きちゃったんだ。」
「トラブル?」
「うん。・・・君の妹が訪ねてきている。」
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