【完結】18年間外の世界を知らなかった僕は魔法大国の王子様に連れ出され愛を知る

にゃーつ

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まばたきすら惜しく思う。

そう思うほどに僕の胸を締め付け、鼓動を早め、高鳴らせた。

さまざまな動きの中どういう仕組みになっているのか見ても分からないほどの多種多様な魔法を繰り出しているのに、視線は僕から外さない。音楽が鳴っているわけでも何か言葉を発しているわけでもない。魔法による音とセドの靴音、息、衣の掠れる音、その全てによって僕に好きだと言っている。言葉じゃないのにそう確信できるほど魂が込められた舞。

力強いのにしなやかで艶美

この人は初めて会った時から美しいと思った。だが今この瞬間の彼は普段が霞んでしまうんじゃないかとそう思うほどに美しかった。

こんな美しい人が僕と結婚したい?僕のことが好き?

普段の僕ならそう疑い自分は相応しくないとそう思うだろう。

だが、そんな思いが起きないほどにセドの、セドリックの気持ちが伝わってくる。

僕は、この人に愛されている。

自信をもって言える。

舞が、終わる。

もっと見ていたいと思うような気もするんだが始まった瞬間からこの終わる瞬間までの全てが計算し尽くされたかのように舞の終わりが壮大なラブレターの終わりとしてスッと心に入ってくる。

もう一度同じものを見たいとか、終わらずに踊り続けて欲しいとかじゃない。

その感情を遥かに上回るほどの満足感を与えてくれた。

これ以上ないほどのセドの想いは僕の過去のこととか、不安とか、後ろ向きな考えとかを全部包み込んでくれる。

無くなるわけじゃない。マイナスな気持ちを無くすんじゃなくて、それごと僕を包み込んでくれる。

セドの腕が下り、部屋全体が明るくなった途端に僕は走った。

人生で初めて走った。

これまで狭い空間にいて走ることなんてなかったから走るという単語しか知らなかった。

走り方なんて知らなくてきっとスピードは歩く時とそんなに変わらない。

それでも走った。

この壮大なラブレターに返事をしなければいけないから。

少し息の上がっているセドに飛びつくとふらつくこともなく僕を抱き止めてくれたから、その勢いに任せて彼の唇に自分の唇を密着させた。

目を閉じた際に流れた涙は僕の気持ちがこのキスだけではセドに伝えきれなくて溢れてしまった分だ。

「セド、ありがとう。僕、セドの気持ちが嬉しい。」

「ルイ、僕と出会ってくれてありがとう。改めて言わせて欲しい。






僕と結婚してください。

僕の婚約者になってください。」

「うん!なる!!!僕をっ、セドの婚約者にしてください!!僕と、将来結婚してください!!」

この日のことを一生忘れないと思うんだ。どれだけ幸せなことがあってもこれを超えられるものなんて絶対ない。

セドが最近難しい顔してる日が多いからきっと何か良くないことが起きてるんでしょ?お父様とルイには聞かせないでおこうって言ってるのを聞いてしまったから、僕に関することなんだって分かってる。

もう僕諦めない。

たとえルーチェがどうなろうとセドの側を離れない。

こんなに僕に気持ちをぶつけてくれた人に対して、僕が諦めちゃうのは失礼だから。

僕が諦めるという行為をすることはセドを傷つけることになるから。

だから僕は諦めない。

そう誓えたからこのプロポーズの3日後の今日、ニアを目の前にしても僕はあの頃と違う。

ただ何も言わずに耐えるだけの僕じゃない。

怖い感情は無くならないけど、セドの想いに応えられるように生きたいから

「セドリックの婚約者は私よ!!!!お前なんかただの疫病神よ!!!死ね!!!!」

そう言われたって

「セドの、婚約者はっ・・僕だ!」

初めてニアに言い返せた。

セドは、僕を強くしてくれた。

僕を、1人の人間にしてくれた。
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