【完結】18年間外の世界を知らなかった僕は魔法大国の王子様に連れ出され愛を知る

にゃーつ

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 初めに気がついた時、連れ戻されたんだと思った。暗さが同じだったから。

 でも、僕の周りにも何人かいることに気づいてよくよく部屋を見渡してみると壁の蜘蛛の巣に埃だらけの床、タバコの匂い、至る所があの部屋とは違うことを理解した。

 手首と足首は縛られていて、体を自由に動かすことはできないが顔は自由に動くので周囲を確認してみると僕を含めて3人がこの部屋に捕まっているみたいだ。

 1人は豪華なドレスを着た僕と同じくらいの年齢の女の子。もう1人は10歳くらいの男の子。2人とも僕より先に目が覚めていたみたいで震えながら涙を流している。男の子が姉様って言っているから2人は姉弟なんだろう。

 なぜだろう、僕は怖くない。

 僕は心のどこかで諦めていたのかもしれない。いつか連れ戻されるって。

 サベルクのお父様やお母様、にい様、姉様、それにセド。

 みんなに会いたいという気持ちはあるし、みんなに会えなくなるのが悲しいという気持ちもある。

 ふわふわとどこか遠くから見ているような、そんな気持ち。

 ルーチェに帰ったら殴られるかな。

 セドにはもう会えないかな。

 鳥になってまた来てくれるかな。

 ぼーっとそんなことを考えていると、キィと軋むような音を立てて扉が開いた。
 そこから現れたのは髭を生やした大きい男。ベルト兄様くらいガッチリしてる。

「お前らにはいいカモになってもらう。貴族席にいたってことは貴族の演者だろう。指輪を見させてもらったが大物だったな。お前らのシャリー家はまあ微妙だが、アスバル家の子供なんて大金が手に入るなぁ。まあちと、王家に近いから危険な橋ではあるが子供の誘拐ぐらいであの王家の化け物どもの力は借りんだろ。」

 お父様の家名を聞き周りがざわついた。お父様のすごさを肌で感じて、少し嬉しくなった。シャリー家は男爵家の家だったよな、確か漁業の盛んな南の領土の領主。魔法祭は国1番のお祭りとあっていろんなところから人が来るんだな。せっかくお祭りに来たのにこんなところに捕まって怖いだろうな。

それにしても、王家の化け物?何で化け物なんて言うんだ?そんな疑問の残る中大男たちの話に耳を傾ける。

 ここにいる人たちの会話を聞いている感じだと、この人たちは山賊で身代金目的であの会場の貴族席から僕らを攫ったみたい。

この人たちが話してる言語はこの国の言葉じゃないな。どこの言葉だっけ?会話してる内容は分かるけど、どの言語だったか出てこない。きっと僕らが誰も会話の内容が分からないと思って話してるんだろうな。

あの大会の主催の人が山賊の人と繋がってるのか。貴族席のいくつかは警備の隙ができるように作られてて、今回の拉致が出来たのか。なるほど。

セドの元に戻ったらセドに伝えよう。褒めてもらえるかな。あ、でももう会えないのか、、、。

身代金要求するってことはお父様に連絡するってことだよね。せっかく家族にしてもらったのにこんな迷惑かけたらきっと幻滅される。

嫌だな。

僕を、ルイを家族にしてくれるってそう言ってくれたのにな。

もう2度と言ってくれないだろうな。

また孤独になるね。

「よし、お前ら身代金要求する前にこいつらの身に付けてる装飾品剥ぎ取って売っちまうか!!」

「「「おおぉ!!!!!前祝いだあああ!!!」」」

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