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しおりを挟む「セド!!見て!!カラスアゲハの幼虫!!!こっちはミミズ!!」
「ちょっと待って、落ち着いて、虫がびっくりするよ?戻してあげて?ね?」
びっくりしてるのは僕だけど。
平気で虫を手に取ってこちらにトコトコとやってくるルイは毎日ご飯を食べてリハビリするとあっという間に歩けるようになった。
毎日昼食を食べ終わった後に僕と一緒に庭を散歩するのが日課だ。当たり前のように図鑑を記憶しているルイは花や虫、動物を見ただけですぐに種類がわかる。
初めは生き物に怖さや不思議さを感じるかと思っていた予想とは反対にこれまで触れてこなかったものだから興味が湧くんだろう。幼い子供のように触ったり匂いを嗅いだりして楽しそうに散歩をしている。
僕はあまり虫が得意じゃないから捕まえて持ってこられると驚いてしまうが。
「ルイ、ほら帽子ちゃんとかぶって?日焼けしちゃうから。」
「うん!!」
少しずつルイは積極的に話すようになってくれている。別人かと思うほどに。
だが、本当のルイはこれなんだろう。以前は半強制的にルイの自我が抑えられていたから。
ルイは今生まれたての赤子のようなものだ。全てが新鮮で、輝かしくて手を伸ばしたくなる。
もう18歳の青年にしては幼い行動ではあるが誰もが通る道を人より少し遅れて通っているだけだ。
頭にある知識を経験と結びつけていくことはルイにとっても楽しくてたまらないことだ。点を結んで線となるようにルイの頭の中に詰まっている知識と知識が結びつく。ルイの頭の中にある知識が豊富であるからこその楽しさなのだろう。
「セド!!ヒキガエルもいた!」
「ほらほら、急に触ったらカエルもびっくりするだろう?」
「そっか。ごめんね、、」
「ルイ、楽しい?」
「うん!楽しい!!」
ルイのこの楽しそうな姿を見ると、日々進めているルーチェへの制裁が手酷いものになっていく。
僕と父上とアスバル公爵、ベルトの4人でルーチェのことについて話し合った。
その際に公爵とベルトにルイがどのような扱いを受けていたか、私が見た範囲のみ話した。実際はもっと酷かったのだと思う。私がルイのところに通っていた1年未満の間であれだ。18年以上あの部屋から出ることもせず、理不尽に責められたルイの人生。
4人の意見としてルーチェを許すことはないというのが一致した。だがここで問題となったのは先日ベルトが言っていたラフマの参入だ。
情報を探ってはいるが、なぜラフマがルーチェを攻撃しようとしているのかは分からないままだった。あの国は未知なものが多すぎる。何十年もの間他国との関係を築かず独立してきたラフマは敵に回したくはない。
「とりあえずは長期戦といこう。ルイ君はもうこの国の民となった。簡単に手は出させない。」
「そうですね、我が息子にあんなに辛い思いをたくさんさせてきたこと後悔させます。」
実質的なこの国のツートップだ。父上と公爵がこのように言うと僕でも少し寒気がするくらいには恐ろしく感じる。
「そういえばセドリック、今年の魔法祭は演舞大会に出るそうだな。」
う、、その話か、、、
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