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しおりを挟む夕食の時間になり、ルイを部屋まで迎えに行った。
「ルイ、準備できた?」
部屋に入り目に入ったのは夕食用にいつもよりカッチリした服を身につけ車椅子に座るルイだった。
甘めで優しい顔をしているルイがかっこいい服を着るとギャップで心臓の鼓動が速くなる。
もう歩いても問題ないができるだけ安静にしていて欲しいのでまだ車椅子でいてもらっている。車椅子を押す時に見える後頭部と、時々こちらに振り返り目線が合うのがたまらない。だから、ルイの車椅子はいつも必ず僕が押している。
もう少ししたらリハビリをして一緒に散歩に行けるようになるといいな。
「じゃあ行こうか。今日はシェフが張り切ってたよ?」
「・・・うん。」
ルイは博識で、たくさんのことを知っている。この国がいかに大きい国なのかも知っているからこそ国王と王妃という立場の2人に会うのは緊張するんだろう。僕にとってはいつまでもラブラブしてる両親だけどね。
「失礼します。」
そう言って部屋に入ると父も母も待ち遠しかったようですぐにこちらに寄ってきて、
「こんばんは、ルイくん。私がこの国の王だよ。ルシア・シュワイツだ。これからよろしくね。」
「私はルシアの妻のリリー・シュワイツよ!!仲良くしてね!!」
「このような姿勢で申し訳ありません。ルイと申します。」
ルイは、名字を名乗らない。きっと幼い頃からそう教えられている。レストはルーチェの王族の名だからな。
「ほらほら、話は食べながらでもできるでしょ?ルイが久しぶりに普通のご飯なんだから、食べよう?」
そう僕が発言したことで4人で席についた。ルイがマナーが不安だと言っていたので、両親にはそれを伝えてあるし僕が横にいるから分からなければ聞いてねと言ってはある。
「本日の一品目は海老のスープです。」
シェフがそう言うと、ルイの体が少しだけ強張った。やっぱり。
ルイをこの城へ連れてきた日、アレルギー検査をした。ルーチェで見た限り海老にアレルギーがありそうだったのでそれを確実にするためと、他にもアレルギーがないかどうかを検査した。
海老・蟹の甲殻類のアレルギーという結果が出た。ルイはおそらく、自身がアレルギーを持っていることを知っている。海老を食べれば苦しくなることを知っていて、無理やり食べていた。わがままだと思われないように。
少し荒療治だが、それが間違ってると伝えたくて今回は一品目に海老のスープを持ってきてもらった。
ルイが万が一食べても大丈夫なように実際は海老を一切使っていない使っていない、ジャガイモのスープだそうだ。
今日出てくるものは絶対にエビが混入しないように徹底してもらった。
何度もアレルギー症状を引き起こしているルイ。アナフィラキシーショックを引き起こすと取り返しがつかなくなる場合もあるから。
ルイ、エビ食べたら苦しいんでしょ?
ルイ、食べれないって言っていいんだよ。
「いただきます。」
想像通りではあるが、ルイは少し手を震えさせながらスプーンでスープを掬い口元へと運んだ。
「ルイ、ストップ。」
だから僕は、そう声をかけた。
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