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しおりを挟む少し外の空気を吸おうと会場から離れる。
どこなら1人になれるだろうか。
そう考えながら歩いていると、大きい庭が見えてきた。これは、かなり立派だな。
その庭で少しゆっくりしていると、城の端にある小窓から誰かが空を眺めているのが見えた。
綺麗な子だ。なぜか彼から目が離せなかった。見つめすぎたからだろうか。視線を感じて彼がこちらを見た。
目が合った瞬間、撃ち抜かれたような衝撃だった。
おそらく3階ぐらいの高さぐらい離れているにもかかわらず、僕の目には彼の姿がはっきりと映った。
目が合った瞬間かなり驚いた彼はすぐに顔を強張らせた。何かまずいことをしてしまったような顔だ。
何を聞いても首を振る彼。
言葉を発さない彼に僕は釘付けだった。
名をセドと言い残しその場を去った。
「セドリック様!どこへ行かれてたんですか。」
「ごめんごめん。ねぇレスター、この国の王族ってこの会場に全員いる?」
執事のレスターに問いかける。
「はい。王と妃はあちらの椅子に座っておられますし、第一王女は先程お会いしたニナ様18歳、第一王子があちらにいらっしゃるイオ様15歳、第二王子がその隣のユウリ様11歳、第二王女が妃様の横で乳母と共にいるレイラ様7歳でございます。王子、王女共にお2人ずつがこの国の王族でございます。」
ならば彼は?彼の瞳の色はこの国の王族の特徴である金色だったし、髪も栗色だった。
ちょっと探ってみるか。
パーティーから帰宅した僕に両親は
「どうだった?素敵な方と出会えた?」
そう聞いてきたから一言
「運命の相手と出会ったよ。」
そう答えた。母は詳しく聞きたそうだったが僕は多くは語らなかった。
レスターは根掘り葉掘り聞かれていたが、レスターにも話していないから3人には疑問が残ったままとなった。
彼の声が聞いてみたい。彼の名前が知りたい。僕の名を呼んで欲しい。
彼に触れてみたい。こう思ったのは初めてだった。
「セドリック様、頼まれていたものを調べてまいりました。」
「あぁ、ありがとう。」
レスターに頼んでいたのはここ20年間の政策や王族に関する情報だ。
18年前、第一王女が生まれた。
18年前から3年間、不作が続き飢餓の被害が出た、、。
最近の政策、、。
「ひどいな。言葉は悪いが無能じゃないか。」
「国民が貧しい思いをするのも仕方がないような政策ばかりです。しかしこの国には洗脳的な宗教がございますので、王族は神とされているのです。」
「ルーチェ教、か。王族は神。王族の初子は女であると恵みが持たされ、男であれば、天災が降りかかる。なんだ、このふざけた教え。全く理解ができない。」
「同感でございます。」
「なぁ、レスター、3時間ほど出かけてきていいか?」
「・・・そのぐらいでしたら、構いませんがどこにお出かけで?」
「・・・秘密だ。」
そう言い残し僕は鳥に変化し彼の元へと飛び立った。
私の得意とする魔法、変化魔法は4時間ほどこの鳥の姿を保つことができる。
国内の移動は僕の引いた魔法陣で一瞬だ。国の端からルーチェのあの城まで
全力で飛べば40分ほどで彼の元へ辿り着けるはずだ。
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