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しおりを挟む魔法大国サベルク。
この国が僕が生まれた国であり、生涯をかけて僕が守っていく国だ。
大陸の中心に位置するこの国は魔法によって世界中に名を轟かせており、我が国に喧嘩を売ろうという国など存在しないと断言できるほど強国である。
強国でありながら国民の王政支持率は90%を超えており、最も幸せになれる国としても有名な国である。
他国にあるような偏った宗教もなく、差別もなく、保証制度もあるこの国の王と妃は多くの国民に好かれており、またその子も多くの国民に好かれていた。
そんな国の第一王子として生まれた僕は父上と同じ金白の髪に青の瞳を持って生まれ、何不自由なく過ごしてきた。
我が国では王族であっても結婚の自由が約束され、僕は仲の良い両親や恋愛結婚をした姉を見てきたため、恋愛結婚への憧れが強かった。
そんな僕に西の国ルーチェから第一王女の誕生パーティーへの招待状が届いた。その国からは時折難民が我が国に流れてくる。かなり偏った宗教が信仰されており、言い伝えも多くあると聞く。現状や政策を見る限りあまり賢い王だとは思えぬが。
父や母は浮いた話ひとつない僕を心配し、そのパーティーを勧めてくれた。
会場に着くと僕ぐらいの年代のものが多く招待されていた。王女は18歳。成人まで2年だしそろそろ婚約者を考え始める年だからな。婚約者決めも兼ねているパーティーなのだろう。
「本日はお招きいただきありがとうございます。サベルクから参りました、セドリック・シュワイツと申します。」
その名を聞いた付近の者がザワザワとしだした。そりゃそうだ。魔法大国の王子の妃は誰もが望む場所だ。
自分で言うのもなんだが、あの父上と母上の遺伝子を受け継いで美形に生まれないわけがない。容姿が整っていることもわかっている。
目の前のこの女のように、僕の容姿と立場ばかりで僕という人間を魅力的だと感じる者ばかりなのだ。だからこの年まで浮いた話が一つもないんだ。
「は、はじめまして。私、第一王女のニナ・レストと申します。私、ぜひセドリック様と仲良くなりたいわ!」
香水つけすぎだよ。鼻が曲がりそうだ。
それにこの女、さっきから見ていたが、他国の王女や自国の貴族の女性たちには偉そうな態度を取り、冷たく接し、男性には媚を売る。顔は可愛いのかもしれないが、性格は良いとは言えないな。
きっと自分の容姿に自信があるのだろう。この国の王族の印とされる金色の瞳も栗色の髪の毛も、自信に溢れて仕方がないといった感じだな。
彼女は僕にロックオンしたのか自国の貴族に紹介すると言って僕を連れ回し続けた。
もううんざりだ。そう思っていたところで王女からの挨拶となり彼女は名残惜しそうに離れていった。
「あとで、また時間を作ってくださいね?私、セドリック様ともっと仲良くなりたいわ。」
はぁ、来なきゃ良かった。
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