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しおりを挟む「アンナが死んだ?」
え、、、?
信じられなかった。
そんなわけない。
僕の存在を唯一認めてくれたアンナが、死んだ?もういないのか?
「お前に関わったから死んだのだ!疫病神め!!!!お前が生まれてからこの国に良いことが全く起きぬではないか!」
「弟のイオやユウリだけでよかったのに。あなたが初子であるために今の王政を責められるのよ。」
それはつまり、僕なんか生まれてこなきゃよかったと。そう言うことなんだな。
父上と母上は1ヶ月に1回だけ僕の元を訪れる。僕に不自由はないか。と義務的な質問をして去っていく。
でもぼくは知っている。時々深夜に2人揃ってこの部屋を訪れていることを。
何度か聞いてしまっているんだ。その時の2人の会話を。
「あなた、やはり殺した方がいいのでは?」
「だが、死体はどうする。隠し通すことなどできないぞ。こいつが見つかってもどうにか言い訳はできるがこいつの死体が見つかればそれこそ私たちは終わりだ。重い病などにかかってくれればいいものを、国に災いをもたらしておいてこうも元気とは。」
起きている僕にはほとんど話さない両親が寝ている間に僕を殺そうかどうかという相談は何度かしている。
僕にとって両親の声は、自分が今日死ぬかもしれない。と思わせる声なんだ。
「お前に今後世話係はつけぬ。この部屋の扉の前に新たに壁と扉をつける。
扉と扉の間に食事や衣服を届け回収させるようにする。そこに置いた時にノックを2回させるから5分後に取りに行きなさい。絶対に誰にも見つからないように。お前は重い病にかかった親戚を預かっている。ということになっている。その姿を誰にも見られるでないぞ。」
「・・・父上、母上」
アンナがいなくなってしまったという悲しみから初めてかもしれない。2人のことを呼んだ。
「父上などと呼ぶな!!!穢らわしい!!そなたなど子だと思ったことないわ!!!2度とその汚い声を聞かせるな!!!」
そう言って出て行ってしまった。
アンナはもういない。1人になると途端に涙が溢れた。
こんなに泣いたのはあの日以来だ。
5歳のある日。小窓から外を見ていると父上と母上、ニナと2年前に生まれた弟のイオが楽しそうに散歩をしていた。
父上も母上もニナやイオを抱っこしたり、おんぶしたり、抱きしめたりしていて同じ時刻に生まれたニナや同じ男であるイオが愛されているのを見て、たまらなく涙が出たんだ。
「どうしてニナもイオもちちうえともははうえともなかよさそうなのに、ぼくはここでひとりなの?」
泣いてアンナにそう縋ってひどく困らせた。あの時、アンナのどう言えばいいのか困った顔を見て、もう2度と人前では泣かないと誓ったんだ。
そして今、もう一つ。
僕はしゃべってはダメなんだ。
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