【完結】18年間外の世界を知らなかった僕は魔法大国の王子様に連れ出され愛を知る

にゃーつ

文字の大きさ
上 下
1 / 105

1

しおりを挟む



---おぎゃぁおぎゃぁおぎゃぁ


「っっ!!!!」

国待望の1人目の子が生まれた時、産婆は言葉を失った。


大陸の西の端に位置するこの国ルーチェでは王族の初子が男であることは災いの訪れを意味する。
これまでに初子が男であった王政の時代は飢餓や天災に見舞われその度に国が滅びかけたのだ。
ここ150年は初子が女であったため今回も女であると皆信じて疑わなかった。

しかし、生まれてみると初子が男であったため出産を終えた妃も、夫である王もどうすべきかと頭を悩ませた。

妃は結婚してなかなか妊娠せず国としても待望の世継ぎであった。
どうするものかと悩んだ結果、2人の出した答えは


この長男を城の中に閉じ込め、死ぬまで隠し通すこと。


幸いにも妃は双子を妊娠していた。しかもそれを国民には伝えていなかった。よって、この長女のみが生まれたことにすれば良いと言う結論に至ったのだ。

ルーチェ教では殺人は最も重い罪とされており言い伝えのためであっても生まれてきてしまったこの長男を殺すわけにはいかない。そのために出された答えであった。

この悪しき環境に生まれてきた男の子はルイと名付けられ双子の妹はニナと名付けられた。

ルイには1人世話係がつき、その世話係のみが王族以外でルイに関わる者であった。ルイが住むのは城の端の部屋。逃げ出さないようにと頑丈に鍵がかけられており、あるのは小さな小窓ひとつ。

無邪気な妹はこう言う

「ルイは私より先に生まれてきちゃいけなかったのに先に生まれるからこうなってるのよ!自業自得だわ!」

ルイが生まれて3年の間この国では不作が続き飢餓の被害も多く出た。

両親である王と妃は

「お前が女であればよかったのにな。お前が男であるがために、この国は危機に晒されておるのだ。」

「私が初子に男を産んでしまうなど、これほどの不幸はないわ。あなたとニナの生まれる順が逆であればよかったのに。今、私たちや国民が苦しい思いをしているのはあなたのせいよ。」


ルイは賢い子であった。
ニナよりも断然早く言葉を覚え、読み書きができるようになった。

5歳の頃、2年前に生まれた弟が父や母、妹と共に幸せそうに庭を散歩している姿を小窓から見た時に涙を流して以来、人前で涙を流すことも無くなった。

父や母にこれ以上嫌われたくなくてわがままひとつ言わず、言葉すらほとんど発することなく日々を過ごした。


ただ1人、世話係のアンナだけは

「ルイ様、あなたが悪いことなんて何一つありませんからね。アンナはルイ様と出会えたこと、こうしてお世話できることが何より嬉しいです!」

そう言ってくれた。それだけがルイの心の支えであった。

口にはしないがルイはアンナのことを母親のように思っていた。


だがそんなアンナはルイが8歳の誕生日を迎えたその日、急死した。

しおりを挟む
感想 69

あなたにおすすめの小説

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

優しく暖かなその声は(幽閉王子は最強皇子に包まれる・番外編)

皇洵璃音
BL
「幽閉王子は最強皇子に包まれる」の番外編。レイナード皇子視点。ある日病気で倒れたレイナードは、愛しいアレクセイに優しくされながら傍にいてほしいとお願いしてみると……?

【完結】悪役令息の役目は終わりました

谷絵 ちぐり
BL
悪役令息の役目は終わりました。 断罪された令息のその後のお話。 ※全四話+後日談

転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!

音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに! え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!! 調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。

期待外れの後妻だったはずですが、なぜか溺愛されています

ぽんちゃん
BL
 病弱な義弟がいじめられている現場を目撃したフラヴィオは、カッとなって手を出していた。  謹慎することになったが、なぜかそれから調子が悪くなり、ベッドの住人に……。  五年ほどで体調が回復したものの、その間にとんでもない噂を流されていた。  剣の腕を磨いていた異母弟ミゲルが、学園の剣術大会で優勝。  加えて筋肉隆々のマッチョになっていたことにより、フラヴィオはさらに屈強な大男だと勘違いされていたのだ。  そしてフラヴィオが殴った相手は、ミゲルが一度も勝てたことのない相手。  次期騎士団長として注目を浴びているため、そんな強者を倒したフラヴィオは、手に負えない野蛮な男だと思われていた。  一方、偽りの噂を耳にした強面公爵の母親。  妻に強さを求める息子にぴったりの相手だと、後妻にならないかと持ちかけていた。  我が子に爵位を継いで欲しいフラヴィオの義母は快諾し、冷遇確定の地へと前妻の子を送り出す。  こうして青春を謳歌することもできず、引きこもりになっていたフラヴィオは、国民から恐れられている戦場の鬼神の後妻として嫁ぐことになるのだが――。  同性婚が当たり前の世界。  女性も登場しますが、恋愛には発展しません。

婚約破棄されて捨てられた精霊の愛し子は二度目の人生を謳歌する

135
BL
春波湯江には前世の記憶がある。といっても、日本とはまったく違う異世界の記憶。そこで湯江はその国の王子である婚約者を救世主の少女に奪われ捨てられた。 現代日本に転生した湯江は日々を謳歌して過ごしていた。しかし、ハロウィンの日、ゾンビの仮装をしていた湯江の足元に見覚えのある魔法陣が現れ、見覚えのある世界に召喚されてしまった。ゾンビの格好をした自分と、救世主の少女が隣に居て―…。 最後まで書き終わっているので、確認ができ次第更新していきます。7万字程の読み物です。

キミと2回目の恋をしよう

なの
BL
ある日、誤解から恋人とすれ違ってしまった。 彼は俺がいない間に荷物をまとめて出てってしまっていたが、俺はそれに気づかずにいつも通り家に帰ると彼はもうすでにいなかった。どこに行ったのか連絡をしたが連絡が取れなかった。 彼のお母さんから彼が病院に運ばれたと連絡があった。 「どこかに旅行だったの?」 傷だらけのスーツケースが彼の寝ている病室の隅に置いてあって俺はお母さんにその場しのぎの嘘をついた。 彼との誤解を解こうと思っていたのに目が覚めたら彼は今までの全ての記憶を失っていた。これは神さまがくれたチャンスだと思った。 彼の荷物を元通りにして共同生活を再開させたが… 彼の記憶は戻るのか?2人の共同生活の行方は?

【完結・ルート分岐あり】オメガ皇后の死に戻り〜二度と思い通りにはなりません〜

ivy
BL
魔術師の家門に生まれながら能力の発現が遅く家族から虐げられて暮らしていたオメガのアリス。 そんな彼を国王陛下であるルドルフが妻にと望み生活は一変する。 幸せになれると思っていたのに生まれた子供共々ルドルフに殺されたアリスは目が覚めると子供の頃に戻っていた。 もう二度と同じ轍は踏まない。 そう決心したアリスの戦いが始まる。

処理中です...