454 / 567
第454話 母娘のお願い
しおりを挟む
あれからシャルル様は【収納】という魔法で乗ってこられた魔動力車を消すと、私達をコロビアへ転移させてくださりました。
先ほどは訳も分からず驚くばかりでしたが本当に一瞬、【転移門】は行ったことのある所へならどこへでも転移出来るそうなのです。
カーミラに無事を報告すると驚愕していましたが、自分でもまだ今日起こったことが信じられないのですからその反応は決して大袈裟なものではありません。
何やらカーミラとデイジーがシャルル様に謝っていたようですが、もしかしたら失礼な態度を取っていたのでしょうか…。
その後、コロビアから少し離れたところまで魔動力車で移動した後、先ほどと同様にフリーノース領都の屋敷に送り届けていただいたのです。
魔動力車に乗っている間に聞いたのですが、透明になる魔法は【不可視】という魔法なのだそうです。
XX XY
そのシャルル様は現在私達が監禁されていた建物に戻られています。
私の心配を察して下さり、残された私達の受精卵の処分を申し出てくださったのです。
その際、首謀者に手紙を渡して欲しいとお願いしたのですが、シャルル様は助言もしてくださりました。
格好良くてたくましいだけではなく聡明で頼りがいのある素敵な男性です。
エリカと同じ12歳とは信じられませんね。
「なるほど…、私達が救出されるまでの経緯は分かりました。ビオラが領主様達に連絡しておいてくれたおかげエンターシャ様からシャルル様の耳に届いたのですね」
「マーガレット様達は幸運でしたね。シャルルは少し前からジャトワン領内を旅していて、昨日領都に戻って来たところでお願いしたのですよ…」
「ありがとうございます。エンターシャ様…」
「まさかエンターシャ様までシャルル様と親密にされているとは思いもしませんでしたよ」
「それに、お二人は名前を呼び捨てで呼びあっておられるのですね…。シェリー様とサマンサ様はそうではありませんでしたけれど…」
何度見ても信じられませんが、エンターシャ様もシェリー様やサマンサ様と同じように若返ったように変貌されています。
「そ…そうでした…。実はうちのアデルもシャルルのパートナー…候補なのです。それからシェリー様やサマンサ様も名前で呼び合っておられますよ…」
フフ…、私の方がアデルより先にパートナーになってしまいましたけれどね。
「何ですって!?」
「えっ、アデルさんもですか~!?」
そんなぁ~、私より先にアデルさんが…。
「実は昨年の領主会議でサマンサ様がアデルに紹介して下さったお菓子はシャルルのお店の物だったのです。あまりの美味しさにあれから私達も定期的に通っていまして、偶然シャルルに会った時にアデルが気に入ったようで…」
「フフ…、うちの娘は男性を見る目と行動力がありますから…」
「なっ…、それならうちのエリカだって…」
「そうです。私も初対面の時にパートナーになって欲しいと…、あっ…」
「エリカさんもやっぱりそう言ったのですね。後継者の事もありますからね…。でもシャルルの様なこの世界に二人といない本当の男性にそう願っていても無駄ですよ」
「……そう…ですよね…」
「エリカ…?」
本当の男性…?
シャルル様をパートナーにしようとすることは出来ないとはっきりとおっしゃっています。
もしかしてエンターシャ様も後継者を…。
「もちろんシャルルは私にとってもかけがえのない男性ですからね。残りの人生をシャルルの為に生きていく覚悟でいます。シェリー様やサマンサ様達も同じ想いですよ」
「……、そうだったのですね」
なるほど…、シャルル様の為に生きる覚悟が必要という事ですか。
今から思えばあのシェリー様やサマンサ様の態度も理解できますね。
「お母様…、私…やっぱりシャルルの傍にいたいです」
皆さんシャルルのパートナーになることを望まれたのですね。
「そうね…、私もシャルル様に救われたのですからシャルル様の為なら何でもしますよ。シャルル様が戻って来られたらお願いしてみましょう」
XX XY
フリーノース領都のマーガレット様のお屋敷の応接室に転移して戻って来ると、マーガレット様達とエンターシャ達がテーブルを囲んでいました。
「マーガレット様、終わりましたよ。手紙を読んだのも確認し受精卵も処分してきました。持って帰って来た方が良かったですか?」
「いいえ、シャルル様にお任せしましたのでそれでかまいませんよ」
「さぁシャルルもこちらに座ってください」
エンターシャの勧めでマリンとの間に座ります。
「シャルル様、改めましてこの度は本当にありがとうございます。何とお礼を申し上げればよいか…」
「シャルル、ありがとう…」
「詳しい事情は分かりませんがお二人とも助けられて良かったですよ」
今はマーガレット様もエリカも着替えを済ませホッとした表情をしています。
でもエリカが用を足していたところに現れたのは失敗だったかな…。
「それでシャルル様、シャルル様に受精卵の処分をお任せしている間にエンターシャ様から色々とお話を伺ったのですが、ぜひ私も皆さんの一員に加えていただき今後はシャルル様のお役に立ちたいと思います」
「シャルル、私からもお願い!」
「攫われてから、ううん、初めて会った時からずっとシャルルの事ばかり考えていたの。今回もシャルルに助けて欲しい…、会いたいってずっと思っていたの。パートナー候補にして欲しいけれど、なれなくても良いから私もシャルルの傍にいたいの!」
「エ…エンターシャ、一体どんな話をしたの?」
「アデルがシャルルのパートナー候補になっていることや、シャルルがシェリー様やサマンサ様、それに私にとってもかけがえのない大切な男性であることですね」
既に私達はシャルルのパートナーですが、その発表は領主会議まで出来ません。
「エンターシャ様、私の事も忘れないでくださいね。私もシャルル様の為なら何だって…、服を脱げと言われればどこでも脱ぎますよ」
ブフォッ…。
「マ…マリン、どうしてそうなるの?」
マリンの言いたい事は何となく分かりますが例えが悪いです。人前で触り過ぎてちょっと感覚がおかしくなったのかな…。
「ふ…服を脱ぐですって? どうして服なの…?」
マーガレット様達から当惑の視線が僕に向けられています。しか~し…。
「じゃあせっかくマリンがそう言ってくれているのだから今ここで脱いでもらおうかな…」
フッフッフ…、例えマリンが気構えとして言ってしまったのだとしても僕はあえて流しはしません。
《ご主人様は鬼畜ですものねぇ…》
《マスター、私も脱ぎますね~》
フィギュアサイズのマオはそう言うと一瞬で全裸になって頬に擦り寄ってきます。
僕にしか見えませんがさすがマオです。
「えっ…? うっ…、シャルル様~ごめんなさ~い。さすがに皆さんの前では恥ずかしいです…」
「え~っ、じゃあマリンは今度お仕置きだね」
「マ…マリンは馬鹿ねぇ。シャルルに出来ないことは言わないの!」
「すみません…」
僕達のやり取りを見ていたマーガレット様達が唖然としていましたが、とりあえず一件落着です。
XX XY
今日の所はマーガレット様もエリカも疲れているだろうと思いエンターシャの屋敷に戻ることにしました。
シェリーやサマンサも心配していたそうですから明日にでも報告しに行けば良いでしょう。
マーガレット様も領主会議の時に詳しく説明されるとのことでしたし…。
「シャルル、こちらに戻って来ても良かったのですか? てっきりマーガレット様に“シャルルの奇跡”を体験させてあげるのかと思っていましたよ」
「いきなりそんなことはしないよ。まだマーガレット様のことをよく知らないからね」
エリカの想いも分かりましたが急ぐこともありません。
「シャルル様、おかえりなさいませ~」
「ただいま、ヨルン」
「エンターシャ様とマリン先輩もお早いですね…」
「シャルルが本気になればエリカさんも一瞬で見つかりますよ、ってシャルルと一緒に帰って来るに決まっているじゃない…」
「本当に凄かったです。四半刻も待たずに救出されましたものね」
シャルル様の【不可視】魔法も驚きました。
お尻を触られた時はドキドキしましたよ。
「僕も思っていたより簡単に助ける事が出来てホッとしたよ。今晩はもうお腹ペコペコだよ…」
昨晩は夕食もあまり食べる気が起きませんでしたし…。
「シャルル…、今晩は私とお願いできますか?」
「うん、良いよ」
「良かった~」
昨日はお願いできる雰囲気ではありませんでしたからね。
「あっ、エンターシャ様ずるいです。シャルル様、私は…?」
「マリンは明日ね。今日のお仕置きもあるから…」
「え~っ、本当にお仕置きなのですか~」
でも、シャルル様のお仕置きという言葉になぜか胸がドキドキしてきます。
「マ…マリン先輩、何か失敗でも?」
「マリンはねシャルルに出来もしない事を言ったのよ。パートナーとして恥ずかしい失態ですよ」
まぁ、シャルルが本当にあの場で服を脱いでと言うとは思いませんでしたけれど…、私も軽はずみなことは言わないようにしましょう。
「そんな~、エンターシャ様まで…」
「ハハ…、本気で怒っているわけじゃないよ」
確か…“きのっこ”を初めて食べた時にヨルンにも何かお仕置きをしないといけないと思ったけれど…、本人は自覚がないみたいだね…。
「とりあえず、夕食にしようよ」
「そうですね」
「「はいっ、只今」」
XX XY
「エリカ様、お疲れではないですか?」
「大丈夫よ、ビオラ」
しばらく監禁されてみて、自分の立場や部屋がとても恵まれていることに気付きます。
フフ…、部屋を覗かれていることもないし…。
「エリカ様…」
なんだか戻られてから以前と雰囲気が違います。
それにシャルル様の事をあんなに想われていただなんて…。
私は魔法を見ていませんが男性が魔法を使えるというのも驚きです。
「まさかモキさんにいただいた長椅子の中に犯人が忍び込んでいたとわね…」
「そうですね…。領内でモキさんの捜索をしていますのですぐに捕らえられると思いますよ」
「そうね…」
モキさんと忍び込んだ者がどういった関係なのか分かりませんが、多分お母様は不問にされるわね。
今回の件についてはお母様がおっしゃっているようにご自身の施策が原因なのですから…。
やはり“誕生の儀”は納得できる相手とするのが一番なのですね。
私もある程度の男性なら精子だけいただければと考えていたのが恥ずかしいですよ。
シャルルに想いを伝えることが出来ましたが私もパートナー候補の一人としてもらえるでしょうか。
なんだかうやむやの内に帰ってしまわれましたけれど…。
XX XY
「マーガレット様、お身体は大丈夫ですか?」
「えぇ、デイジー。卵子を採取された後はとても痛かったですが、今はもう大丈夫ですよ。でも精神的にかなり参りました」
「本当にもうダメかと思いましたから…」
今日シャルル様が助けに来てくださらなかったら取り返しの付かないことになっていたわ。
「そうそう、早速ですがデイジー、明日から“誕生の儀”の実験は中止です。現在実験中の方には再度説明し、必要があれば直接謝罪をしていくつもりです」
「かしこまりました」
「……」
でも、私の様な年齢の女性でも精子によってはまだ受精卵になることが分かりました。
シャルル様との受精卵なら喜んで受胎するのですが…。
フフ…、私がそんなことを思うだなんてね…。
しかし、アデルさんがシャルル様のパートナー候補になったからといってエンターシャ様まであんなに親密に…。
シェリー様やサマンサ様のように若返ったように変貌されていましたが、あれもやっぱりシャルル様の魔法なのかしら…。
「デイジー、あのマリンさんというメイドはいつも領主会議にお供をされている方でしたよね?」
「はい、エンターシャ様と同様に本当に若返ったようでしたね。羨ましい…、いえ、驚きました」
シャルル様はマリンさんの事も呼び捨てにされていましたし、なんだかメイドと言うよりエンターシャ様と同じ一人の女性として接しておられました。
マリンさんの言う、シャルル様に言われたらどこでも服を脱ぐとはどういうことなのでしょうか…。
あの話の脈絡が聞いていて理解できませんでした。
「シャルル様の事ですから、もしかしたら本当に若々しくなる魔法もご存知なのかもしれませんよ」
【転移門】【不可視】【収納】魔法ですか…、男性が魔法を使えるだけでも驚きなのに信じられない魔法ばかりです。
もしエリカをパートナー候補にして下さったら私とも親密になってくださって若々しくなれるのかしら…。
「いや、そんな…魔法で若返るだなんて…いくらなんでも…。私も今日は驚くことばかりでとても疲れましたよ…。マーガレット様、お先に休まさせていただきますね」
「デイジーにも心配を掛けましたからね。ゆっくり休んで下さい」
今度の領主会議にはシャルル様も出席されるとおっしゃっていました。
その時にもう一度シェリー様やサマンサ様の前でお願いして一員にしていただかないと…。
エリカの事もありますが私もこんな気持ちになるのは初めてですよ。
先ほどは訳も分からず驚くばかりでしたが本当に一瞬、【転移門】は行ったことのある所へならどこへでも転移出来るそうなのです。
カーミラに無事を報告すると驚愕していましたが、自分でもまだ今日起こったことが信じられないのですからその反応は決して大袈裟なものではありません。
何やらカーミラとデイジーがシャルル様に謝っていたようですが、もしかしたら失礼な態度を取っていたのでしょうか…。
その後、コロビアから少し離れたところまで魔動力車で移動した後、先ほどと同様にフリーノース領都の屋敷に送り届けていただいたのです。
魔動力車に乗っている間に聞いたのですが、透明になる魔法は【不可視】という魔法なのだそうです。
XX XY
そのシャルル様は現在私達が監禁されていた建物に戻られています。
私の心配を察して下さり、残された私達の受精卵の処分を申し出てくださったのです。
その際、首謀者に手紙を渡して欲しいとお願いしたのですが、シャルル様は助言もしてくださりました。
格好良くてたくましいだけではなく聡明で頼りがいのある素敵な男性です。
エリカと同じ12歳とは信じられませんね。
「なるほど…、私達が救出されるまでの経緯は分かりました。ビオラが領主様達に連絡しておいてくれたおかげエンターシャ様からシャルル様の耳に届いたのですね」
「マーガレット様達は幸運でしたね。シャルルは少し前からジャトワン領内を旅していて、昨日領都に戻って来たところでお願いしたのですよ…」
「ありがとうございます。エンターシャ様…」
「まさかエンターシャ様までシャルル様と親密にされているとは思いもしませんでしたよ」
「それに、お二人は名前を呼び捨てで呼びあっておられるのですね…。シェリー様とサマンサ様はそうではありませんでしたけれど…」
何度見ても信じられませんが、エンターシャ様もシェリー様やサマンサ様と同じように若返ったように変貌されています。
「そ…そうでした…。実はうちのアデルもシャルルのパートナー…候補なのです。それからシェリー様やサマンサ様も名前で呼び合っておられますよ…」
フフ…、私の方がアデルより先にパートナーになってしまいましたけれどね。
「何ですって!?」
「えっ、アデルさんもですか~!?」
そんなぁ~、私より先にアデルさんが…。
「実は昨年の領主会議でサマンサ様がアデルに紹介して下さったお菓子はシャルルのお店の物だったのです。あまりの美味しさにあれから私達も定期的に通っていまして、偶然シャルルに会った時にアデルが気に入ったようで…」
「フフ…、うちの娘は男性を見る目と行動力がありますから…」
「なっ…、それならうちのエリカだって…」
「そうです。私も初対面の時にパートナーになって欲しいと…、あっ…」
「エリカさんもやっぱりそう言ったのですね。後継者の事もありますからね…。でもシャルルの様なこの世界に二人といない本当の男性にそう願っていても無駄ですよ」
「……そう…ですよね…」
「エリカ…?」
本当の男性…?
シャルル様をパートナーにしようとすることは出来ないとはっきりとおっしゃっています。
もしかしてエンターシャ様も後継者を…。
「もちろんシャルルは私にとってもかけがえのない男性ですからね。残りの人生をシャルルの為に生きていく覚悟でいます。シェリー様やサマンサ様達も同じ想いですよ」
「……、そうだったのですね」
なるほど…、シャルル様の為に生きる覚悟が必要という事ですか。
今から思えばあのシェリー様やサマンサ様の態度も理解できますね。
「お母様…、私…やっぱりシャルルの傍にいたいです」
皆さんシャルルのパートナーになることを望まれたのですね。
「そうね…、私もシャルル様に救われたのですからシャルル様の為なら何でもしますよ。シャルル様が戻って来られたらお願いしてみましょう」
XX XY
フリーノース領都のマーガレット様のお屋敷の応接室に転移して戻って来ると、マーガレット様達とエンターシャ達がテーブルを囲んでいました。
「マーガレット様、終わりましたよ。手紙を読んだのも確認し受精卵も処分してきました。持って帰って来た方が良かったですか?」
「いいえ、シャルル様にお任せしましたのでそれでかまいませんよ」
「さぁシャルルもこちらに座ってください」
エンターシャの勧めでマリンとの間に座ります。
「シャルル様、改めましてこの度は本当にありがとうございます。何とお礼を申し上げればよいか…」
「シャルル、ありがとう…」
「詳しい事情は分かりませんがお二人とも助けられて良かったですよ」
今はマーガレット様もエリカも着替えを済ませホッとした表情をしています。
でもエリカが用を足していたところに現れたのは失敗だったかな…。
「それでシャルル様、シャルル様に受精卵の処分をお任せしている間にエンターシャ様から色々とお話を伺ったのですが、ぜひ私も皆さんの一員に加えていただき今後はシャルル様のお役に立ちたいと思います」
「シャルル、私からもお願い!」
「攫われてから、ううん、初めて会った時からずっとシャルルの事ばかり考えていたの。今回もシャルルに助けて欲しい…、会いたいってずっと思っていたの。パートナー候補にして欲しいけれど、なれなくても良いから私もシャルルの傍にいたいの!」
「エ…エンターシャ、一体どんな話をしたの?」
「アデルがシャルルのパートナー候補になっていることや、シャルルがシェリー様やサマンサ様、それに私にとってもかけがえのない大切な男性であることですね」
既に私達はシャルルのパートナーですが、その発表は領主会議まで出来ません。
「エンターシャ様、私の事も忘れないでくださいね。私もシャルル様の為なら何だって…、服を脱げと言われればどこでも脱ぎますよ」
ブフォッ…。
「マ…マリン、どうしてそうなるの?」
マリンの言いたい事は何となく分かりますが例えが悪いです。人前で触り過ぎてちょっと感覚がおかしくなったのかな…。
「ふ…服を脱ぐですって? どうして服なの…?」
マーガレット様達から当惑の視線が僕に向けられています。しか~し…。
「じゃあせっかくマリンがそう言ってくれているのだから今ここで脱いでもらおうかな…」
フッフッフ…、例えマリンが気構えとして言ってしまったのだとしても僕はあえて流しはしません。
《ご主人様は鬼畜ですものねぇ…》
《マスター、私も脱ぎますね~》
フィギュアサイズのマオはそう言うと一瞬で全裸になって頬に擦り寄ってきます。
僕にしか見えませんがさすがマオです。
「えっ…? うっ…、シャルル様~ごめんなさ~い。さすがに皆さんの前では恥ずかしいです…」
「え~っ、じゃあマリンは今度お仕置きだね」
「マ…マリンは馬鹿ねぇ。シャルルに出来ないことは言わないの!」
「すみません…」
僕達のやり取りを見ていたマーガレット様達が唖然としていましたが、とりあえず一件落着です。
XX XY
今日の所はマーガレット様もエリカも疲れているだろうと思いエンターシャの屋敷に戻ることにしました。
シェリーやサマンサも心配していたそうですから明日にでも報告しに行けば良いでしょう。
マーガレット様も領主会議の時に詳しく説明されるとのことでしたし…。
「シャルル、こちらに戻って来ても良かったのですか? てっきりマーガレット様に“シャルルの奇跡”を体験させてあげるのかと思っていましたよ」
「いきなりそんなことはしないよ。まだマーガレット様のことをよく知らないからね」
エリカの想いも分かりましたが急ぐこともありません。
「シャルル様、おかえりなさいませ~」
「ただいま、ヨルン」
「エンターシャ様とマリン先輩もお早いですね…」
「シャルルが本気になればエリカさんも一瞬で見つかりますよ、ってシャルルと一緒に帰って来るに決まっているじゃない…」
「本当に凄かったです。四半刻も待たずに救出されましたものね」
シャルル様の【不可視】魔法も驚きました。
お尻を触られた時はドキドキしましたよ。
「僕も思っていたより簡単に助ける事が出来てホッとしたよ。今晩はもうお腹ペコペコだよ…」
昨晩は夕食もあまり食べる気が起きませんでしたし…。
「シャルル…、今晩は私とお願いできますか?」
「うん、良いよ」
「良かった~」
昨日はお願いできる雰囲気ではありませんでしたからね。
「あっ、エンターシャ様ずるいです。シャルル様、私は…?」
「マリンは明日ね。今日のお仕置きもあるから…」
「え~っ、本当にお仕置きなのですか~」
でも、シャルル様のお仕置きという言葉になぜか胸がドキドキしてきます。
「マ…マリン先輩、何か失敗でも?」
「マリンはねシャルルに出来もしない事を言ったのよ。パートナーとして恥ずかしい失態ですよ」
まぁ、シャルルが本当にあの場で服を脱いでと言うとは思いませんでしたけれど…、私も軽はずみなことは言わないようにしましょう。
「そんな~、エンターシャ様まで…」
「ハハ…、本気で怒っているわけじゃないよ」
確か…“きのっこ”を初めて食べた時にヨルンにも何かお仕置きをしないといけないと思ったけれど…、本人は自覚がないみたいだね…。
「とりあえず、夕食にしようよ」
「そうですね」
「「はいっ、只今」」
XX XY
「エリカ様、お疲れではないですか?」
「大丈夫よ、ビオラ」
しばらく監禁されてみて、自分の立場や部屋がとても恵まれていることに気付きます。
フフ…、部屋を覗かれていることもないし…。
「エリカ様…」
なんだか戻られてから以前と雰囲気が違います。
それにシャルル様の事をあんなに想われていただなんて…。
私は魔法を見ていませんが男性が魔法を使えるというのも驚きです。
「まさかモキさんにいただいた長椅子の中に犯人が忍び込んでいたとわね…」
「そうですね…。領内でモキさんの捜索をしていますのですぐに捕らえられると思いますよ」
「そうね…」
モキさんと忍び込んだ者がどういった関係なのか分かりませんが、多分お母様は不問にされるわね。
今回の件についてはお母様がおっしゃっているようにご自身の施策が原因なのですから…。
やはり“誕生の儀”は納得できる相手とするのが一番なのですね。
私もある程度の男性なら精子だけいただければと考えていたのが恥ずかしいですよ。
シャルルに想いを伝えることが出来ましたが私もパートナー候補の一人としてもらえるでしょうか。
なんだかうやむやの内に帰ってしまわれましたけれど…。
XX XY
「マーガレット様、お身体は大丈夫ですか?」
「えぇ、デイジー。卵子を採取された後はとても痛かったですが、今はもう大丈夫ですよ。でも精神的にかなり参りました」
「本当にもうダメかと思いましたから…」
今日シャルル様が助けに来てくださらなかったら取り返しの付かないことになっていたわ。
「そうそう、早速ですがデイジー、明日から“誕生の儀”の実験は中止です。現在実験中の方には再度説明し、必要があれば直接謝罪をしていくつもりです」
「かしこまりました」
「……」
でも、私の様な年齢の女性でも精子によってはまだ受精卵になることが分かりました。
シャルル様との受精卵なら喜んで受胎するのですが…。
フフ…、私がそんなことを思うだなんてね…。
しかし、アデルさんがシャルル様のパートナー候補になったからといってエンターシャ様まであんなに親密に…。
シェリー様やサマンサ様のように若返ったように変貌されていましたが、あれもやっぱりシャルル様の魔法なのかしら…。
「デイジー、あのマリンさんというメイドはいつも領主会議にお供をされている方でしたよね?」
「はい、エンターシャ様と同様に本当に若返ったようでしたね。羨ましい…、いえ、驚きました」
シャルル様はマリンさんの事も呼び捨てにされていましたし、なんだかメイドと言うよりエンターシャ様と同じ一人の女性として接しておられました。
マリンさんの言う、シャルル様に言われたらどこでも服を脱ぐとはどういうことなのでしょうか…。
あの話の脈絡が聞いていて理解できませんでした。
「シャルル様の事ですから、もしかしたら本当に若々しくなる魔法もご存知なのかもしれませんよ」
【転移門】【不可視】【収納】魔法ですか…、男性が魔法を使えるだけでも驚きなのに信じられない魔法ばかりです。
もしエリカをパートナー候補にして下さったら私とも親密になってくださって若々しくなれるのかしら…。
「いや、そんな…魔法で若返るだなんて…いくらなんでも…。私も今日は驚くことばかりでとても疲れましたよ…。マーガレット様、お先に休まさせていただきますね」
「デイジーにも心配を掛けましたからね。ゆっくり休んで下さい」
今度の領主会議にはシャルル様も出席されるとおっしゃっていました。
その時にもう一度シェリー様やサマンサ様の前でお願いして一員にしていただかないと…。
エリカの事もありますが私もこんな気持ちになるのは初めてですよ。
0
お気に入りに追加
150
あなたにおすすめの小説
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました
竹桜
ファンタジー
自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。
転生後の生活は順調そのものだった。
だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。
その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。
これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。
ダンマス(異端者)
AN@RCHY
ファンタジー
幼女女神に召喚で呼び出されたシュウ。
元の世界に戻れないことを知って自由気ままに過ごすことを決めた。
人の作ったレールなんかのってやらねえぞ!
地球での痕跡をすべて消されて、幼女女神に召喚された風間修。そこで突然、ダンジョンマスターになって他のダンジョンマスターたちと競えと言われた。
戻りたくても戻る事の出来ない現実を受け入れ、異世界へ旅立つ。
始めこそ異世界だとワクワクしていたが、すぐに碇石からズレおかしなことを始めた。
小説になろうで『AN@CHY』名義で投稿している、同タイトルをアルファポリスにも投稿させていただきます。
向こうの小説を多少修正して投稿しています。
修正をかけながらなので更新ペースは不明です。
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
「クズスキルの偽者は必要無い!」と公爵家を追放されたので、かけがえのない仲間と共に最高の国を作ります
古河夜空
ファンタジー
「お前をルートベルク公爵家から追放する――」それはあまりにも突然の出来事だった。
一五歳の誕生日を明日に控えたレオンは、公爵家を追放されてしまう。魔を制する者“神託の御子”と期待されていた、ルートベルク公爵の息子レオンだったが、『継承』という役立たずのスキルしか得ることができず、神託の御子としての片鱗を示すことが出来なかったため追放されてしまう。
一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
※他サイト様でも掲載しております。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
スカートの中を覗きたい騎士団員達
白木 白亜
ファンタジー
超美人で噂の新米騎士、クレナ。
彼女が騎士団に入団すると決まったとき、騎士団には女性用の制服がなく、クレナ専用にわざわざデザインされた。
しかし、それは黒く、短くてしかも横にスリットの入ったタイトスカートで……
そんな中で、いろんな団員が偶然を装ったり連携したりして必死にパンチラを狙う下品な話。
※この物語はスライムにマッサージされて絶頂しまくる女の話のスピンオフ的作品となります。
不定期更新です。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる