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第405話 ジェシカの来訪
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「ジェシカ、本当にここまでで良いのですか?」
「はい、ここまで送ってもらえれば後は歩いて行けますので…」
お母様にエルスタイン領都の“転移の祠”まで送ってもらえれば十分です。
昨年の領主会議の時に同じように来ていますので、ここからルーシャ様のお屋敷までは感覚で分かります。
それにお母様が一緒に来たらルーシャ様は日帰りを勧められるかもしれません。
私とカリーナだけなら滞在を認めて下さる事でしょう。
「そうそうジェシカ、もし滞在できればルーシャ様達がどうしてあんなに若返ったようになられたのか調べておくのよ」
「魔法や食べ物ではないとおっしゃっていますがきっと何か秘密があるはずです」
「そんなこと…出来ないわよ…」
「調べると言っても皆さんの生活を注意深く観察するだけですよ。それぐらいなら出来るでしょう?」
ジェシカが突拍子もない事を言ってきたと思いましたがまたとない機会ですね。
「分かったけれど期待しないでね…」
そう言いながら魔動力車から降り、“転移の祠”の中心から少し離れるとお母様はカプランド領都へ戻っていきました。
「さぁカリーナ、シャルルの所へ行くわよ~」
「は~い…、でも歩いて行くのが大変ですね」
「……ジェシカ様、あんなところに魔動力車が置いてありますが…」
「本当ね、なぜこんなところに…まさか使って良いとか…?」
「“転移の祠”の出入口で警備の方に聞いてみましょう」
XX XY
「シャルル、帰って来ませんね…」
「オーリエさん、まだ4日目ですよ。今回は“シャルル巻き”の事もありますし、お店や魔道具製作所の浴場を改修すると言っていましたから…」
「なんだかとってもシャルルに会いたい気分なんですよ」
「それ、私にも分かりますよ。今までは気にならなかったのですがたまに身体が疼いて無性にシャルルに触って欲しくなるんですよね~」
「エリシアさんもですか…」
「そう言えば私もオーリエさんやエリシアさんのように感じたこともありましたね」
確かその日はちょうどシャルルに“せっくす”してもらったのですよね…。それで受精して…。
ハッ!
もしかしてそういう気分の時に“せっくす”してもらえれば受精するのかしら…?
でもそんなに都合よく機会が分かるわけないわよね…。
「ユナさん、お腹の方はどう?」
「エリシアさん、まだ全然変わりませんよ。お腹が大きくなってこないと…」
「まさか私達の中で一番に受精するとはね…」
「まぁまぁオーリエさん、私は一応年上なのですからそう言わずに…」
シャルルにも言いましたが私にとっては早いというわけではないのです。
「アデルさんもいずれ気付くでしょうね」
「メンテールさんの瞳の色が変わって不思議がってはいたようですが…」
「シエラさん達のお腹が大きくなってくる頃にはルーシャ様が何かしら説明されるのではないでしょうか」
「そうよね。まだ先日覚醒されたところですし、さすがに“せっくす”は時期尚早ですものね」
「今みたいにアデルさんがいない時じゃないと、迂闊に“せっくす”や受精について気軽に話せないのが難点ですよ…」
「それでユナさんは属性に捉われなくなってどうなの?」
「もう風属性の【乾燥】も出来るようになりましたよ。便利ですよね~、濡らしても乾かせますから…」
左眼がシャルルと同じ黒色になってから、自分の想像力次第で少しずつ色々な魔法が発動できるようになりました。
「いいなぁ~。これまで他の属性の魔法が使えるだなんて想像も出来なかったけれど、私も色々な魔法を覚えていきたいですよ」
「でもエリシアさん、受精したら最低6ヶ月は“せっくす”してもらえないのですよ~」
「それは遅かれ早かれ仕方がないのでは…」
「エリシアさんの言うとおりですね。さてと…私は運動でもしてシャルルに会いたい気持ちを発散させてきますよ…」
「「オーリエさん、私も行きますよ」」
XX XY
「ジェシカ様、残念でしたね。まさかあれはグレイス女王様専用の魔動力車だったなんて…」
「そうね、でもどうして“転移の祠”内に置いてあるのかしらね…」
魔動力車に乗って向かう時は近くに感じましたが歩くとずいぶん距離があるのが分かります。
しばらく歩いてようやく大きな都市が見えてきた頃、後ろから一台の魔動力車が私達の横を通り過ぎていきました。
「ジェシカ様、あの魔動力車はさっきの…」
「めずらしいですね。こんな所を歩いている者がいるなんて…」
この道は街から“転移の祠”を繋いでいるだけの道なのに…。
「グ、グレイス様、さっきの方達の一人はサリー様のお嬢様ではありませんか?」
「本当ですか? ホーリー」
「はい、あの特徴的な青紫色の髪は見覚えがあります」
「もしそうなら見過ごすのもなんですから確認してください…」
「グレイス様、助かりました。魔動力車に乗せていただいて感謝いたします」
相変わらずなんて若々しくてお綺麗なのかしら…。
本当にお母様より年上なの?
カリーナには悪いですがグレイス様の方が髪も艶やかで肌の質感も若々しいですよ…。
それにお供の…確かホーリーさんも昨年の領主会議の時より驚くほど若々しくお綺麗になられています。
以前の容姿を知らなければもう別人のようですね…。
カリーナもホーリーさんのことを覚えていたのか愕然としているようです。
「驚きましたよ。まさか本当にジェシカさんがこんなところを歩いているだなんて…」
「はい、お母様に“転移の祠”まで送っていただき、ルーシャ様のお屋敷へ向かっていたのです。やっぱり歩くには少し距離がありましたね…」
「そうでしたか…。それでどうしてエルスタイン領都へ?」
「はい、昨年シャルルが「“女”になったんだからまたいつでも遊びにおいでよ」って、言ってくれていましたので会いに来たのです」
「……、それは社交辞令ではありませんか?」
「ひどいですよ、グレイス様まで…」
「フフ…、冗談ですよ。シャルル様は思ってもいない事は言いませんから…」
「グレイス様…」
なんだか私よりシャルルのことを良く知っておられるような口振りですね。
「それならサリー様と一緒に来られた方が良かったのではありませんか?」
「今回は日帰りではなく、しばらく滞在させていただきシャルルと生活を共にして、どんな風に暮らしているのか知りたいのです」
「そう…ですか…」
「グレイス様はどうしてこちらへ? それにどうやって…?」
王都には“転移の祠”は無いとお母様から聞いたことがあるのですが…。
「それは当然エリシアがお世話になっていますからね。時々来ているのですよ。どうやって来たかは秘密です。フフ…」
私がシャルルのお世話になりに来ているとも言えますね。
「はぁ~、エリシア様が羨ましいですよ…(ボソッ)」
「……」
確かジェシカさんの方が先にシャルルと出会っていて、シャルルの事を気に入っていたのですよね。
「グレイス様、ようこそおいでくださいました」
「えっ!? ジェシカ…様ですか…。ようこそおいでくださいました」
「こんにちはエリオンさん。お世話になります」
「こちらのジェシカさんは“転移の祠”からこちらへ歩いておられるところを魔動力車へ乗せてきたのです」
「そ、そうでしたか…」
「エリオンさん、私はお母様から親書を預かってきておりますのでルーシャ様にお目通りをお願いしたいのですが…」
「分かりました。ご案内します」
「ではエリオンさん、私が来たこともルーシャ様に伝えてもらえますか。私は先にシャルル様に会いに行きますよ」
「グレイス様、シャルル様は数日前より外出されていてお留守なのです」
「えっ、そうなのですか…、仕方がないですねぇ。ではエリシアにでも会っておきましょうか…」
「そんなぁ~」
シャルルがいないだなんて予想外です。
それにグレイス様はエリシア様に会いに来られたんじゃ…、まるでついでのように言われてますね。
「では、ジェシカ様、どうぞこちらへ」
「グレイス様、エリシア様達はお庭におられると思います」
「ホーリーさん、ミレーヌさん、それからカリーナさんでしたよね…。皆さんも他の者にお部屋へ案内させますね」
コンコン、コン。
『はい…』
ガチャ…。
「ルーシャ様、カプランド領のジェシカ様がいらっしゃいました」
『えっ!? ジェシカさんが…、入っていただいて…』
「それから、一緒にグレイス様もお見えです。シャルル様がお留守だと伝えるとエリシア様のところへ行かれています」
『分かりました』
グレイス様と一緒にとは不思議ですね。
ジェシカさんを部屋に招き入れると長椅子に座ることを勧め対面します。
昨年こちらに来られた時よりもまた少し成長されているようです。
フフ…、ジェシカさんはあまりサリー様に似ていないですよね…。
「ルーシャ様、突然の訪問申し訳ありません」
『い…いえ、驚きましたがかまいませんよ。どうしてこちらへ?』
「昨年、シャルルがいつでも遊びにおいでよと言ってくれていましたので会いに来ました」
『そ、そうでしたか…。確かにそんなことを言っていたような気もしますね…』
『それでサリー様はどうされたのですか?』
「実は…今回はしばらく滞在させていただきたいと思いまして…、こちらの親書を預かってきております」
『親書ですか…』
ジェシカさんから受け取り内容を読むとジェシカさんをしばらく滞在させて欲しいという事が書かれていました。
今年の領主会議が行われる時に一緒に連れて来て欲しいとは…。
ジェシカさんが勝手に来たわけではなさそうですし、サリー様も納得された上でこの親書を書かれたのでしょう。
「私はシャルルがどのような暮らしをしているのか側にいて知りたいのです」
『シャルルは“男”になってから忙しくて屋敷にいることも少ないですからいつも側にはいられませんよ…』
「えっ!? シャルルは“男”になったのですか…。ぜひ会ってお祝いの言葉を…」
一瞬とっても嬉しくなりましたが、これで確実にあの三人の中からパートナーを決定することになると思うと気が滅入ってきます。
『ジェシカさんは…シャルルの事が気に入っているのですよね?』
バルゼ領のナーナルンさんとケープノット領のメラニーさんはまだ“女”になっていませんが、三人ともシャルルを意識しているのは分かっています。
「えっ…、あ…はい…」
「他の男性と会っていてもシャルルの事で頭の中がいっぱいです…」
『そうですか…、とりあえず滞在を許可します。シャルルもジェシカさんに会えると喜ぶと思いますよ』
よく考えれば既にシエラ、メンテール、ユナさんがシャルルの子供を受精しているのですから無理にシャルルのパートナーになってもらう必要は無いのですよね。
シャルルの考え次第ですが、ジェシカさんがカプランド領の後継者としてシャルルの為に生きてくれるのなら、今後覚醒していずれ受精することになっても問題はないでしょう。
元々サリー様もジェシカさんの為にシャルルの精子を望まれていた訳ですし…。
「ありがとうございますっ!」
『部屋は迎賓館の方になりますが、食事などは私達と一緒でかまいませんよ。住居棟のリビングにはエリシアさん達もいると思いますから…』
「はい、しばらくお世話になります」
(ハァ~、シャルル…、ジェシカさんまで来てしまったわよ)
XX XY
エリオンさんの言っていたようにエリシア達は庭に出ていたようです。
「エリシア…」
「あっ、お母様…」
「「グ…グレイス様、こんにちは…」」
「オーリエさんもユナさんも元気そうですね…」
「えっ!? ユナさん、その左眼はもしかして…」
「はい! 先日受精しました」
「こんなに早く…、もう三人目ですよね…」
分かってはいるのですが改めてシャルルがこの世界の常識にとらわれていないことが分かります。
まぁ、あれだけ何度も子宮に繋がる穴の中に射精をしてくれるのですから当然でしょうね…。
「シャルルが留守にしていると聞きましたが今回はどこに行っているのですか?」
「ルージュ領都ですよ」
「そうでしたか、サマンサ様のところですね。シャルルは相変わらず忙しくしているのですねぇ」
「それで、エリシア達は何をしていたのですか?」
「運動したり魔法の練習です」
「そう言えば、もう一人アデルさんが見当たりませんが…」
「アデルさんはクーシアさんに裁縫を教わっているのだと思います。クーシアさんの服を着てみて、服作りに興味を持ったそうです」
「それは感心ですね。それでエリシアは何かをしているのですか?」
「何かをとは…?」
「あなたは何かシャルルの役に立つことをしているのですかという意味です」
「えっ…」
「まさか、毎日食べて寝ているだけじゃないでしょうね…」
「あなたは昔、王女という立場を捨ててでもシャルルの側にいたいと王領を出たのですよ。立場上王女には変わりありませんがシャルルの前では平等なのです」
「アデルさんがクーシアさんを手伝えるようになれば、きっとシャルルは喜ぶはずです」
クーシアさんの仕事とはいえ今は一人で私達の服作りをしてくれているのですから…。
「「「あっ…」」」
「もちろん魔法の練習も大切ですよ。でもシャルルがいなくても自分の出来ることをして、シャルルの為に生きていかないでどうするのです」
「お母様…」
「ユナさんとオーリエさんもそうですよ」
「シャルルが何でもしてくれると甘えていてはいけませんよ。初心に戻ってシャルルの為に自分の存在価値を上げておかないと他の皆さんから置いていかれますよ」
「「「……」」」
「先ほどカプランド領のジェシカさんがこちらに来られました。今はルーシャ様とお話されていると思いますがしばらく滞在されるようです」
「えっ、ジェシカさんが…」
「シャルルの側でしばらく暮らしてみたいと言っていました。ジェシカさんのシャルルへの想いも相当ですよ」
「これからもシャルルを想う女性は増えていくことでしょう。シャルルに“せっくす”をしてもらいパートナーになれたとしても頑張らないと側にはいられませんよ」
「「「はい…」」」
XX XY
ルーシャ様とお話が終わった後、一度迎賓館の部屋に案内してもらってから住居棟のリビングに向かいます。
昨年シャルルに案内してもらっていたので何となく場所は分かります。
「エリシア様、オーリエ様、ユナ様、お久しぶりです」
やっぱりとてもお綺麗ですね。
髪も艶やかで肌もあんなに瑞々しくて…、昨年の領主会議でお会いした時よりも更に女性らしくなられています。
「ジェシカさん…、来られていたのはお母様から聞いていましたよ」
「「ジェシカ様…、お久しぶりです」」
オーリエさんは身体が小さかったという印象だったのですが、今ではエリシア様と同じくらいに身長も胸も成長されています。
ユナさんという方は…、あれ、左眼の色が違う? 黒色…? カラードではないようですが明らかに左右の瞳の色が違うように見えますね。
「そちらの方は初めてですね。私はカプランド領領主サリーの娘、ジェシカと言います」
オーリエさんよりも幼い感じがしますが、この方も品があって女性らしいですね。
「私は…、え~っと、アデル・ジャ…、アデルと言います」
「シャルルのパートナー候補としてルーシャ様のお屋敷でお世話になっています」
オーリエさんが口に指を当てていたので名前だけ言っておきました。
「えっ、え~っ、シャルルのパートナー候補…四人目ですって~!?」
いつの間にかパートナー候補が四人になっていただなんて…。
「はい、ここまで送ってもらえれば後は歩いて行けますので…」
お母様にエルスタイン領都の“転移の祠”まで送ってもらえれば十分です。
昨年の領主会議の時に同じように来ていますので、ここからルーシャ様のお屋敷までは感覚で分かります。
それにお母様が一緒に来たらルーシャ様は日帰りを勧められるかもしれません。
私とカリーナだけなら滞在を認めて下さる事でしょう。
「そうそうジェシカ、もし滞在できればルーシャ様達がどうしてあんなに若返ったようになられたのか調べておくのよ」
「魔法や食べ物ではないとおっしゃっていますがきっと何か秘密があるはずです」
「そんなこと…出来ないわよ…」
「調べると言っても皆さんの生活を注意深く観察するだけですよ。それぐらいなら出来るでしょう?」
ジェシカが突拍子もない事を言ってきたと思いましたがまたとない機会ですね。
「分かったけれど期待しないでね…」
そう言いながら魔動力車から降り、“転移の祠”の中心から少し離れるとお母様はカプランド領都へ戻っていきました。
「さぁカリーナ、シャルルの所へ行くわよ~」
「は~い…、でも歩いて行くのが大変ですね」
「……ジェシカ様、あんなところに魔動力車が置いてありますが…」
「本当ね、なぜこんなところに…まさか使って良いとか…?」
「“転移の祠”の出入口で警備の方に聞いてみましょう」
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「シャルル、帰って来ませんね…」
「オーリエさん、まだ4日目ですよ。今回は“シャルル巻き”の事もありますし、お店や魔道具製作所の浴場を改修すると言っていましたから…」
「なんだかとってもシャルルに会いたい気分なんですよ」
「それ、私にも分かりますよ。今までは気にならなかったのですがたまに身体が疼いて無性にシャルルに触って欲しくなるんですよね~」
「エリシアさんもですか…」
「そう言えば私もオーリエさんやエリシアさんのように感じたこともありましたね」
確かその日はちょうどシャルルに“せっくす”してもらったのですよね…。それで受精して…。
ハッ!
もしかしてそういう気分の時に“せっくす”してもらえれば受精するのかしら…?
でもそんなに都合よく機会が分かるわけないわよね…。
「ユナさん、お腹の方はどう?」
「エリシアさん、まだ全然変わりませんよ。お腹が大きくなってこないと…」
「まさか私達の中で一番に受精するとはね…」
「まぁまぁオーリエさん、私は一応年上なのですからそう言わずに…」
シャルルにも言いましたが私にとっては早いというわけではないのです。
「アデルさんもいずれ気付くでしょうね」
「メンテールさんの瞳の色が変わって不思議がってはいたようですが…」
「シエラさん達のお腹が大きくなってくる頃にはルーシャ様が何かしら説明されるのではないでしょうか」
「そうよね。まだ先日覚醒されたところですし、さすがに“せっくす”は時期尚早ですものね」
「今みたいにアデルさんがいない時じゃないと、迂闊に“せっくす”や受精について気軽に話せないのが難点ですよ…」
「それでユナさんは属性に捉われなくなってどうなの?」
「もう風属性の【乾燥】も出来るようになりましたよ。便利ですよね~、濡らしても乾かせますから…」
左眼がシャルルと同じ黒色になってから、自分の想像力次第で少しずつ色々な魔法が発動できるようになりました。
「いいなぁ~。これまで他の属性の魔法が使えるだなんて想像も出来なかったけれど、私も色々な魔法を覚えていきたいですよ」
「でもエリシアさん、受精したら最低6ヶ月は“せっくす”してもらえないのですよ~」
「それは遅かれ早かれ仕方がないのでは…」
「エリシアさんの言うとおりですね。さてと…私は運動でもしてシャルルに会いたい気持ちを発散させてきますよ…」
「「オーリエさん、私も行きますよ」」
XX XY
「ジェシカ様、残念でしたね。まさかあれはグレイス女王様専用の魔動力車だったなんて…」
「そうね、でもどうして“転移の祠”内に置いてあるのかしらね…」
魔動力車に乗って向かう時は近くに感じましたが歩くとずいぶん距離があるのが分かります。
しばらく歩いてようやく大きな都市が見えてきた頃、後ろから一台の魔動力車が私達の横を通り過ぎていきました。
「ジェシカ様、あの魔動力車はさっきの…」
「めずらしいですね。こんな所を歩いている者がいるなんて…」
この道は街から“転移の祠”を繋いでいるだけの道なのに…。
「グ、グレイス様、さっきの方達の一人はサリー様のお嬢様ではありませんか?」
「本当ですか? ホーリー」
「はい、あの特徴的な青紫色の髪は見覚えがあります」
「もしそうなら見過ごすのもなんですから確認してください…」
「グレイス様、助かりました。魔動力車に乗せていただいて感謝いたします」
相変わらずなんて若々しくてお綺麗なのかしら…。
本当にお母様より年上なの?
カリーナには悪いですがグレイス様の方が髪も艶やかで肌の質感も若々しいですよ…。
それにお供の…確かホーリーさんも昨年の領主会議の時より驚くほど若々しくお綺麗になられています。
以前の容姿を知らなければもう別人のようですね…。
カリーナもホーリーさんのことを覚えていたのか愕然としているようです。
「驚きましたよ。まさか本当にジェシカさんがこんなところを歩いているだなんて…」
「はい、お母様に“転移の祠”まで送っていただき、ルーシャ様のお屋敷へ向かっていたのです。やっぱり歩くには少し距離がありましたね…」
「そうでしたか…。それでどうしてエルスタイン領都へ?」
「はい、昨年シャルルが「“女”になったんだからまたいつでも遊びにおいでよ」って、言ってくれていましたので会いに来たのです」
「……、それは社交辞令ではありませんか?」
「ひどいですよ、グレイス様まで…」
「フフ…、冗談ですよ。シャルル様は思ってもいない事は言いませんから…」
「グレイス様…」
なんだか私よりシャルルのことを良く知っておられるような口振りですね。
「それならサリー様と一緒に来られた方が良かったのではありませんか?」
「今回は日帰りではなく、しばらく滞在させていただきシャルルと生活を共にして、どんな風に暮らしているのか知りたいのです」
「そう…ですか…」
「グレイス様はどうしてこちらへ? それにどうやって…?」
王都には“転移の祠”は無いとお母様から聞いたことがあるのですが…。
「それは当然エリシアがお世話になっていますからね。時々来ているのですよ。どうやって来たかは秘密です。フフ…」
私がシャルルのお世話になりに来ているとも言えますね。
「はぁ~、エリシア様が羨ましいですよ…(ボソッ)」
「……」
確かジェシカさんの方が先にシャルルと出会っていて、シャルルの事を気に入っていたのですよね。
「グレイス様、ようこそおいでくださいました」
「えっ!? ジェシカ…様ですか…。ようこそおいでくださいました」
「こんにちはエリオンさん。お世話になります」
「こちらのジェシカさんは“転移の祠”からこちらへ歩いておられるところを魔動力車へ乗せてきたのです」
「そ、そうでしたか…」
「エリオンさん、私はお母様から親書を預かってきておりますのでルーシャ様にお目通りをお願いしたいのですが…」
「分かりました。ご案内します」
「ではエリオンさん、私が来たこともルーシャ様に伝えてもらえますか。私は先にシャルル様に会いに行きますよ」
「グレイス様、シャルル様は数日前より外出されていてお留守なのです」
「えっ、そうなのですか…、仕方がないですねぇ。ではエリシアにでも会っておきましょうか…」
「そんなぁ~」
シャルルがいないだなんて予想外です。
それにグレイス様はエリシア様に会いに来られたんじゃ…、まるでついでのように言われてますね。
「では、ジェシカ様、どうぞこちらへ」
「グレイス様、エリシア様達はお庭におられると思います」
「ホーリーさん、ミレーヌさん、それからカリーナさんでしたよね…。皆さんも他の者にお部屋へ案内させますね」
コンコン、コン。
『はい…』
ガチャ…。
「ルーシャ様、カプランド領のジェシカ様がいらっしゃいました」
『えっ!? ジェシカさんが…、入っていただいて…』
「それから、一緒にグレイス様もお見えです。シャルル様がお留守だと伝えるとエリシア様のところへ行かれています」
『分かりました』
グレイス様と一緒にとは不思議ですね。
ジェシカさんを部屋に招き入れると長椅子に座ることを勧め対面します。
昨年こちらに来られた時よりもまた少し成長されているようです。
フフ…、ジェシカさんはあまりサリー様に似ていないですよね…。
「ルーシャ様、突然の訪問申し訳ありません」
『い…いえ、驚きましたがかまいませんよ。どうしてこちらへ?』
「昨年、シャルルがいつでも遊びにおいでよと言ってくれていましたので会いに来ました」
『そ、そうでしたか…。確かにそんなことを言っていたような気もしますね…』
『それでサリー様はどうされたのですか?』
「実は…今回はしばらく滞在させていただきたいと思いまして…、こちらの親書を預かってきております」
『親書ですか…』
ジェシカさんから受け取り内容を読むとジェシカさんをしばらく滞在させて欲しいという事が書かれていました。
今年の領主会議が行われる時に一緒に連れて来て欲しいとは…。
ジェシカさんが勝手に来たわけではなさそうですし、サリー様も納得された上でこの親書を書かれたのでしょう。
「私はシャルルがどのような暮らしをしているのか側にいて知りたいのです」
『シャルルは“男”になってから忙しくて屋敷にいることも少ないですからいつも側にはいられませんよ…』
「えっ!? シャルルは“男”になったのですか…。ぜひ会ってお祝いの言葉を…」
一瞬とっても嬉しくなりましたが、これで確実にあの三人の中からパートナーを決定することになると思うと気が滅入ってきます。
『ジェシカさんは…シャルルの事が気に入っているのですよね?』
バルゼ領のナーナルンさんとケープノット領のメラニーさんはまだ“女”になっていませんが、三人ともシャルルを意識しているのは分かっています。
「えっ…、あ…はい…」
「他の男性と会っていてもシャルルの事で頭の中がいっぱいです…」
『そうですか…、とりあえず滞在を許可します。シャルルもジェシカさんに会えると喜ぶと思いますよ』
よく考えれば既にシエラ、メンテール、ユナさんがシャルルの子供を受精しているのですから無理にシャルルのパートナーになってもらう必要は無いのですよね。
シャルルの考え次第ですが、ジェシカさんがカプランド領の後継者としてシャルルの為に生きてくれるのなら、今後覚醒していずれ受精することになっても問題はないでしょう。
元々サリー様もジェシカさんの為にシャルルの精子を望まれていた訳ですし…。
「ありがとうございますっ!」
『部屋は迎賓館の方になりますが、食事などは私達と一緒でかまいませんよ。住居棟のリビングにはエリシアさん達もいると思いますから…』
「はい、しばらくお世話になります」
(ハァ~、シャルル…、ジェシカさんまで来てしまったわよ)
XX XY
エリオンさんの言っていたようにエリシア達は庭に出ていたようです。
「エリシア…」
「あっ、お母様…」
「「グ…グレイス様、こんにちは…」」
「オーリエさんもユナさんも元気そうですね…」
「えっ!? ユナさん、その左眼はもしかして…」
「はい! 先日受精しました」
「こんなに早く…、もう三人目ですよね…」
分かってはいるのですが改めてシャルルがこの世界の常識にとらわれていないことが分かります。
まぁ、あれだけ何度も子宮に繋がる穴の中に射精をしてくれるのですから当然でしょうね…。
「シャルルが留守にしていると聞きましたが今回はどこに行っているのですか?」
「ルージュ領都ですよ」
「そうでしたか、サマンサ様のところですね。シャルルは相変わらず忙しくしているのですねぇ」
「それで、エリシア達は何をしていたのですか?」
「運動したり魔法の練習です」
「そう言えば、もう一人アデルさんが見当たりませんが…」
「アデルさんはクーシアさんに裁縫を教わっているのだと思います。クーシアさんの服を着てみて、服作りに興味を持ったそうです」
「それは感心ですね。それでエリシアは何かをしているのですか?」
「何かをとは…?」
「あなたは何かシャルルの役に立つことをしているのですかという意味です」
「えっ…」
「まさか、毎日食べて寝ているだけじゃないでしょうね…」
「あなたは昔、王女という立場を捨ててでもシャルルの側にいたいと王領を出たのですよ。立場上王女には変わりありませんがシャルルの前では平等なのです」
「アデルさんがクーシアさんを手伝えるようになれば、きっとシャルルは喜ぶはずです」
クーシアさんの仕事とはいえ今は一人で私達の服作りをしてくれているのですから…。
「「「あっ…」」」
「もちろん魔法の練習も大切ですよ。でもシャルルがいなくても自分の出来ることをして、シャルルの為に生きていかないでどうするのです」
「お母様…」
「ユナさんとオーリエさんもそうですよ」
「シャルルが何でもしてくれると甘えていてはいけませんよ。初心に戻ってシャルルの為に自分の存在価値を上げておかないと他の皆さんから置いていかれますよ」
「「「……」」」
「先ほどカプランド領のジェシカさんがこちらに来られました。今はルーシャ様とお話されていると思いますがしばらく滞在されるようです」
「えっ、ジェシカさんが…」
「シャルルの側でしばらく暮らしてみたいと言っていました。ジェシカさんのシャルルへの想いも相当ですよ」
「これからもシャルルを想う女性は増えていくことでしょう。シャルルに“せっくす”をしてもらいパートナーになれたとしても頑張らないと側にはいられませんよ」
「「「はい…」」」
XX XY
ルーシャ様とお話が終わった後、一度迎賓館の部屋に案内してもらってから住居棟のリビングに向かいます。
昨年シャルルに案内してもらっていたので何となく場所は分かります。
「エリシア様、オーリエ様、ユナ様、お久しぶりです」
やっぱりとてもお綺麗ですね。
髪も艶やかで肌もあんなに瑞々しくて…、昨年の領主会議でお会いした時よりも更に女性らしくなられています。
「ジェシカさん…、来られていたのはお母様から聞いていましたよ」
「「ジェシカ様…、お久しぶりです」」
オーリエさんは身体が小さかったという印象だったのですが、今ではエリシア様と同じくらいに身長も胸も成長されています。
ユナさんという方は…、あれ、左眼の色が違う? 黒色…? カラードではないようですが明らかに左右の瞳の色が違うように見えますね。
「そちらの方は初めてですね。私はカプランド領領主サリーの娘、ジェシカと言います」
オーリエさんよりも幼い感じがしますが、この方も品があって女性らしいですね。
「私は…、え~っと、アデル・ジャ…、アデルと言います」
「シャルルのパートナー候補としてルーシャ様のお屋敷でお世話になっています」
オーリエさんが口に指を当てていたので名前だけ言っておきました。
「えっ、え~っ、シャルルのパートナー候補…四人目ですって~!?」
いつの間にかパートナー候補が四人になっていただなんて…。
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一人、逃げる様に王都を出て行くレオンだが、公爵家の汚点たる彼を亡き者にしようとする、ルートベルク公爵の魔の手が迫っていた。「絶対に生き延びてやる……ッ!」レオンは己の力を全て使い、知恵を絞り、公爵の魔の手から逃れんがために走る。生き延びるため、公爵達を見返すため、自分を信じてくれる者のため。
どれだけ窮地に立たされようとも、秘めた想いを曲げない少年の周りには、人、エルフ、ドワーフ、そして魔族、種族の垣根を越えたかけがえの無い仲間達が集い―― これは、追放された少年が最高の国を作りあげる物語。
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お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
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注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
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