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第371話 結末
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コンコン、コン。
「グレイス様、シャルル様、もうしばらくすると朝食のお時間です」
私はホーリー。
グレイス様の私室の出入口扉の外から声を掛けます。
いつもは中に入るのですが、シャルル様と一緒の時はこうやって声を掛けるだけなのです。
「は~い、分かったよ~」
部屋の中からシャルル様の声が聞こえてきました。
起きておられるようですね。
グレイス様がこうやってシャルル様と一緒に就寝されるようになったのは、確か私達の魔動力車が崖下に落ちていたところを助けていただいて王城に寄っていただいた時からでしたね。
一晩で驚くほど若々しくなられてから、それからも少しずつ若返られているようです。
本当に羨ましい…。
すでに20代になったばかりのメイド達よりも若々しく見えるのです。
さすがにシャルル様が関係しておられるのは分かっています。
昨日もお見えになられた時にグレイス様がシャルル様にメイドさん達が“シャルル様の奇跡”を体験されたかを聞いておられました。
彼女たちの髪は艶々と輝き、肌も瑞々しくて若々しかったのです。
私も“シャルルの風”を使って髪の手入れをしていますが、どうしても根本的な違いがあるのです。
もう間違いなく“シャルル様の奇跡”というものが皆さんを若々しく変貌させているのでしょう。
私も体験させてほしい…。
つい言葉に出してしまいそうになりますが、思いをグッと呑み込みます。
XX XY
「グレイス…、グレイス…」
朝からしていたセックスの何度目かの失神で、身体をビクビクさせながらベッドに横たわっています。
もうグレイスの愛液や潮で身体もベッドもグチャグチャです。
《すごい方ですね》
《そうだね。ルーシャと同じくらい、それよりも一心不乱だったね》
《女王様から一人の女性になれたことが嬉しかったのではありませんか》
《この国で王女として生まれた時よりずっと本当の意味で精神的にも肉体的にも誰かに頼ることが出来なかったのでしょう》
《アイがまともなことを言っているよ》
《ひどいですぅ~》
けっこう気ままな方だと思っていたけれど、アイの言うとおりなのかもしれないな。
とりあえず呼びかけても反応がないので先に浴場でお湯を浴びることにします。
「グレイス…、グレイス、もう朝食の時間だよ」
「はひ…? シャルル…もっと…」
浴場から戻ってきてもう一度声をかけるとようやく気が付いたようです。
「グレイス、イキ過ぎておかしくなったの? 僕はお腹が減ったから先に行くよ」
「身体を綺麗にしてからおいで…」
あれだけ身体がベチョベチョだとちょっと時間が掛かるかもしれないね。
ゆっくり支度をしてから来てもらいましょう。
「へっ…、あっ…、そんな…待って…」
XX XY
僕とクリス達が朝食をいただいている所にグレイスが入ってくると、その姿を見た王城のメイド達が固まり、驚きのあまり食器を落としたりする者もいました。
僕には大きな変化には見えませんが、王城の皆にはかなり変わったように見えたのでしょう。
クリス達も一瞬目を見開き3人で顔を見合わせていますし、ホーリーお姉さんもミレーヌお姉さんも驚きを隠せないようです。
「グレイス様、何かあったのですか? それに…歩き方がおかしいですよ」
“シャルル様の奇跡”…? ではなさそうです。
人が変わったかのように雰囲気が柔らかく、見た目も一層女性らしくなられておられます。
女性らしくと一言で言えば簡単なのですが、それに含まれる要素は私の言葉では言い表せません。
シャルル様を今まで以上にとても優しい目で見ておられますが、あの表情はどういった感情で出来るのでしょうか。
「と…特に何もありませんよ。ホーリーも歩き方は気にしないでください」
注意していても股間が開いてきます。
それにまだ女性器の中にシャルルを感じることが出来るのです。
あぁ…、まだ乳首もくりも敏感でちょっとした刺激でまた愛液が溢れてきそう。
「シャルル…さ…ま、今日はどうされるおつもりですか?」
「うん、さすがに今日中には犯人も王都に戻ってくると思うんだよね」
「グレイス…様が捕らえたのを確認してからエルスタイン領都に帰るつもりだよ」
「え~っ、もう帰ってしまわれるのですか?」
「すいません、メルモアとメンテール、それに皆が待っているんですよ」
「そう…ですか…」
XX XY
朝食後、アシュリとフラネルの為に王都内を散歩することにしました。
「クリスも久しぶりの王都で懐かしいんじゃない?」
「そうですね。王都を離れてからまだ一年も経っていないのにずいぶん昔に思えますよ」
仕える方が変わっただけで街の見え方も違うように思えてくるから不思議です。
「やっぱり王都は他の都市とは違った賑わいですよね」
「そうだね、国の中心だから行きかう人々が多いよね。フラネル達もこれで全ての領都を回ったことになったね」
「シャルル様と一緒にいると行動範囲が広がりますよ」
「アシュリ、シャルル様の行動範囲はこんなものじゃないわよ~」
バルトリア王国に行ったらきっと驚くわね…。
街を歩いていると、ネンネお姉さん達のお店の前を通りました。
「ネンネさん達もすっかり向こうにいついちゃいましたね」
「そうだね。僕のせいでもあるんだけれどね。ネンネお姉さん達はまだあっちのお店に居たいって言っていたけれど、このままここのお店を放置していてもね…」
どうしてあげるのが一番良いのだろう…、そんな風に思いながら王城に戻ると、ミレーヌお姉さんが慌てて駆け寄ってきました。
「シャルル様、先ほどドラと言う商人が王都に戻ってきたと連絡がありました。現在警備の者達が捕らえに向かっています」
「ようやく戻ってきたか…」
「まさか戻ってきたところで捕まるとは思っていなかっただろうね」
XX XY
「ようやく王都に戻ってきたか…」
「そうですね。追っ手もいなかったですから、案外ドラ様の言うとおり気付かれていないのかもしれませんね」
それかあの盗賊崩れの者達がきちんと仕事をしたのでしょう。
ドラさんがまさか12人も雇うとは…用心深いものです。
さて、商会に付いたら辞めることをきちんと伝えないと…。
ドラさんの護衛は給金が良くても精神的に良くない仕事ですよ…。
王都に入ったところで、私達の魔動力車の前に数人が立ちはだかり停車させられてしまいました。
「ドラ…、あなたはドラですね?」
「なんだ…」
「あなた達は…、な…何ですか?」
停車させられたと思うと、あっという間に数人に取り囲まれます。
「ドラ…なのですね。私達は王都の警備の者です。女王様の命によりあなた達を拘束します」
「なんですって!? 女王様の命令?」
「なぜ、俺達が捕らえられるんだ?」
「あなた達には“シャルルの風”の模倣品を販売したという容疑が掛かっているのです」
「容疑だと…」
「ですから、その容疑が晴れるまでは女王様の命により拘束させていただきます。抵抗されますと為にはなりませんよ」
「ドラ様…、ここは従うしか…」
「あぁ…」
追っ手も来なかった、俺達が販売したという証拠も無いはず…。
なのにどうして既に容疑が掛かっているんだ…?
XX XY
「ドラさん、お久しぶりですね。男性が元気にされているのは喜ばしいことです」
「グレイス女王様こそ…、一瞬誰だか分からなかったほどお綺麗です…よ…」
「……」
グレイス女王様…、本当に若々しくてお綺麗です。
もう30歳を越えておられるはずなのに、私やその辺りにいるメイドの方々より年下に見えます。
「フフ…ありがとう」
「さて、警備の者達から聞いたとは思いますがあなた達に“シャルルの風”の模倣品を販売したという容疑が掛かっております」
「それに対して何か申したいことはありますか?」
「……何のことだか…」
「そうですか…、そうですよね」
「商人であるドラさんが発明品の模倣品を作って販売することがどれだけ重罪だということかは承知ですものね」
「……は…い…」
やっぱり容疑は掛かっているけれど証拠は無いのか…?
「ハァ~、本当に馬鹿な者がいるようです」
「ありえないとは思っていたのですが、もし模倣品を画策し販売した者は無期収監、仮にその者が商人なら商会も取り潰すつもりだったのですよ…」
「そ、それは…」
無期収監に、商会も取り潰すだって…。
「ドラさんもそんな馬鹿な商人が周りにいたら迷惑でしょう?」
「そ、そうです…ね」
「……」
ドラさんの表情が険しくなっていっています。
グレイス女王様は私達が犯人だと思われているの? 思われていないの?
それにしても無期収監だなんて、重罪になるのは分かっていたけれどそこまでの量刑になるだなんて…。
「実は今日は私のこれまでの人生で最高最良の日で、とても気分が良いのです」
「「……」」
「ですから、もう一度念のために聞きます。ドラさんは“シャルルの風”の模倣品を販売していないのですよね?」
「もし…今、それを認めるのなら刑はあなた達だけにして、商会はお咎めなしにしますけれど…」
「……」
どういうことなんだ、やっぱり女王様は俺が犯人だと思っている?
いや、商会も取り潰すと脅しをかけて自白を狙っている?
(ドラさん、そんなに考え込んでいたら疑われるだけじゃないですか…)
認めるつもりが無いなら早く答えないと…。
グレイス女王様はニコニコとされていますが、目は私達を試すように見ておられます。
「いえ、心当たりがありません…」
「そうですか…」
「グレイス様、私の容疑が晴れるようにするにはどうしたらいいのでしょうか?」
「そうですね…」
「ではその前に会ってもらいたい人がいます」
「ホーリー、こちらへ呼んでもらえますか?」
「かしこまりました」
いよいよ僕達の登場です。
クズが連れてこられる前にグレイスと打ち合わせをして、クズが犯行を認めなければ僕達が顔を出すことにしていたのです。
呼ばれたってことは犯行を否認したのでしょう。
「グレイス様、お連れしました…」
「シャルル様、お手数をお掛けします。さぁこちらへ」
「なっ、シャルルだって~!?」
シャ…ルル…? こいつが?
「え~っ!」
あの方がシャルル様?
なんて格好良くてたくましい男性なの…。
子供だと聞いていたけれど成人男性なのかしら…?
「グレイス様、この者がシャルルですか?」
「そうですが、なにか…?」
「そんな馬鹿な…、俺…、私の知っている者ではありません」
「クズ、久しぶりだね」
残念ですがここまで変貌すると同じ男性のクズには気付かないのでしょう。
「ドラ…だ! お前は本当にシャルルなのか?」
「そうだよ。信じてもらえないかもしれないけれど、あれから“男”になって成長したんだよ」
「成長だって…?」
俺よりも背が高く、成人男性ぐらいあるじゃないか…。
体格も細身なのにまるで石像が立っているかのように強靭さを感じる。
瞳の色が濃くなったのか?
それに頭に布地を付けているせいで印象が変わって見えるな…。
「それでグレイス様、私の容疑が晴れる方法は…?」
「……」
「クズ、君は“シャルルの風”の模倣を昨年から考えていたみたいだね。クリスから聞いていたよ」
「ク、クリスだと…」
「お久しぶりですね、ドラさん。まさか模倣品を“ドラの風”として販売していないでしょうね」
「そんな名前にするわけない…。いやだから販売なんてしてない…」
確かにクリスのようだがあんなに若々しくて綺麗になっているだなんて…。
髪型も変わっていたから側にいたのが分からなかった。
「どうしてクリスがシャルルの側にいるんだ?」
「今、私はシャルル様にお仕えしているのです。これからの人生はシャルル様の為に生きていくつもりです」
「なんだって!?」
(うそっ! あれがクリスさん?)
昨年ムーランさんの果樹園で会いましたがあんなに若々しくて綺麗じゃなかったのに…。
元々体型は良い方だったけれど、今は年下の私よりも若く見えます。
「……ドラさん、あなたは昨年から要注意人物として私達や各領主様達に知られていたのですよ」
「それでどうすれば…?」
「ですから、このまま一度あなた達をケープノット領都へ移送させていただきます」
「ケープノット領都で証拠が見つからなければ容疑も晴れるでしょう」
「そう…ですか…、分かりました」
そうか、やっぱり証拠は無いんだな…。
「まぁ、僕としては犯人が誰であれ早く捕まって被害にあった領民の方に返金して欲しいと思っているよ」
「今回の犯人は用心深い奴みたいで、ユーグラから王領方面にある町から追ってくる者を盗賊達を使って襲わせたみたいなんだよ」
「僕達も襲われたんだよ」
「へ、へぇ~、それは災難だったな…」
そうか、やはり追われていたのか…。
あの人数なら逃げ帰るしかなかったのだろう…。
「まぁ、ここにいる僕のメイド達が全員やっつけて確保したけれどね」
「僕達の前にユーグラの都市長達も襲っていたみたいなんだよ。ひどい怪我を負わせていたから大変だったよ」
「なっ、なっ、なっ…」
「……」
ドラさんは驚きで言葉も出ないようです。
あの12人の盗賊崩れの者達がユーグラの都市長とシャルル様達を襲い、それをシャルル様達が倒されたって事…?
そ…それじゃあ、盗賊達が私達の事を話せば…。
「クズの…、ドラの容疑が晴れると良いね…」
「では、グレイス様、僕達はこれで失礼します」
「後はよろしくお願いします」
「シャルル様、お任せください…」
「では、王都に戻られたところ申し訳ありませんがドラさん達にはケープノット領都へ行っていただきます」
「……」
ドラ…さん…。
「わ…、わた…私がやりました!」
「グレイス様、私が模倣品を販売しました…」
「そう…ですか…」
「ですから、どうか商会の取り潰しは…」
「先ほど念のために再確認した時は心あたりがないと返答されたではないですか」
「女王の私に嘘をついたのですか?」
「そ、それは…」
「まぁ、良いでしょう。さっきも言いましたが今日は私にとって最高最良の日なのです。出来ればこんなことに時間を取られたくないのです」
「ドラさんは最後の最後で運が良かったですね…」
「……」
「しかし、これからケープノット領都には行ってもらわなければなりません」
「すでに模倣品の製作に携わった者達も確保されていて、あなたが揃うことで全員の量刑が決められるのです」
「残念ながらあなたは身体が動く間は収監されることになるでしょうが…」
「は…い…」
そうか…、女王様もシャルルも俺が犯人だと確証を持っていたんだな…。
それでもう会うことの無い俺の名前を最後に言ったのか…。
「それから、あなた…。あなたもクリスと言うのでしたね?」
「はい…」
「あなたは直接誰かに被害を与えたわけではありませんが、あなたもドラさんの画策に携わった以上量刑は重くなります」
「は…い…」
「画策していることが分かれば、止めることも、商会を辞めることも出来たでしょう」
「先ほどのもう一人のクリスさんはドラさんが模倣を画策した時に辞めようと決められたそうですよ」
「クリス…」
「あなたにも念のためにケープノット領都へ行ってもらいますが、王都に戻ったら2年の収監とします」
「はい…」
「ドラさん、これが最後です。もしケープノット領都で嘘をつくようなことがあれば、今度こそ王都の商会は有無を言わさず取り潰します」
「分かりましたね」
「はい…」
「以上です!」
「グレイス様、シャルル様、もうしばらくすると朝食のお時間です」
私はホーリー。
グレイス様の私室の出入口扉の外から声を掛けます。
いつもは中に入るのですが、シャルル様と一緒の時はこうやって声を掛けるだけなのです。
「は~い、分かったよ~」
部屋の中からシャルル様の声が聞こえてきました。
起きておられるようですね。
グレイス様がこうやってシャルル様と一緒に就寝されるようになったのは、確か私達の魔動力車が崖下に落ちていたところを助けていただいて王城に寄っていただいた時からでしたね。
一晩で驚くほど若々しくなられてから、それからも少しずつ若返られているようです。
本当に羨ましい…。
すでに20代になったばかりのメイド達よりも若々しく見えるのです。
さすがにシャルル様が関係しておられるのは分かっています。
昨日もお見えになられた時にグレイス様がシャルル様にメイドさん達が“シャルル様の奇跡”を体験されたかを聞いておられました。
彼女たちの髪は艶々と輝き、肌も瑞々しくて若々しかったのです。
私も“シャルルの風”を使って髪の手入れをしていますが、どうしても根本的な違いがあるのです。
もう間違いなく“シャルル様の奇跡”というものが皆さんを若々しく変貌させているのでしょう。
私も体験させてほしい…。
つい言葉に出してしまいそうになりますが、思いをグッと呑み込みます。
XX XY
「グレイス…、グレイス…」
朝からしていたセックスの何度目かの失神で、身体をビクビクさせながらベッドに横たわっています。
もうグレイスの愛液や潮で身体もベッドもグチャグチャです。
《すごい方ですね》
《そうだね。ルーシャと同じくらい、それよりも一心不乱だったね》
《女王様から一人の女性になれたことが嬉しかったのではありませんか》
《この国で王女として生まれた時よりずっと本当の意味で精神的にも肉体的にも誰かに頼ることが出来なかったのでしょう》
《アイがまともなことを言っているよ》
《ひどいですぅ~》
けっこう気ままな方だと思っていたけれど、アイの言うとおりなのかもしれないな。
とりあえず呼びかけても反応がないので先に浴場でお湯を浴びることにします。
「グレイス…、グレイス、もう朝食の時間だよ」
「はひ…? シャルル…もっと…」
浴場から戻ってきてもう一度声をかけるとようやく気が付いたようです。
「グレイス、イキ過ぎておかしくなったの? 僕はお腹が減ったから先に行くよ」
「身体を綺麗にしてからおいで…」
あれだけ身体がベチョベチョだとちょっと時間が掛かるかもしれないね。
ゆっくり支度をしてから来てもらいましょう。
「へっ…、あっ…、そんな…待って…」
XX XY
僕とクリス達が朝食をいただいている所にグレイスが入ってくると、その姿を見た王城のメイド達が固まり、驚きのあまり食器を落としたりする者もいました。
僕には大きな変化には見えませんが、王城の皆にはかなり変わったように見えたのでしょう。
クリス達も一瞬目を見開き3人で顔を見合わせていますし、ホーリーお姉さんもミレーヌお姉さんも驚きを隠せないようです。
「グレイス様、何かあったのですか? それに…歩き方がおかしいですよ」
“シャルル様の奇跡”…? ではなさそうです。
人が変わったかのように雰囲気が柔らかく、見た目も一層女性らしくなられておられます。
女性らしくと一言で言えば簡単なのですが、それに含まれる要素は私の言葉では言い表せません。
シャルル様を今まで以上にとても優しい目で見ておられますが、あの表情はどういった感情で出来るのでしょうか。
「と…特に何もありませんよ。ホーリーも歩き方は気にしないでください」
注意していても股間が開いてきます。
それにまだ女性器の中にシャルルを感じることが出来るのです。
あぁ…、まだ乳首もくりも敏感でちょっとした刺激でまた愛液が溢れてきそう。
「シャルル…さ…ま、今日はどうされるおつもりですか?」
「うん、さすがに今日中には犯人も王都に戻ってくると思うんだよね」
「グレイス…様が捕らえたのを確認してからエルスタイン領都に帰るつもりだよ」
「え~っ、もう帰ってしまわれるのですか?」
「すいません、メルモアとメンテール、それに皆が待っているんですよ」
「そう…ですか…」
XX XY
朝食後、アシュリとフラネルの為に王都内を散歩することにしました。
「クリスも久しぶりの王都で懐かしいんじゃない?」
「そうですね。王都を離れてからまだ一年も経っていないのにずいぶん昔に思えますよ」
仕える方が変わっただけで街の見え方も違うように思えてくるから不思議です。
「やっぱり王都は他の都市とは違った賑わいですよね」
「そうだね、国の中心だから行きかう人々が多いよね。フラネル達もこれで全ての領都を回ったことになったね」
「シャルル様と一緒にいると行動範囲が広がりますよ」
「アシュリ、シャルル様の行動範囲はこんなものじゃないわよ~」
バルトリア王国に行ったらきっと驚くわね…。
街を歩いていると、ネンネお姉さん達のお店の前を通りました。
「ネンネさん達もすっかり向こうにいついちゃいましたね」
「そうだね。僕のせいでもあるんだけれどね。ネンネお姉さん達はまだあっちのお店に居たいって言っていたけれど、このままここのお店を放置していてもね…」
どうしてあげるのが一番良いのだろう…、そんな風に思いながら王城に戻ると、ミレーヌお姉さんが慌てて駆け寄ってきました。
「シャルル様、先ほどドラと言う商人が王都に戻ってきたと連絡がありました。現在警備の者達が捕らえに向かっています」
「ようやく戻ってきたか…」
「まさか戻ってきたところで捕まるとは思っていなかっただろうね」
XX XY
「ようやく王都に戻ってきたか…」
「そうですね。追っ手もいなかったですから、案外ドラ様の言うとおり気付かれていないのかもしれませんね」
それかあの盗賊崩れの者達がきちんと仕事をしたのでしょう。
ドラさんがまさか12人も雇うとは…用心深いものです。
さて、商会に付いたら辞めることをきちんと伝えないと…。
ドラさんの護衛は給金が良くても精神的に良くない仕事ですよ…。
王都に入ったところで、私達の魔動力車の前に数人が立ちはだかり停車させられてしまいました。
「ドラ…、あなたはドラですね?」
「なんだ…」
「あなた達は…、な…何ですか?」
停車させられたと思うと、あっという間に数人に取り囲まれます。
「ドラ…なのですね。私達は王都の警備の者です。女王様の命によりあなた達を拘束します」
「なんですって!? 女王様の命令?」
「なぜ、俺達が捕らえられるんだ?」
「あなた達には“シャルルの風”の模倣品を販売したという容疑が掛かっているのです」
「容疑だと…」
「ですから、その容疑が晴れるまでは女王様の命により拘束させていただきます。抵抗されますと為にはなりませんよ」
「ドラ様…、ここは従うしか…」
「あぁ…」
追っ手も来なかった、俺達が販売したという証拠も無いはず…。
なのにどうして既に容疑が掛かっているんだ…?
XX XY
「ドラさん、お久しぶりですね。男性が元気にされているのは喜ばしいことです」
「グレイス女王様こそ…、一瞬誰だか分からなかったほどお綺麗です…よ…」
「……」
グレイス女王様…、本当に若々しくてお綺麗です。
もう30歳を越えておられるはずなのに、私やその辺りにいるメイドの方々より年下に見えます。
「フフ…ありがとう」
「さて、警備の者達から聞いたとは思いますがあなた達に“シャルルの風”の模倣品を販売したという容疑が掛かっております」
「それに対して何か申したいことはありますか?」
「……何のことだか…」
「そうですか…、そうですよね」
「商人であるドラさんが発明品の模倣品を作って販売することがどれだけ重罪だということかは承知ですものね」
「……は…い…」
やっぱり容疑は掛かっているけれど証拠は無いのか…?
「ハァ~、本当に馬鹿な者がいるようです」
「ありえないとは思っていたのですが、もし模倣品を画策し販売した者は無期収監、仮にその者が商人なら商会も取り潰すつもりだったのですよ…」
「そ、それは…」
無期収監に、商会も取り潰すだって…。
「ドラさんもそんな馬鹿な商人が周りにいたら迷惑でしょう?」
「そ、そうです…ね」
「……」
ドラさんの表情が険しくなっていっています。
グレイス女王様は私達が犯人だと思われているの? 思われていないの?
それにしても無期収監だなんて、重罪になるのは分かっていたけれどそこまでの量刑になるだなんて…。
「実は今日は私のこれまでの人生で最高最良の日で、とても気分が良いのです」
「「……」」
「ですから、もう一度念のために聞きます。ドラさんは“シャルルの風”の模倣品を販売していないのですよね?」
「もし…今、それを認めるのなら刑はあなた達だけにして、商会はお咎めなしにしますけれど…」
「……」
どういうことなんだ、やっぱり女王様は俺が犯人だと思っている?
いや、商会も取り潰すと脅しをかけて自白を狙っている?
(ドラさん、そんなに考え込んでいたら疑われるだけじゃないですか…)
認めるつもりが無いなら早く答えないと…。
グレイス女王様はニコニコとされていますが、目は私達を試すように見ておられます。
「いえ、心当たりがありません…」
「そうですか…」
「グレイス様、私の容疑が晴れるようにするにはどうしたらいいのでしょうか?」
「そうですね…」
「ではその前に会ってもらいたい人がいます」
「ホーリー、こちらへ呼んでもらえますか?」
「かしこまりました」
いよいよ僕達の登場です。
クズが連れてこられる前にグレイスと打ち合わせをして、クズが犯行を認めなければ僕達が顔を出すことにしていたのです。
呼ばれたってことは犯行を否認したのでしょう。
「グレイス様、お連れしました…」
「シャルル様、お手数をお掛けします。さぁこちらへ」
「なっ、シャルルだって~!?」
シャ…ルル…? こいつが?
「え~っ!」
あの方がシャルル様?
なんて格好良くてたくましい男性なの…。
子供だと聞いていたけれど成人男性なのかしら…?
「グレイス様、この者がシャルルですか?」
「そうですが、なにか…?」
「そんな馬鹿な…、俺…、私の知っている者ではありません」
「クズ、久しぶりだね」
残念ですがここまで変貌すると同じ男性のクズには気付かないのでしょう。
「ドラ…だ! お前は本当にシャルルなのか?」
「そうだよ。信じてもらえないかもしれないけれど、あれから“男”になって成長したんだよ」
「成長だって…?」
俺よりも背が高く、成人男性ぐらいあるじゃないか…。
体格も細身なのにまるで石像が立っているかのように強靭さを感じる。
瞳の色が濃くなったのか?
それに頭に布地を付けているせいで印象が変わって見えるな…。
「それでグレイス様、私の容疑が晴れる方法は…?」
「……」
「クズ、君は“シャルルの風”の模倣を昨年から考えていたみたいだね。クリスから聞いていたよ」
「ク、クリスだと…」
「お久しぶりですね、ドラさん。まさか模倣品を“ドラの風”として販売していないでしょうね」
「そんな名前にするわけない…。いやだから販売なんてしてない…」
確かにクリスのようだがあんなに若々しくて綺麗になっているだなんて…。
髪型も変わっていたから側にいたのが分からなかった。
「どうしてクリスがシャルルの側にいるんだ?」
「今、私はシャルル様にお仕えしているのです。これからの人生はシャルル様の為に生きていくつもりです」
「なんだって!?」
(うそっ! あれがクリスさん?)
昨年ムーランさんの果樹園で会いましたがあんなに若々しくて綺麗じゃなかったのに…。
元々体型は良い方だったけれど、今は年下の私よりも若く見えます。
「……ドラさん、あなたは昨年から要注意人物として私達や各領主様達に知られていたのですよ」
「それでどうすれば…?」
「ですから、このまま一度あなた達をケープノット領都へ移送させていただきます」
「ケープノット領都で証拠が見つからなければ容疑も晴れるでしょう」
「そう…ですか…、分かりました」
そうか、やっぱり証拠は無いんだな…。
「まぁ、僕としては犯人が誰であれ早く捕まって被害にあった領民の方に返金して欲しいと思っているよ」
「今回の犯人は用心深い奴みたいで、ユーグラから王領方面にある町から追ってくる者を盗賊達を使って襲わせたみたいなんだよ」
「僕達も襲われたんだよ」
「へ、へぇ~、それは災難だったな…」
そうか、やはり追われていたのか…。
あの人数なら逃げ帰るしかなかったのだろう…。
「まぁ、ここにいる僕のメイド達が全員やっつけて確保したけれどね」
「僕達の前にユーグラの都市長達も襲っていたみたいなんだよ。ひどい怪我を負わせていたから大変だったよ」
「なっ、なっ、なっ…」
「……」
ドラさんは驚きで言葉も出ないようです。
あの12人の盗賊崩れの者達がユーグラの都市長とシャルル様達を襲い、それをシャルル様達が倒されたって事…?
そ…それじゃあ、盗賊達が私達の事を話せば…。
「クズの…、ドラの容疑が晴れると良いね…」
「では、グレイス様、僕達はこれで失礼します」
「後はよろしくお願いします」
「シャルル様、お任せください…」
「では、王都に戻られたところ申し訳ありませんがドラさん達にはケープノット領都へ行っていただきます」
「……」
ドラ…さん…。
「わ…、わた…私がやりました!」
「グレイス様、私が模倣品を販売しました…」
「そう…ですか…」
「ですから、どうか商会の取り潰しは…」
「先ほど念のために再確認した時は心あたりがないと返答されたではないですか」
「女王の私に嘘をついたのですか?」
「そ、それは…」
「まぁ、良いでしょう。さっきも言いましたが今日は私にとって最高最良の日なのです。出来ればこんなことに時間を取られたくないのです」
「ドラさんは最後の最後で運が良かったですね…」
「……」
「しかし、これからケープノット領都には行ってもらわなければなりません」
「すでに模倣品の製作に携わった者達も確保されていて、あなたが揃うことで全員の量刑が決められるのです」
「残念ながらあなたは身体が動く間は収監されることになるでしょうが…」
「は…い…」
そうか…、女王様もシャルルも俺が犯人だと確証を持っていたんだな…。
それでもう会うことの無い俺の名前を最後に言ったのか…。
「それから、あなた…。あなたもクリスと言うのでしたね?」
「はい…」
「あなたは直接誰かに被害を与えたわけではありませんが、あなたもドラさんの画策に携わった以上量刑は重くなります」
「は…い…」
「画策していることが分かれば、止めることも、商会を辞めることも出来たでしょう」
「先ほどのもう一人のクリスさんはドラさんが模倣を画策した時に辞めようと決められたそうですよ」
「クリス…」
「あなたにも念のためにケープノット領都へ行ってもらいますが、王都に戻ったら2年の収監とします」
「はい…」
「ドラさん、これが最後です。もしケープノット領都で嘘をつくようなことがあれば、今度こそ王都の商会は有無を言わさず取り潰します」
「分かりましたね」
「はい…」
「以上です!」
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マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
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退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
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カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
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一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
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☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
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異世界転生してしまったがさすがにこれはおかしい
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不慮の事故により死んだ主人公 神田玲。
目覚めたら見知らぬ光景が広がっていた
3歳になるころ、母に催促されステータスを確認したところ
いくらなんでもこれはおかしいだろ!
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