DNAの改修者

kujibiki

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第350話 【閑話】お父さんとの約束

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僕はお姉ちゃん達に説明した後、お父さんに“男”になったことを報告する為にお母さんと一緒にお父さんの部屋に向かいます。

お父さんは既に男性の平均寿命と言われている30歳を越え、ベッドから出られないほど弱っていて一日の大半を寝て過ごしている状態で、先日の僕の12歳の誕生日にゆっくり話せたのもめずらしいぐらいです。



コンコン、コン。
ガチャ…。

「ルーシャ…、それにシャルル…?」

「お父さん、起きていたんだね」
「お父さん、僕…今朝“男”になったよ!」

僕はベッドの側にある椅子に座りそう伝えました。

「そうか、とうとう“男”になったか…。待ち遠しかったぞ」

「僕もお父さんに報告することが出来て嬉しいよ」

お父さんは寝ながらですが、顔をこちらに向けて目に涙を浮かべていました。

「なんだかこの数日でいきなり大きくなったか…? というかその黒い髪と瞳…見た目も変わって見える。ハハハ…、もしや目も使い物にならなくなってきたのかな…」

『ラルク、大丈夫ですよ。本当にシャルルの髪と瞳が黒色に変わったのです。後でお話しますね』

「そ、そうか安心したよ。でも見た目が変わってもシャルルはシャルルだ」

“男”になったら見た目が変わるなんてありえないが、もうそんなことはどうでもいいのだ…。
こんなに立派な息子なのだから…。

「シャルル、もう分かっているかもしれないが、私はもう長くは無いだろう。この歳までよく持ちこたえたと思う。シャルルが“男”になるのを見届けられてもう悔いは無いよ」

「お父さん…」

手を握りましたが以前のように握り返す力も無いようです。
それに手の大きさも僕の方が大きくなってしまったので、お父さんの手が小さく感じます。

「シャルルは産まれた時に金色に輝いたんだってな? 以前ルーシャから聞いたよ」
「この世界にシャルルが誕生したのはきっと何かの使命があるのかもしれないな…」

結局、男性の寿命の短さや魔法が使えないことの原因は分からずじまいだ。
せめて“生殖行為”がどういったことか分かれば伝えておけるのに…。
まぁいいか…、きっとシャルルが解き明かしてくれるだろう。

「シャルル、ルーシャや皆のために少しでも長く生きて、そして世界に変革をもたらすような男性になって欲しい…」

お母さんの方を見ると目に涙を浮かべながらじっとお父さんの言葉を聞いていました。

「うん、分かったよ。お父さん、僕は長生きするから安心して。お母さんも皆もきっと幸せにするから…」

お母さんはそのままお父さんと話があるということだったので、僕は話が終わるとそのまま部屋を出るのでした。



「ルーシャ、シャルルは本当にたくましくなったな」

『そうね。もう身長もシエラと変わらないのよ』

「それで、どうしてシャルルの姿があんなに変わったんだい?」

『実は今朝、シャルルがまた金色に輝いてね…。その後に髪と瞳の色が変わったの…、それに身体まで大きくなって…』

「そんなことが…」

『それに…驚かないでね、シャルルが言うには異世界から魂がこの世界に移ってきて生まれ変わったらしいの…』
『今朝“男”になって前世の記憶を思い出したそうよ』

「本当か? 異世界だって…!? そんなことがあり得るのか?」

初めて聞く“異世界”や“前世”という言葉に困惑してしまいます。

『あり得るも何も、私とシエラとトリスはシャルルが目の前で変貌するのを見ていたのよ。疑いようもないわよ…』

「そ、そうだったな…」

『シャルルがさっき言っていたように本当に寿命の心配も無いそうよ。私達よりずっと長生きするらしいわ』

「信じられない話だな…」

『それに、シャルルが言うにはいずれ魔法も使えるようになるらしいのよ…』
『あっ、使えるようになるには条件があるらしくって、今は使えないみたいだけれど…』

「う…嘘だろ…」
「そうか…、本当にシャルルはこの世界に変革をもたらしてくれるのかもしれないな」

『本当ね…、シャルルには驚かされてばかりよ』

「シャルルが“男”になるのを見届けることが出来て悔いはないけれど、男性の短命や魔法が使えない事、そして“生殖行為”について解き明かしてくれるのを見たかったよ」

『私達がシャルルを手伝って見届けるわ…』

「男性が短命で魔法が使えないのは体外受精による“誕生の儀”が原因だと思うのだけれど、“生殖行為”についてはまったく分からなかったよ」

『体外受精をしなければどうやって子孫を残すのかしら…?』

「“生殖行為”は子孫を残す方法なのかもしれないな…」

『……』
シャルルは精子の数に問題はないと言っていたけれど、やっぱり体外受精による“誕生の儀”なのかしら…。

「とりあえず、今日は本当に嬉しいよ」

『今晩はまたお祝いがあるのよ』

「いいねぇ。“あかべりーシャルル”は少し食べておきたいよ」

きっと“あかべりーシャルル”を口にするのもこれが最後だろう…。
シャルルのおかげで美味しい物がたくさん食べられて幸せだったよ…。

『えぇ、好きなだけ食べてね…』
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