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第175話 王領編8
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「どうでした? シャルル、王都は…」
「うん、大きいのは分かっていたけれど、ほとんどの道が直角に交差していて考えられている街づくりだよね」
今日は朝からエリシアの案内で王都を皆で回っています。
お母さんだけはグレイス様と話があるそうでここにはいません。
「そんな風に感想を言ってもらえるとは思ってもいませんでしたよ」
やっぱりシャルルは他の男の人と違いとっても賢くて素敵です。
「たくさん歩いたからちょっと休憩でもしようか?」
「では、あそこで“柔らかクリーム”でも食べましょうよ」
エリシアが言っているお店は外門から内門に向かって通っている道沿いのお店で、お店の外にもテーブルがいくつか置いてあり、外の景色を見ながら休憩できるようになっていました。
「魔動力車用の道路とは別に歩行者用の道が設けてあるから、とても開放感があるよね」
「気持ち良いでしょ? 私も買い物をした後はここで休憩することが多いのよ」と、エリシアが説明するのを聞きながら大きめのテーブルに皆で座ります。
早速ミレーヌお姉さんが皆の分を注文してくれていました。
「おまたせしました」と、お店のお姉さん二人が僕達の前に“柔らかクリーム”を置いていってくれます。
“柔らかクリーム”はこの間ポルカで食べたようにカップに入って出されてきました。
今回は“はぬー”ではなく、“りんこ”の煮たものが載っています。
「これは“りんこ”だよね?」
「そうですよ。“りんこ”が甘く煮てあります。冷たい“柔らかクリーム”に良く合いますよ」
「あっ、この飲み物も頼んでくれたんだね」
それに横には昨日飲んだ“ふとう”を搾った飲み物が用意されていました。
「ええ、この飲み物は今人気があるんですよ」
「へぇ~、この“ふとう”ってどんな果実なんだろう…」
「たぶん、エルスタイン領都に向けて帰られる時にいくつか果樹園が見られると思いますよ」
「うわぁ~、楽しみだなぁ。皆へのお土産にしようっと」
「そうですね。またロッキやフランが喜ぶと思いますよ」
“柔らかクリーム”自体はやはりカプランド領の物ほど濃厚ではありませんがとてもさっぱりしていて美味しく、“りんこ”の甘く煮てある物と一緒に食べるととても美味しいです。
「シャルル様~」
隣に座っているシエラお姉ちゃんが僕を呼んだ後、口を小さく開けてきました。
まぁ、昨日は一緒に散歩できなかったからいいかな…。
「はい、シエラお姉ちゃん、あ~ん!」
「あ~んっ」
パクッ…。
「ふぅ~ん…、美味しいですぅ」
「シエラ先輩ずるいです」
「あなた達は昨日してもらったんでしょ。今日は私です!」
(なっ、なに…、今の…)
シャルルが自分のカップから“柔らかクリーム”を掬ってシエラさんの口に運んで食べさせていました。
ミレーヌも口を開けて唖然としています。
「シャ、シャルル…、今のは…?」
「あっ…、エリシアもして欲しい?」
「えっ、あっ…、はい…」
「じゃあ、あ~ん!」
僕は自分のカップから一口分を掬って、戸惑いながら開けているエリシアの口に運びます。
「あ、あ~ん…」
パクリ…。
「うひっ……」
「やっぱり固まってしまいましたね」
「久しぶりに誰かが固まっているところを見ました。さすがシャルル様です」
「エッ、エリシア様~っ!?」
「ミレーヌお姉さん、大丈夫だから…」
ハッ…。
「シャ、シャルル…私…」
「その、あの…、もう一度お願いできますか」
「うん、じゃあ、あ~ん!」
「あ~んっ」
「うっひゃ~っ! おいひぃ~!」
「エリシア様…?」
「な、なんて美味しさなの!」
今までに何度もここの“柔らかクリーム”を食べてきたけれど、この一口の味だけが特別に美味しく感じます。
すぐに自分の“柔らかクリーム”を食べてみましたが、やはり認識できるほど味が違っているのを感じました。
「僕に“あ~ん”してもらったって言っちゃダメだからね」
「は…い…」
「ミレーヌ、あなたもしてもらいなさい。人生の損よ。シャルルお願いできるかしら」
「良いけど…」
「じゃあ、ミレーヌお姉さんちょっとこっちに来て…」と、僕の側に来てもらいエリシアと同じように“あ~ん”をしました。
パクリ…。
「ひぐぅ………」
「シャルル、私もこんな感じだったの…?」
「そうだよ。お姉ちゃん達に言わせると、“女”になっている人は最初はこうなるらしいよ」
そう話している間にヌエットお姉ちゃん達も僕の横に来ています。
「あなた達…」
「シエラ先輩、一度見せられると身体が反応してしまうのです」
「ヌエットも上手に言うわね」
それから再起動したミレーヌお姉さんにももう一度してあげると、感動して目に涙を溜めていました。
「ミレーヌ、これで分かったでしょ?」
「は…い…」
“あ~ん”天使がいるなんて…。
「おい、シャルルだったか…、まだこの辺をうろちょろしているのか?」
突然名前を呼ばれ振り返ると、昨日見た男の人とメイドのお姉さんが立っていました。
「え~っと、クズさんだっけ?」
「シャルル様、ドラですよ。ド・ラ…」
「シャルル様にしてはめずらしいですね。人の名前を覚えられないなんて…」
「くそ~、お前達…」
「ドラさん…」
「はえ…? エリシア…様? どうしてこいつらと…」
「私の大切なお客様達なのです」
ハッ…。
「そ、そうなのですか…」
「しばらくお見かけしませんでしたが、良ければ今度は私とお茶でも…」
「ドラさん…、まだ連絡がいっていないのかもしれませんが、パートナー候補は解消させていただくつもりです」
「えっ…、そ、それは…」
「言い間違えました。すべての候補者と解消させていただくつもりです」
「そんなこと…」
「私は、私の人生をもう一度考え直すことにしたのです。ドラさんなら、また素敵な女性がすぐに見つかることでしょう」
エリシアがそう言うと、後ろに立っていたメイドのお姉さんがなぜか苦笑いをしていました。
「いや…、でも…、しかし、私はエリシア様が…」
「シャルル、お前がエリシア様に何か吹き込んだんだなぁ~っ!」
「ドラさん! 私の大切な人を呼び捨てにしないでください! どうぞお引取りを…」
クズはエリシアの迫力に顔をしかめ、僕に汚い言葉をはきながら立ち去っていきました。
「シャルル、お見苦しいところを見せてすいません」
「ううん、エリシアの態度にスッキリしたよ」
「でも大丈夫なの? すべてのパートナー候補者と解消って…?」
「ええ、大丈夫ですよ。心配なさらないでください」と、ニッコリと僕に微笑みかけてくるのでした。
「うん、大きいのは分かっていたけれど、ほとんどの道が直角に交差していて考えられている街づくりだよね」
今日は朝からエリシアの案内で王都を皆で回っています。
お母さんだけはグレイス様と話があるそうでここにはいません。
「そんな風に感想を言ってもらえるとは思ってもいませんでしたよ」
やっぱりシャルルは他の男の人と違いとっても賢くて素敵です。
「たくさん歩いたからちょっと休憩でもしようか?」
「では、あそこで“柔らかクリーム”でも食べましょうよ」
エリシアが言っているお店は外門から内門に向かって通っている道沿いのお店で、お店の外にもテーブルがいくつか置いてあり、外の景色を見ながら休憩できるようになっていました。
「魔動力車用の道路とは別に歩行者用の道が設けてあるから、とても開放感があるよね」
「気持ち良いでしょ? 私も買い物をした後はここで休憩することが多いのよ」と、エリシアが説明するのを聞きながら大きめのテーブルに皆で座ります。
早速ミレーヌお姉さんが皆の分を注文してくれていました。
「おまたせしました」と、お店のお姉さん二人が僕達の前に“柔らかクリーム”を置いていってくれます。
“柔らかクリーム”はこの間ポルカで食べたようにカップに入って出されてきました。
今回は“はぬー”ではなく、“りんこ”の煮たものが載っています。
「これは“りんこ”だよね?」
「そうですよ。“りんこ”が甘く煮てあります。冷たい“柔らかクリーム”に良く合いますよ」
「あっ、この飲み物も頼んでくれたんだね」
それに横には昨日飲んだ“ふとう”を搾った飲み物が用意されていました。
「ええ、この飲み物は今人気があるんですよ」
「へぇ~、この“ふとう”ってどんな果実なんだろう…」
「たぶん、エルスタイン領都に向けて帰られる時にいくつか果樹園が見られると思いますよ」
「うわぁ~、楽しみだなぁ。皆へのお土産にしようっと」
「そうですね。またロッキやフランが喜ぶと思いますよ」
“柔らかクリーム”自体はやはりカプランド領の物ほど濃厚ではありませんがとてもさっぱりしていて美味しく、“りんこ”の甘く煮てある物と一緒に食べるととても美味しいです。
「シャルル様~」
隣に座っているシエラお姉ちゃんが僕を呼んだ後、口を小さく開けてきました。
まぁ、昨日は一緒に散歩できなかったからいいかな…。
「はい、シエラお姉ちゃん、あ~ん!」
「あ~んっ」
パクッ…。
「ふぅ~ん…、美味しいですぅ」
「シエラ先輩ずるいです」
「あなた達は昨日してもらったんでしょ。今日は私です!」
(なっ、なに…、今の…)
シャルルが自分のカップから“柔らかクリーム”を掬ってシエラさんの口に運んで食べさせていました。
ミレーヌも口を開けて唖然としています。
「シャ、シャルル…、今のは…?」
「あっ…、エリシアもして欲しい?」
「えっ、あっ…、はい…」
「じゃあ、あ~ん!」
僕は自分のカップから一口分を掬って、戸惑いながら開けているエリシアの口に運びます。
「あ、あ~ん…」
パクリ…。
「うひっ……」
「やっぱり固まってしまいましたね」
「久しぶりに誰かが固まっているところを見ました。さすがシャルル様です」
「エッ、エリシア様~っ!?」
「ミレーヌお姉さん、大丈夫だから…」
ハッ…。
「シャ、シャルル…私…」
「その、あの…、もう一度お願いできますか」
「うん、じゃあ、あ~ん!」
「あ~んっ」
「うっひゃ~っ! おいひぃ~!」
「エリシア様…?」
「な、なんて美味しさなの!」
今までに何度もここの“柔らかクリーム”を食べてきたけれど、この一口の味だけが特別に美味しく感じます。
すぐに自分の“柔らかクリーム”を食べてみましたが、やはり認識できるほど味が違っているのを感じました。
「僕に“あ~ん”してもらったって言っちゃダメだからね」
「は…い…」
「ミレーヌ、あなたもしてもらいなさい。人生の損よ。シャルルお願いできるかしら」
「良いけど…」
「じゃあ、ミレーヌお姉さんちょっとこっちに来て…」と、僕の側に来てもらいエリシアと同じように“あ~ん”をしました。
パクリ…。
「ひぐぅ………」
「シャルル、私もこんな感じだったの…?」
「そうだよ。お姉ちゃん達に言わせると、“女”になっている人は最初はこうなるらしいよ」
そう話している間にヌエットお姉ちゃん達も僕の横に来ています。
「あなた達…」
「シエラ先輩、一度見せられると身体が反応してしまうのです」
「ヌエットも上手に言うわね」
それから再起動したミレーヌお姉さんにももう一度してあげると、感動して目に涙を溜めていました。
「ミレーヌ、これで分かったでしょ?」
「は…い…」
“あ~ん”天使がいるなんて…。
「おい、シャルルだったか…、まだこの辺をうろちょろしているのか?」
突然名前を呼ばれ振り返ると、昨日見た男の人とメイドのお姉さんが立っていました。
「え~っと、クズさんだっけ?」
「シャルル様、ドラですよ。ド・ラ…」
「シャルル様にしてはめずらしいですね。人の名前を覚えられないなんて…」
「くそ~、お前達…」
「ドラさん…」
「はえ…? エリシア…様? どうしてこいつらと…」
「私の大切なお客様達なのです」
ハッ…。
「そ、そうなのですか…」
「しばらくお見かけしませんでしたが、良ければ今度は私とお茶でも…」
「ドラさん…、まだ連絡がいっていないのかもしれませんが、パートナー候補は解消させていただくつもりです」
「えっ…、そ、それは…」
「言い間違えました。すべての候補者と解消させていただくつもりです」
「そんなこと…」
「私は、私の人生をもう一度考え直すことにしたのです。ドラさんなら、また素敵な女性がすぐに見つかることでしょう」
エリシアがそう言うと、後ろに立っていたメイドのお姉さんがなぜか苦笑いをしていました。
「いや…、でも…、しかし、私はエリシア様が…」
「シャルル、お前がエリシア様に何か吹き込んだんだなぁ~っ!」
「ドラさん! 私の大切な人を呼び捨てにしないでください! どうぞお引取りを…」
クズはエリシアの迫力に顔をしかめ、僕に汚い言葉をはきながら立ち去っていきました。
「シャルル、お見苦しいところを見せてすいません」
「ううん、エリシアの態度にスッキリしたよ」
「でも大丈夫なの? すべてのパートナー候補者と解消って…?」
「ええ、大丈夫ですよ。心配なさらないでください」と、ニッコリと僕に微笑みかけてくるのでした。
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