DNAの改修者

kujibiki

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第92話 領主会議ーバルゼ領編10

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『少し夕食までには時間がありますね。ちょっと観光にでも行きましょうか』

「え~、本当!? やった~」

「ルーシャ―様、まさか昨日エリシモア様が領内会議で言っておられたアレですか?」

『そうよ』

「なんなのあれって?」

『なんでも最近、この町からバルゼ領へ向かう方向の森の付近で、新種の“もい”が発見されたそうなのです』

「新種の“もい”…?」

メンテールお姉ちゃんの目が輝きました。

「でもルーシャ様、その“もい”の汁が皮膚に触れるとかぶれるとおっしゃっていましたよ」

『確かにそうね。でも上手に食べると体調が良くなるとも言っていたわ。やっぱりどんな物かはせっかく発見された場所にいるのだから確認しておかないとね』

「確かにそうですね…」

『じゃあ、荷物を置いたらもう一度魔動力車に乗って行くわよ』

「「「「はいっ!」」」」



XX XY



「え~と、エリシモア様がおっしゃられていたのはこの辺りですね」

『そうみたいね。ちらほら採りにきている人が見えるものね』

「なかなか見つからなくて、すでに高級食材のようですよ」

「高級食材…」

「メンテールお姉ちゃん、ちょっとよだれが出ているよ!」

「す、すいません、シャルル様。どんな味なんだろうって思っちゃって」

「本当にメンテールお姉ちゃんは食べ物に関して興味が旺盛だよね…」
「それでお母さん、どんな“もい”なの?」

『地表に見えているのはつるだけで、その蔓の根元を掘っていくと“もい”が現れてくるそうよ』
『地面の中、深くに伸びていくらしいの』

「へぇ~、蔓が目印か~」

『メンテール、魔法は使っても良いけれど土などを掘ったままにしちゃダメよ』

「はい、わかりました」

僕たちは散開して“もい”を探すことにしました。

(蔓ねぇ…)
意外にあちらこちらで見えるけれど、“もい”が地中にあるかは分からないよね。
う~ん、メンテールお姉ちゃんの土属性の魔法が便利そうです…。



しばらくあちらこちらを歩いていると、ポウッと光る蔓を見つけました。

(あれ? これって坑道で属性石を見つけた時と同じなんじゃ…)
もしかしたら、ここにあるって教えてくれているのかな。

光っているところまで行くと、小さな実のようなものが付いている細い蔓がありました。

(えっ、こんなに細い蔓なの?)
僕は目印の蔓が切れないように慎重に掘り進めていきます。

「もしかしてこれかしら…?」
「蔓が切れちゃいました~」
「え~、“もい”が見当たりませ~ん」

お姉ちゃん達もどの蔓が“もい”の物か区別がはっきり分からないようです。
ふぅ、それにしてもこの“もい”、一体どこまで掘ればいいんだろう。

すでに僕の腰が地面に埋まるぐらいまで掘ってみましたが、まだ途切れることはありません。
蔓も掘っていくうちに徐々に太くなっているので、これが噂の新種なのでしょう。

『シャルル、大丈夫ですか?』

お母さんが探すのを諦めて僕の側にやってきました。

「あっ、お母さん。見てよ、これが新種の“もい”だと思うんだ」

『えっ、そんなに太くて長いのですか?』
『エリシモアは腕分の長さがあれば希少品だと言っていましたが…』

「本当? たぶん、もう少しで先に届くと思うんだ」

結局、僕の肩ぐらいまで掘って、ようやく“もい”が掘り出されました。

「すごいです、シャルル様~」
「見た目は変ですがとっても大きいですね…」

探すことを諦めていたキルシッカお姉ちゃんとトリスお姉ちゃん達も僕の側で感想を言っています。

『本当にすごいわね。これがもしエリシモアの言っていた新種なら話題になるわよ』

『キルシッカ、シャルルの土を払ってあげてくれるかしら』
『トリスはシャルルの採った“もい”を折れないように洗ってくれる?』

「「かしこまりました」」

キルシッカお姉ちゃんが【風圧ウィンド・プレッシャー】の魔法で全身の土埃を吹き飛ばしてくれました。
力加減が難しいそうですが、さっぱりして気持ち良いです。

結局、僕以外に見つけたのはメンテールお姉ちゃんだけでしたが、それでも指先から肘くらいまでの長さしかありませんでした。

今晩は僕の採った“もい”を食べることになり、宿の料理長に見せると腰を抜かして驚いていました。
急遽、食堂にはこの“もい”と同じ長さの板が用意され、『最長記録:シャルル』と記載され飾られることになりました。

メンテールお姉ちゃんが採った“もい”は宿に売ることになり、僕たちの宿泊代が払えるほどの臨時収入を得ることになったそうです。

「ルーシャ様、本当に良いのですか? 私がお金を頂いて…」

『いいのよ、メンテールが見つけた物じゃない。いつ必要になるのか分からないのだから大事に取っておきなさい』

「ありがとうございます、ルーシャ様」

まだ発見されたばかりで調理方法はそんなにないようで、すりつぶした“もい”にお肉や野菜の焼いたものをつけて食べるか、“もい”を薄切りにして焼いて食べるだけでしたが、これまでのお菓子として食べていた“もい”とは違って、ヌルッとした食感で野生の“もい”らしい濃厚な味わいでした。

「焼いただけの“もい”もホクホクと美味しいですね」

「このネバネバの食感は何とも言えませんけれどね…」

「みんな、出来るだけ唇に触れないように食べるのよ」

「確かに高級食材になりそうな予感です」

『きっとシャルルの採った“もい”だから、最高の味に違いないわね』

「……」
この“もい”の食感はどこか懐かしく、他にも食べ方があったような気がするのですが今は思い浮かびません。
(まぁ、いいか…。本当に美味しいし…)
それにしても6人で食べても十分な量でした。
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