DNAの改修者

kujibiki

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第78話 領主会議ーバルゼ領編1

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バルゼ領編がスタートです。
ジワジワと人間関係が進んでいく?かも…。

XX XX XX XX XX XX



「ふぅ~、お母様ったら話が長いんだから…」

「もうすぐ領主会議なのですから仕方がありませんよ…。ナーナルン様もしっかり他の領主様にご挨拶なされませんと…」

私達はメイドのフィルとそんなやり取りをしながらお母様の執務室から自分の部屋に向かっています。

「それに、シャルル君、シャルル君ってなによ?」
「結局、ほとんどそのシャルル君という男の子の話だったじゃない」

「シャルル様はエルスタイン領主であるルーシャ様のご子息で、今回初めてバルゼ領都に同行されてくるのです」
「何でもシクスエス様がルーシャ様に頼んで来ていただくそうなのですよ」

「えっ、お母様が? お母様が頼み事ってめずらしいよね」

「私も噂でしか聞いていませんが、シクスエス様が初めてシャルル様に会われたときに、ナーナルン様のパートナーにとお願いされたそうです」

「初めて会ったって…、かなり前なんでしょ?」

そんな頃から私に…。

「昨年にもカプランド領都で行われた領主会議に初めて同行された時にお会いされたそうですが、とてもかわいくて、格好良くて、たくましい男の子になっておられたそうです」

「カプランド領主のサリー様のご令嬢であるジェシカ様も大変興味を持たれているとか…」
「ナーナルン様も一目で気に入ってしまうかもしれませんよ~」

「……」

フィルが噂で聞いたと言っている割にはかなり詳しく話してきます。

「気に入るって言ってもね…」

“女”になるのもまだずいぶん先だというのに…ね。

「私としましてはルーシャ様と、領主会議にいつも同行されているというシエラさんという方お二人に興味がありますね」
「ネル先輩が言うにはお二人ともとても若々しくてお綺麗なんだそうですよ」

あの悔しがり方は相当なのでしょうね…。

「フィルは22歳でしょ? そんなこと気にしなくても大丈夫なんじゃない…?」

「ありがとうございます。ナーナルン様」
「でも、ネル先輩が言うにはそういう年齢的なことでは無さそうなのです」
「領主会議の冒頭はいつもルーシャ様の若々しさの話題かららしいですよ」

「そんなことを聞くと、今度の領主会議が少し楽しみになってきたわ」

お母様からもシャルル君に決して嫌われないようにと厳命されましたけど、どれほどの男の子なのかしら…。
格好良くてたくましいとは言っても、バルゼ領都にいる男の子達と同じじゃないのかなぁ。

そうこう話しているうちに部屋に戻るのでした。



XX XY



『さて、今年も領主会議の時期になりましたか。一年はあっという間ね…』

「“転移の祠”についても依然分からないままですしね」

『シャルルとの旅じゃなかったら、領内視察や各都市長との領内会議を取りやめて“転移の祠”で往復したいところです』

「そうですね。シャルル様との旅の楽しさを知ったら、シャルル様がいない領主会議なんて行く気にもなれませんね」

『シエラ…、あなたそんな…ひどい…』

「まぁ、その…、今回もシャルル様が同行されるのですから良かったじゃないですか」

私も内心は嬉しくて仕方がありません。

『そ、そうね…』
『それで、そろそろ同行させる者を決めようと思ってね』

「前回と同じ者じゃないんですか?」

『そう思っていたのですが、めずらしくメンテールが同行したいと言っていましたし、シャルルにしても屋敷内に知った顔が増えてきているようですしね』

「そうですね。やっぱりこの一年で変わってきたのはお風呂の橋を作ったキルシッカでしょうか…」
「シャルル様も顔を見たら声を掛けていらっしゃるそうですよ」

「以前は薄褐色の肌を気にしていたようですが、少しずつ気にしないようになって表情も明るくなってきたようです」

『シャルルのおかげでしょうね』

「それにしてもメンテールもですか…」

『まぁ、岩風呂の件もありますし、昔からシャルルの遊び相手にもなってくれていましたからね』

意外に面倒見が良いのです…。
それに、シャルルと湖に行ってからは自分から積極的に話すようになりましたからね…。

「それでどうされますか?」

『そうですね。ヌエットが残念がるでしょうが、ヌエットの代わりにキルシッカを、メルモアの代わりにメンテールを連れて行くことにしましょう』



XX XY



コンコン、コン。
ガチャ…。
「シャルル様~!」

ヌエットお姉ちゃんが僕の部屋に飛び込んできました。

「どうしたんですか、ヌエット!? シャルル様の部屋へいきなり入ってくるなんて」

トリスお姉ちゃんがヌエットお姉ちゃんをしかっています。

「ど、どうしたのヌエットお姉ちゃん?」

そうたずねるやいなや、ヌエットお姉ちゃんが泣き出しそうな顔をしています。

「実は、今回のバルゼ領都で行われる領主会議に同行できなくなったんです…」

「「えっ!?」」

トリスお姉ちゃんも知らなかったのか驚いていました。

「じゃあ、代わりに誰が同行するのかしら…」

「なんでも、メンテール先輩とキルシッカのようです」
「メンテール先輩がメルモア先輩の代わりなんだそうです」

「そうなんだ~。キルシッカお姉ちゃんは元々バルゼ領の近くの出身だと言っていたからそれでかな?」

「ルーシャ様にも何か考えがあったのかもしれませんね」

「そんなぁ~、シャルル様もトリス先輩も冷静過ぎますぅ~」

「まぁまぁ、今回も帰りは“転移の祠”を使うみたいだから、早く帰ってこられるよ」

「でも…、でも~、せっかくまたシャルル様と一緒にお風呂に入れたり眠れたりって楽しみにしていたのに…」

「……」

ヌエットお姉ちゃんがどんどん暗い雰囲気になっていきます。

「そ…そうだ、この間言っていた岩風呂の改良の件だけど、済ませておいてくれた?」

「はい…、それは済ませてキルシッカにも伝えておきましたけど…」

「じゃあ、その改良した岩風呂で一番に一緒に入ってあげるよ。だから今回は我慢してね」

「「えっ!?」」

「本当ですか、シャルル様。バルゼ領都に向かわれる前にお願いしますね」

トリスお姉ちゃんは我慢して黙っているようです。

「まぁ、キルシッカお姉ちゃんの作業次第かな…」

「急いでやらせます!」と、少しだけ元気になって部屋を出て行きました。

「そうかぁ、もうすぐ領主会議の時期なんだねぇ」

僕は再びトリスお姉ちゃんと二人になった部屋でそうつぶやくのでした。



XX XY



「キルシッカ! あなた今度のバルゼ領都で行われる領主会議にお供で同行するんですってね」

「もう知っているの? エリオン…」

私もさっきルーシャ様から知らされたところなのに…。

「さっきヌエット先輩に会った時にあまりに落ち込んだ様子だったので聞いてみたらそう教えてもらったの」

「そう…なんだ…」

ヌエット先輩はシャルル様と領主会議に同行されるのを楽しみにされていたからなぁ。
それで、さっき岩風呂の改良を急がれていた時も少し元気が無かったのね。

「それにしても良いわね~、シャルル様と旅が出来て…」

「そうね、まさか同行させていただけるとは思っていなかったからとても嬉しいわ」
「まぁ、今回は魔動力車の運転を覚えるためでもあるんだけれどね」

「そうかぁ、キルシッカは年齢の割りに背が高いものね。私はシャルル様と変わらない大きさだから、このままじゃ運転すら任せてもらえないかも…」

胸が大きくなるよりも身長が大きくなって欲しかったな…。

「じゃあ、私は岩風呂の改良を急ぐように言われているから行くね」

シャルル様との旅が待ち遠しいです。
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