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第6話 次元界のおっさん
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ぴんぽんぱんぽ~ん!
なんだなんだ、この迷子のお知らせのような音は…。
このクリアボックスから発せられていないので耳が痛くなることはないが、至る所で鳴っているのが分かる。
おそらくこの音を聞いて上司がやってくるのだろう。
見渡してもソレらしき者は見えないが、どうやってこの空中にあるボックス内に帰ってくるのだろう。
ちょっと興味がある。
音が鳴って数十秒後、そいつはいきなり現れた。
「おぉ、ビックリするじゃないか。いきなり現れるな!」
「お、お前が黒い靄のおっさんの上司なのか?」
問いながらも関係者なのはすぐに分かった。
こいつも黒い靄なのだ。たぶんおっさん。
やはり下半身も人型のようだ。
衣服などは着ておらず、頭からつま先まで一枚の透明の膜で覆われたかのような存在だ。
顔らしきところに目や口などは見られないが全体のイメージは俺たちが想像する宇宙人に近い気がする。
中身は改めて言うまでもなく靄、膜に覆われた体内では靄が渦を巻いたり、霧散したり、ジェット気流のように身体を縦横無尽に流れている。
そして近くで見ると意外に体格が良い。身長は2mほどありそうだ。
中身が靄だけにフニャフニャしてそうだが、空気人形に空気をパンパンに入れた状態のようにも見え、触ってみるのはちょっと破けそうで怖い。
『驚かせて申し訳ない。それよりもお前みたいな霊体が何の用だ。どうやってここに来たのだ?』
どうやらやはりおっさんからの報告は無かったようだ。
俺は地球というところで死んだ事、黒い靄のおっさんに異世界転生をしてみてはと勧められた事を一から説明した。
「どうもごく稀ではありますが、魂の格が最高位の者が死ぬと異世界転生の権利が与えられるそうですよ」
『そ、そんな話、初めて聞いたぞ』
引き継ぎ時にも教わらなかったぞ…。
「いやいや、あなたの部下から聞いた話なんですよ。ここにも送ってもらったことですし…」
「何かタブレットらしき物を取り出して見ながら説明してくれていましたから重要事項なのでは?」
『……まぁいいか…。ここに現れた時点で業務として送られてきたのは分かった』
それに地球といえば先ほど思い出した従兄弟の担当する星だったか…。
えっ…、やっぱりちょっと馬鹿なのかな。
『しかし、我も初めての経験なのだ。直接この“誕生の間”まで霊体が送られてくることなんて…。我が直接転生をサポートすることになろうとは…』
目の前のおっさんは両手で頭をガシッとつかみ、上下に動かしながら首らしきところを伸び縮みさせている。
悩んでいるリアクションなのだろうか…?
首は千切れなさそうだがちょっと怖くて引いてしまうぞ。
それにしても本当に稀な事案みたいだ。
ここは一旦転生の手順を確認しておいた方がいいだろう。
一つ一つ確認しながらこのおっさんに分からせないと、とんでもないことになりそうだ。
「通常の転生作業ってどういったものなんですか?」
『いや何か簡単に思っているかもしれないが、転生自体そんなに起こることではない』
『仮に転生が行われるとしてもそれは魂のサポートセンターで一括して行われるのだ。それに転生にあたっては条件が満たされないとダメだと聞く』
『それにまぁ、魂のサポートセンターは死神以外の神々の直轄となっていて、実はお遊び半分で転生が行われているそうだからな…』
「……」
ここに来たのも大概驚きなのだが、まさか転生が神々のお遊びだったとは…。
女神様に会えたらいいな~っとか、チートの能力が欲しいって思っていたが一気に冷めてしまった。
「では、ここで可能な転生と言うのはどんな方法なのですか?」
『まぁ、我も初めての経験ゆえ、明確な手段は分からぬ』
ふむ、マニュアルってあったか…?
『だっ…だが、眼下に見える光っておる玉は一つ一つに魂が封印されておってな、パシュと音が鳴るたびに新たな生命としてどこかに宿っていくのだ』
『だから、お前を玉に封印し、パシュっと転送させれば異世界に転生させてやることが可能となるはずだ』
「あれが全部魂…」
見渡す限りの光の玉が、一つ一つ魂(生命)だったなんて…。
これだけの膨大な数の魂がリズミカルに宿っていくとは驚きだ。
『次元界はお前が想像する宇宙単位では表せないほど広く果ては無い』
『この“誕生の間”もいくつかある内の一つなのだから…』
「次元界…?」
ようするに“誕生の間”があるこの次元界が一番の大枠で、その中に様々な星系があって星があるって事のなのかな…。
もしかしたら次元界の上に神様が住む神界もあるのだろう。
確かに想像すらできないし、宇宙という言葉が小さく感じる。
いやもう奥が深すぎて異世界の存在に喜んで良いのか分からないな。
だからと言って転生しないことには始まらないし…。
ここは当初の最低条件であった人類に転生していただけるように頼んでみよう。
もう勇者なんかどうでもいい感じだ。
なんだなんだ、この迷子のお知らせのような音は…。
このクリアボックスから発せられていないので耳が痛くなることはないが、至る所で鳴っているのが分かる。
おそらくこの音を聞いて上司がやってくるのだろう。
見渡してもソレらしき者は見えないが、どうやってこの空中にあるボックス内に帰ってくるのだろう。
ちょっと興味がある。
音が鳴って数十秒後、そいつはいきなり現れた。
「おぉ、ビックリするじゃないか。いきなり現れるな!」
「お、お前が黒い靄のおっさんの上司なのか?」
問いながらも関係者なのはすぐに分かった。
こいつも黒い靄なのだ。たぶんおっさん。
やはり下半身も人型のようだ。
衣服などは着ておらず、頭からつま先まで一枚の透明の膜で覆われたかのような存在だ。
顔らしきところに目や口などは見られないが全体のイメージは俺たちが想像する宇宙人に近い気がする。
中身は改めて言うまでもなく靄、膜に覆われた体内では靄が渦を巻いたり、霧散したり、ジェット気流のように身体を縦横無尽に流れている。
そして近くで見ると意外に体格が良い。身長は2mほどありそうだ。
中身が靄だけにフニャフニャしてそうだが、空気人形に空気をパンパンに入れた状態のようにも見え、触ってみるのはちょっと破けそうで怖い。
『驚かせて申し訳ない。それよりもお前みたいな霊体が何の用だ。どうやってここに来たのだ?』
どうやらやはりおっさんからの報告は無かったようだ。
俺は地球というところで死んだ事、黒い靄のおっさんに異世界転生をしてみてはと勧められた事を一から説明した。
「どうもごく稀ではありますが、魂の格が最高位の者が死ぬと異世界転生の権利が与えられるそうですよ」
『そ、そんな話、初めて聞いたぞ』
引き継ぎ時にも教わらなかったぞ…。
「いやいや、あなたの部下から聞いた話なんですよ。ここにも送ってもらったことですし…」
「何かタブレットらしき物を取り出して見ながら説明してくれていましたから重要事項なのでは?」
『……まぁいいか…。ここに現れた時点で業務として送られてきたのは分かった』
それに地球といえば先ほど思い出した従兄弟の担当する星だったか…。
えっ…、やっぱりちょっと馬鹿なのかな。
『しかし、我も初めての経験なのだ。直接この“誕生の間”まで霊体が送られてくることなんて…。我が直接転生をサポートすることになろうとは…』
目の前のおっさんは両手で頭をガシッとつかみ、上下に動かしながら首らしきところを伸び縮みさせている。
悩んでいるリアクションなのだろうか…?
首は千切れなさそうだがちょっと怖くて引いてしまうぞ。
それにしても本当に稀な事案みたいだ。
ここは一旦転生の手順を確認しておいた方がいいだろう。
一つ一つ確認しながらこのおっさんに分からせないと、とんでもないことになりそうだ。
「通常の転生作業ってどういったものなんですか?」
『いや何か簡単に思っているかもしれないが、転生自体そんなに起こることではない』
『仮に転生が行われるとしてもそれは魂のサポートセンターで一括して行われるのだ。それに転生にあたっては条件が満たされないとダメだと聞く』
『それにまぁ、魂のサポートセンターは死神以外の神々の直轄となっていて、実はお遊び半分で転生が行われているそうだからな…』
「……」
ここに来たのも大概驚きなのだが、まさか転生が神々のお遊びだったとは…。
女神様に会えたらいいな~っとか、チートの能力が欲しいって思っていたが一気に冷めてしまった。
「では、ここで可能な転生と言うのはどんな方法なのですか?」
『まぁ、我も初めての経験ゆえ、明確な手段は分からぬ』
ふむ、マニュアルってあったか…?
『だっ…だが、眼下に見える光っておる玉は一つ一つに魂が封印されておってな、パシュと音が鳴るたびに新たな生命としてどこかに宿っていくのだ』
『だから、お前を玉に封印し、パシュっと転送させれば異世界に転生させてやることが可能となるはずだ』
「あれが全部魂…」
見渡す限りの光の玉が、一つ一つ魂(生命)だったなんて…。
これだけの膨大な数の魂がリズミカルに宿っていくとは驚きだ。
『次元界はお前が想像する宇宙単位では表せないほど広く果ては無い』
『この“誕生の間”もいくつかある内の一つなのだから…』
「次元界…?」
ようするに“誕生の間”があるこの次元界が一番の大枠で、その中に様々な星系があって星があるって事のなのかな…。
もしかしたら次元界の上に神様が住む神界もあるのだろう。
確かに想像すらできないし、宇宙という言葉が小さく感じる。
いやもう奥が深すぎて異世界の存在に喜んで良いのか分からないな。
だからと言って転生しないことには始まらないし…。
ここは当初の最低条件であった人類に転生していただけるように頼んでみよう。
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