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第十七話

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魔力の流れというものを感じ取りながらも普通に歩く事が出来る様になってきた。
このまま上手くいけば色々な事が出来る様になるかもしれないとも思っている。
それは冒険者においては十分なアドバンテージになるだろう。

「魔力の感知を怠らないのは感心だ。 しかし、それを自分に向けてみる…というのも、一つの訓練になるのだぞ?」

俺はその一言にハッとしてしまう。
ルインツァルト様は気付いていたのか。

「ありがとうございます。 ですが、なぜ自分に向けて魔力の流れをみるのですか?」

ルインツァルト様はニカッっと笑い、腕を振ってアピールを始める。

「馬に乗りながらの剣舞…」

「そう! アレには魔力による身体強化はもちろん必須だ。 それに、あの馬だって何故か知らんが魔力による身体強化が出来るのだぞ?」

(それは魔獣の類では無いか…。 しかし、人族の命令に従うとは。 理由はこやつが余程の遣いてである事以外は無いだろうな)

「もし、魔力の扱いに長けたら…魔法を扱う事って出来ますか?」

「す、すまぬ。 身体強化と強化系の付与しか出来ないので良く分からんのが実情だ…。 詳しい奴なら何人か居るだろうが…」

「それだけでも分かれば大丈夫です」

(ちなみにユーグスよ、お主は炎と氷の竜魔法が使えるぞ。 あと、ドラゴンブレスも)

…それは使ったら人外扱いされそうだから緊急事態以外は封印だ。

(えぇ! 氷でびゅんびゅん楽しいよ!)

氷でびゅんびゅんの表現が分からない。

「着いたぞ!」

「馬車を使わないと結構歩くのは変わりませんね」

「何事も鍛錬だ!」

俺が山から帰ってきた事を忘れてはいないだろうか。
いや、多分忘れられている。
凄く上機嫌で歩いているのでそっとしておこう。

「失礼します」

豪華な部屋に入るとシュヴァルグラン様とマリーが丁度居た。

「おや、もう戻ったのか! それにその眼は…。 そうか。 光を掴んだだけで無くドラゴンと契約までしたのか…」

すると龍紋からもやもやと影が生まれる。

「人間よ、我らを愚弄するな。 ユーグスは我の大切な息子である。 ユーグスとは家族の契りを交わした。 有象無象のドラゴンテイマーと同列にしてくれるならばこの国ごとほろぼしてくれようぞ」

「な、なんと! その覇気は…畏まりました。 まさかユーグス君がかのドラゴンのご子息になられるとは…」

「お、お父様!? ドラゴンのご子息と言うのはそんなに凄いんですの?」

「たった一柱で国を滅ぼす事の出来るエンシェントドラゴンの一柱。 その方に人族が家族として認められたのは前代未聞だ…」

「まぁ!」

マリーは言葉を失い固まった。

「ユーグスよ、何なのだあの人族の幼子は…」

「悪い子じゃないんですよ? ちょっと変な子なんです」

それしか言えることはないだろう?
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