上 下
163 / 385

第百六十二話 スタンピード

しおりを挟む
「何があったんですか?」

慌てて駆け寄っていく。
するとそこに居たのは深手を負った数人の新人風の冒険者。

「す、スタンピードだ…! 森の奥から大量の魔物が来たんだ!」

スタンピードだと!? まずはこの人達の治療をしなければ。
見たところ深い傷ではあるが手持ちのポーション類でどうにかなりそうだ。

「マキナ、重症者からこのポーションとか使って回復させて! 話を聞いて回るから」

「わかったわ」

俺は一番傷の浅い男に近寄る。

「大丈夫か? 一体何を見たんだ?」

「最初はゴブリンの群れだった…。 俺達でも対処出来るだろうって…でも様子が変だった。 ゴブリンだけじゃなくウルフ系のやつらや、オークも居た。 んで、奥の方にちらっとオーガと黒い魔物が見えたんだ。 逃げて報告しようとしたんだが見つかっちまって…」

「そうか…。 黒い魔物の特徴は?」

「遠くて分からなかった…が、羽が生えていた」

黒くて羽…。 悪魔種にも感じる。
もしそのスタンピードを操れるのだとしたら…。
中級クラス以上か。

「分かった。 ありがとう。 死者が出なくて良かったよ」

「あぁ…」

するとギルドの奥から巨大なハンマーを持ったギルド長のスティーブが現れた。

「全員に通達。 緊急でスタンピードの調査、場合によっては…押しつぶせ!!!」

周りを見てもハンマー系の武器の人は居ないので、物理的に潰せるのはマスターだけだろう。

「おおおおおおおおおおおおおお!!!」

一斉に声が上がる。

「今ならここにはあの英雄のマーガレット伯爵が居る! 怖い物なんてないぞ! 皆、行けぇ!!!」

俺を出汁に使いやがったな! まぁそれで士気が上がるならいいけど。

「治療はあらかた終わったけど、これ、かなり強敵が居るかも」

マキナの言葉に少し動揺してしまう。

「どういうこと?」

「あえて致命傷にならない所しか狙われて居ないの。 わざと森へと向かわせる様な…」

(テイルです。 三賢者の皆さん緊急で、王城と街の中心の防衛をお願いします)

(事情は分からんが緊急なら仕方なかろう。 任せておけ)

(ウチも準備オッケーや)

(久しぶりに魔法師ギルドでくつろいどったのに…)

ま、街の防衛はなんとかなるだろう。

「テイルよ、待たせたな!」

追加で協力な助っ人も来たし。

「ドーラ様、この状況をどうみますか?」

「うむ、悪魔種でも強い力と権限を持ったアークデビル以上が暗躍しとるな。 しかも、これは罠じゃろうな」

やはり同じ見解か。
ならなるべく街に戦力は残すべきだろう。

(分かって居ます。 皆を招集し、街の防衛に回ります)

困った時のフォンドニア嬢だ。 便利だなぁ。
ん? フォンドニア嬢にはノイズを掛けてたはずなのに…。

まぁ緊急事態だし気にしてられないか。

「聞いてくれ! これは罠の可能性がある! 今、賢者達に王都の防衛を任せた! 俺達は何かあったらすぐに王都へと帰還し防衛に回る!」

「おぉ!」

俺が声かけした時の方がリアクション小さいのはなんでだよ!

「野郎どもぉ! いくぜぇぇぇぇ!!!」

ギルドマスターの豹変ぶりに驚きながらも、王都の外の森へと皆で走り出した。
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

スマートシステムで異世界革命

小川悟
ファンタジー
/// 毎日19時に投稿する予定です。 /// ★☆★ システム開発の天才!異世界転移して魔法陣構築で生産チート! ★☆★ 新道亘《シンドウアタル》は、自分でも気が付かないうちにボッチ人生を歩み始めていた。 それならボッチ卒業の為に、現実世界のしがらみを全て捨て、新たな人生を歩もうとしたら、異世界女神と事故で現実世界のすべてを捨て、やり直すことになってしまった。 異世界に行くために、新たなスキルを神々と作ったら、とんでもなく生産チートなスキルが出来上がる。 スマフォのような便利なスキルで異世界に生産革命を起こします! 序章(全5話)異世界転移までの神々とのお話しです 第1章(全12話+1話)転生した場所での検証と訓練 第2章(全13話+1話)滞在先の街と出会い 第3章(全44話+4話)遺産活用と結婚 第4章(全17話)ダンジョン探索 第5章(執筆中)公的ギルド? ※第3章以降は少し内容が過激になってきます。 上記はあくまで予定です。 カクヨムでも投稿しています。

迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~

飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。 彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。 独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。 この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。 ※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

破滅する悪役五人兄弟の末っ子に転生した俺、無能と見下されるがゲームの知識で最強となり、悪役一家と幸せエンディングを目指します。

大田明
ファンタジー
『サークラルファンタズム』というゲームの、ダンカン・エルグレイヴというキャラクターに転生した主人公。 ダンカンは悪役で性格が悪く、さらに無能という人気が無いキャラクター。 主人公はそんなダンカンに転生するも、家族愛に溢れる兄弟たちのことが大好きであった。 マグヌス、アングス、ニール、イナ。破滅する運命にある兄弟たち。 しかし主人公はゲームの知識があるため、そんな彼らを救うことができると確信していた。 主人公は兄弟たちにゲーム中に辿り着けなかった最高の幸せを与えるため、奮闘することを決意する。 これは無能と呼ばれた悪役が最強となり、兄弟を幸せに導く物語だ。

変人奇人喜んで!!貴族転生〜面倒な貴族にはなりたくない!〜

赤井水
ファンタジー
 クロス伯爵家に生まれたケビン・クロス。  神に会った記憶も無く、前世で何故死んだのかもよく分からないが転生した事はわかっていた。  洗礼式で初めて神と話よく分からないが転生させて貰ったのは理解することに。  彼は喜んだ。  この世界で魔法を扱える事に。  同い歳の腹違いの兄を持ち、必死に嫡男から逃れ貴族にならない為なら努力を惜しまない。  理由は簡単だ、魔法が研究出来ないから。  その為には彼は変人と言われようが奇人と言われようが構わない。  ケビンは優秀というレッテルや女性という地雷を踏まぬ様に必死に生活して行くのであった。  ダンス?腹芸?んなもん勉強する位なら魔法を勉強するわ!!と。 「絶対に貴族にはならない!うぉぉぉぉ」  今日も魔法を使います。 ※作者嬉し泣きの情報 3/21 11:00 ファンタジー・SFでランキング5位(24hptランキング) 有名作品のすぐ下に自分の作品の名前があるのは不思議な感覚です。 3/21 HOT男性向けランキングで2位に入れました。 TOP10入り!! 4/7 お気に入り登録者様の人数が3000人行きました。 応援ありがとうございます。 皆様のおかげです。 これからも上がる様に頑張ります。 ※お気に入り登録者数減り続けてる……がむばるOrz 〜第15回ファンタジー大賞〜 67位でした!! 皆様のおかげですこう言った結果になりました。 5万Ptも貰えたことに感謝します! 改稿中……( ⁎ᵕᴗᵕ⁎ )☁︎︎⋆。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

異世界転生漫遊記

しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は 体を壊し亡くなってしまった。 それを哀れんだ神の手によって 主人公は異世界に転生することに 前世の失敗を繰り返さないように 今度は自由に楽しく生きていこうと 決める 主人公が転生した世界は 魔物が闊歩する世界! それを知った主人公は幼い頃から 努力し続け、剣と魔法を習得する! 初めての作品です! よろしくお願いします! 感想よろしくお願いします!

処理中です...