錬金術師が不遇なのってお前らだけの常識じゃん。

いいたか

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第四十八話 決闘

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俺は咄嗟とっさに隣の二人を見やる。 恐怖で震えているようだ。 相手は貴族だし、入試の時のこともある。 尚且ついきなりの決闘宣告だ。 そうなって当然か。
ここは逃げても良いが追いかけられたり、しつこくされれば安寧あんねいはないだろう。 二人に危害が及んでは意味がない。 覚悟を決める。

「わかったよ。 決闘なんだからこちらが勝ったら何か条件を飲んでもらえるのかい?」

「あぁ、良いだろう。 俺も貴族だ。 二言はない」

そこだけは物分かりが良くて助かった。
そのままルクインダルクに先導され学院内の闘技場へと向かう。 対人形式の授業で使う事があるのだとか。

「着いたぞ」

「どういう事だ? 観客がこんなに居るなんて聞いてないぞ?」

観客席のスペースはかなり埋まっており、上級生らしき人や教師らしき人もちらほらと見受けられる。

「俺からのサプライズさ」

二人は観客席の方に行き見守る事にした。
すると、一人の中年の黒いマントを羽織った教師らしき人物が現れる。

「私が審判を勤めましょう。 両者位置に着いて」

二人とも位置に着く。 観客席のざわめき、ルクインダルクの呼吸がはっきりと聞こえる。
かなり集中してきているようだ。 だが、入試の時のルクインダルクの実力であれば何も問題は起こらないだろう。 しかし、念には念をだ。

「では! 始め!」

開始の合図がされる。 同時にルクインダルクの姿が消える。

「なっ!」

真後ろから詠唱が聞こえる。 咄嗟に回避行動を取り距離を開ける。
ルクインダルクが唱えているのはウィンドカッターの詠唱だ。
俺も同じ詠唱をし打ち消すことにする

「風の刃よ! 切り裂け!」

バァンと弾ける。 だが、おかしい。 一方的に打ち消すのではなく弾けて相殺された。
怪我をさせない様にと手加減をしたが以前よりも威力が上がり過ぎている。

「どうした? 僕の本気はこんなものじゃないぞ?」

「そうかい? ならこっちも出力上げるだけだけど…」

余裕ぶっては居るがかなり厳しい。 魔物を普段相手取って居るから怪我をさせない…。 いや、殺さない様にするには細心の注意が必要だ。

ルクインダルクが家の象徴である、風属性の魔法をやめ急に複合属性の氷属性の魔法を使い始める。

「氷の槍よ、かの者を穿て」

これはランス系の魔法だ。 アローよりも強く、重い魔法だ。
今の俺には扱えないので出力を上げるしか防御の方法はない。

「雷の矢よ、かの者を貫け」

破壊力に長けている風の属性の派生属性である雷属性のサンダーアローだ。
かなり魔力を乗せた。 これでどうか…。

ドコォン! かなりの爆風である。
そしてかなり押し負けていることがわかる。

「私の本気はまだここからだ」

さきほどから一人称がころころ変わっている。 剣聖と似たような状態だ。 まさかこいつも悪魔憑き。
だとしたらドーラ様は居ない。 まずいぞ…。

どんどんルクインダルクから黒い魔力が放たれてくる。
剣聖の時と違い、どうも様子がおかしい。
審判を勤める教師らしき男が声を掛けて来る。

「これはこれは。 悪魔の器に適合しましたか。 さて、変貌しますよ。 彼は悪魔と同化し、魔王の眷属となったのです。 もうピュリフィケーション如きでは救えませんよ」

瞬間、審判を勤めていた男から漆黒の翼と額に二本の蜷局とぐろ状の角が生える。
ルクインダルクにも同様に翼が生え、牙がむき出しになり、目は血の様に赤くなり、よだれを垂らしている。

「おや、悪意に呑まれましたか…。 これでは、こちらの指示は聞きませんね。 ですが試合は続行ですよ。 貴方に拒否権は無いのです。 この民衆がどうなっても良いのなら別...ですがね?」

皆虚ろな目になっており、心此処に在らずな感じだ。

「お前、何者だ、一体何をした、何が目的だ」

わたくしは魔王軍幹部のオルナ、こちらに居るルクインダルク君はご覧の通りもう悪魔です。 取り憑かせたのはもちろん私です。 ここにいる観客の彼らには魅了チャームを掛けました。 なに、死にませんよ。 目的は貴方なのでね。 分かっているのでしょう? 
魔王を脅かす器の持ち主よ」

突如として、気配が変わった。
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