その使用人、最強

ラム猫

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入学前 ( 1 )

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「ええぇぇっっーーーー!!?」

 満月が輝く夜。フェール侯爵の屋敷内で、叫び声が響いた。

「マーヌちゃん、ちょっと声が大きいですよ」
「も、申し訳ありません奥様……。それよりもお嬢様が学園に通うって本当なのですか!」

 代表の使用人7人――クア、マーヌ、ジル、ファウル、クリー、ミナミ、イデアと、ミシアの両親――父、シール・フェールと母、ミラ・フェールが集まっている。
 位置関係を詳しく説明すると、皆は長机を中心に周りに座っている。部屋の奥にはシールとミラが椅子に座り、彼らの斜めに使用人達が3人と4人で座っている。
 シールに近い、右側に座る者は、奥からマーヌ、クリー、ジル、クア。
 ミラに近い、左側に座る者は、奥からファウル、ミナミ、イデアである。
 そして、ミラが切り出したのは、ミシアが学園に入学する、というものだった。

「どうしてもう少し早く伝えて下さらなかったのですか?」
「ごめんねクア君。ただ、早く伝えておくと、あなた達はミシアちゃんを学園に通わせないために色々手回ししそうだと思ってね……」

 ミラの言葉に強く反応したファウルがびしっと手を上げながら言う。

「当たり前ですよ。お嬢様を欲に溢れた獣達がわんさかいる所に放りこむのですか!? お嬢様はか弱い兎のようなものです。獣はお嬢様に襲いかかりますよ、絶対。俺だったら襲います」
「はぁ? 襲っちゃダメだよ。お嬢様はとっても可愛いけど純粋なんだよ? そんな純粋なお嬢様をお前が穢すなんて……。考えただけで寒気がするね」
「うるさいイデア。例えだよ例え。じゃあお前は襲わないの?」
「時と場合による」
「ほら言わんこっちゃない」
「は? お前とは違うよ。僕はきちんと、考えて行動しているんだ。お前みたいに本能に生きているわけではない」
「あん? なんだお前。ちょっと今からやるか? 表出ろや」
「いいよ買ってあげよう。後悔させてあげる」

 睨み合いながら2人は立ち上が――ろうとして椅子ごと後ろに倒れた。

「おふたりとも。今は旦那様と奥様のお話を聞くときです。話を遮って喧嘩など失礼だと思いませんの?」

 そう。2人の間にいたミナミが2人の手をガシッと掴んで思い切り引いたのだった。2人は勢いよく前に乗り出し、急に後ろに引かれた為見事にひっくり返った。椅子共に。

「「し、失礼しました……」」

 2人はペコペコ頭を下げながら椅子を元に戻して座り直す。
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