4 / 9
インタビュー ( 4 )
しおりを挟む――フェール侯爵家のお庭、とっても綺麗ですね。お花は鮮やかですし緑も映えていて…………ってうわっ!? 何!? 斧が飛んできたんだけど! 深緑の髪の男の人が斧を投げてきたんだけど!
「ああ……すみません外しましたか。次は当てるんで安心してください」
――安心できますかぁ!ていうかなんで斧投げるんですか! 危ないでしょう! 当たったら死にますよ。
「そのつもりで投げたので」
――怖っこの人。あの、僕はミルといって、フェール侯爵令嬢様の使用人の方々にインタビューをしたいと思っていて……。
「あっ、もしかしてあなたはクアから連絡があったインタビュー青年ですか?」
――そうです。インタビュー青年です。
「それは本当に、すみません! てっきり不法侵入してきたゴミかと……。お嬢様の目に入れる訳にはいかぬとつい斧を投げてしまいました」
――僕、『つい』で殺されるところだったのですか? 恐ろしい…………。これまでの恐怖を感じたのは久しぶりです。
「すみません、すみません! お詫びと言ってはなんですが何でも答えますから!」
――おや、言質をいただきましたよ。それではインタビューに答えてくださるのですね。
「勿論です喜んで」
――ではまず、あなたのお名前と種族とお仕事を教えてください。
「ファウル・ヤードセントです。種族は精霊。特に植物の精です。仕事は、フェール侯爵家のお庭の整備を担当させていただいています、庭師です。お嬢様の目の保養となるよう、毎日のお手入れは欠かせません」
――なるほど、あなたは庭師さんでしたか。次に聞きたいのはお気に入りの武器なのですが……。予想できます。斧でしょう?
「はい、当たりです。本当にすみませんでした」
――斧の名前等を教えてください
「『翠』です。元は一本ですが、魔法で複製して何本かにして投げたり切ったりしています。この斧は俺のお気に入りで、簡単に切りやすいし狙ったところにも投げやすいのですよ。さっきは外しましたけど」
――よかったです外してくれて。というか『切る』というのは、木を切るということですか? それ以外は考えたくないのですけど……。
「時と場合によります」
――うわぁ。ですよねぇ。だと思いましたよ。
ファウルさん、これが最後の質問です。
「はい。何でも聞いてください。好きな異性のタイプでも、隠している本の内容でもその場所でも何でも答えます」
――いや聞きませんよそんなこと。気になりますけど。僕が一番聞きたいのは、あなたがフェール侯爵令嬢様をどのように思っているか、です。
「愛しています、心から。お嬢様の全てが愛おしいです。愛らしいです。同じこと言ってますけど。お嬢様が俺が整備した庭を見てくれるだけで満たされます。お嬢様こそ、俺の運命の人だと信じています」
――初恋ですか?
「初恋です。だけど、一方的でいいんです。一方的がいいんです」
――ファウルさん、フェール侯爵令嬢様をこれからも見守ってくださいね。あなたの思いを、僕はしかと受け止めました。
「ありがとうございます」
――さて、ファウルさん。僕のインタビューに答えて下さりありがとうございました。最初のことは水に流します。
「すみませんでした。そしてこちらこそありがとうございました」
――ふう……。ファウルさんはいい人なんですけど、怖かったですね。初対面で斧を投げる人なんて初めて見ました。マーヌさんの言っていたことって正しいのかもしれませんね。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説

すり替えられた公爵令嬢
鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。
しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。
妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。
本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。
完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。
視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。
お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。
ロイズ王国
エレイン・フルール男爵令嬢 15歳
ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳
アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳
マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳
マルゲリーターの母 アマンダ
パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト
アルフレッドの側近
カシュー・イーシヤ 18歳
ダニエル・ウイロー 16歳
マシュー・イーシヤ 15歳
帝国
エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(皇帝の姪)
キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹)
隣国ルタオー王国
バーバラ王女
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。
りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。
やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか
勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。
ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。
蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。
そんな生活もううんざりです
今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。
これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々
くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

邪魔しないので、ほっておいてください。
りまり
恋愛
お父さまが再婚しました。
お母さまが亡くなり早5年です。そろそろかと思っておりましたがとうとう良い人をゲットしてきました。
義母となられる方はそれはそれは美しい人で、その方にもお子様がいるのですがとても愛らしい方で、お父様がメロメロなんです。
実の娘よりもかわいがっているぐらいです。
幾分寂しさを感じましたが、お父様の幸せをと思いがまんしていました。
でも私は義妹に階段から落とされてしまったのです。
階段から落ちたことで私は前世の記憶を取り戻し、この世界がゲームの世界で私が悪役令嬢として義妹をいじめる役なのだと知りました。
悪役令嬢なんて勘弁です。そんなにやりたいなら勝手にやってください。
それなのに私を巻き込まないで~~!!!!!!
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる