その使用人、最強

ラム猫

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インタビュー ( 4 )

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――フェール侯爵家のお庭、とっても綺麗ですね。お花は鮮やかですし緑も映えていて…………ってうわっ!? 何!? 斧が飛んできたんだけど! 深緑の髪の男の人が斧を投げてきたんだけど!

「ああ……すみません外しましたか。次は当てるんで安心してください」

――安心できますかぁ!ていうかなんで斧投げるんですか! 危ないでしょう! 当たったら死にますよ。

「そのつもりで投げたので」

――怖っこの人。あの、僕はミルといって、フェール侯爵令嬢様の使用人の方々にインタビューをしたいと思っていて……。

「あっ、もしかしてあなたはクアから連絡があったインタビュー青年ですか?」

――そうです。インタビュー青年です。

「それは本当に、すみません! てっきり不法侵入してきたゴミかと……。お嬢様の目に入れる訳にはいかぬとつい斧を投げてしまいました」

――僕、『つい』で殺されるところだったのですか? 恐ろしい…………。これまでの恐怖を感じたのは久しぶりです。

「すみません、すみません! お詫びと言ってはなんですが何でも答えますから!」

――おや、言質をいただきましたよ。それではインタビューに答えてくださるのですね。

「勿論です喜んで」

――ではまず、あなたのお名前と種族とお仕事を教えてください。

「ファウル・ヤードセントです。種族は精霊。特に植物の精です。仕事は、フェール侯爵家のお庭の整備を担当させていただいています、庭師です。お嬢様の目の保養となるよう、毎日のお手入れは欠かせません」

――なるほど、あなたは庭師さんでしたか。次に聞きたいのはお気に入りの武器なのですが……。予想できます。斧でしょう?

「はい、当たりです。本当にすみませんでした」

――斧の名前等を教えてください

「『みどり』です。元は一本ですが、魔法で複製して何本かにして投げたり切ったりしています。この斧は俺のお気に入りで、簡単に切りやすいし狙ったところにも投げやすいのですよ。さっきは外しましたけど」

――よかったです外してくれて。というか『切る』というのは、木を切るということですか? それ以外は考えたくないのですけど……。

「時と場合によります」

――うわぁ。ですよねぇ。だと思いましたよ。
 ファウルさん、これが最後の質問です。

「はい。何でも聞いてください。好きな異性のタイプでも、隠している本の内容でもその場所でも何でも答えます」

――いや聞きませんよそんなこと。気になりますけど。僕が一番聞きたいのは、あなたがフェール侯爵令嬢様をどのように思っているか、です。

「愛しています、心から。お嬢様の全てが愛おしいです。愛らしいです。同じこと言ってますけど。お嬢様が俺が整備した庭を見てくれるだけで満たされます。お嬢様こそ、俺の運命の人だと信じています」

――初恋ですか?

「初恋です。だけど、一方的でいいんです。一方的がいいんです」

――ファウルさん、フェール侯爵令嬢様をこれからも見守ってくださいね。あなたの思いを、僕はしかと受け止めました。

「ありがとうございます」

――さて、ファウルさん。僕のインタビューに答えて下さりありがとうございました。最初のことは水に流します。

「すみませんでした。そしてこちらこそありがとうございました」

――ふう……。ファウルさんはいい人なんですけど、怖かったですね。初対面で斧を投げる人なんて初めて見ました。マーヌさんの言っていたことって正しいのかもしれませんね。

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