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第2章 魔法学園の入学式
入学式のハプニング ( 9 )
しおりを挟む「アーサー君達も自分の名前教えてあげたら?」
ハルミルマさんがアーサイルさん達にそう話しかける。
「ああ……。俺は、アーサイル・ウォーズイズだ」
「ライムルト・キューズです」
アーサイルさんの自己紹介の後にライムルトさんが続く。
ライムルトさんはぺこりと頭を下げてから、私の顔をじっと見る。
「あの……ライムルト様? 私の顔に何かついていますか?」
身分が上の人には様付け。これ常識。
ライムルトさんは私が声をかけたことではっとしたように顔を横に向ける。
「いえ。お綺麗ですよ」
良かった。何も付いていたりはしなかったんだ。
元庶民でも、今はれっきとした令嬢。顔に汚れが着いていたりしたら令嬢失格よ。
――ん? ちょっと待て。
今ライムルトさんに物凄く恥ずかしいことをさらっと言われたような。
お綺麗ですよっだっけ。
ぼっと顔が燃えるのではないかと思う程熱くなる。
いやいやいや。社交辞令。社交辞令のはずよ。
ライムルトさんを見ると、横を向いている彼は私と違って平静としていたから、多分社交辞令だろう。
うわぁ、恥ずかしい。
社交辞令に恥ずかしがっている私が恥ずかしい。
「セリスティーナさん」
「ふぁい!」
心の中で悶々としていた私にユキトさんが話しかけてくる。
不意だったので、変な声を上げてしまった。不覚。
「もう少しで集合時間ではないのですか?」
ユキトさんは手で口を隠しながらくすくすと笑っている。
ユキトさんだけでない。ハルミルマさんも、ユウキューマさんも笑っている。多少ながら、アーサイルさんの口角も上がっているような気が。
ライムルトさんだけは笑わないでいてくれた。
しかし、他の人にはやっぱり笑われた。恥ずかしい!
「あ、ありがとうございます。それでは失礼致します」
慌てに慌てまくっている私の胸の内がバレないように立ち振る舞いながら、私はその場からとにかく離れようとした。
「セリスティーナさん、頑張ってくださいね」
「俺達も見てるからさ」
「僕は測定係になったから、魔力測定の時にも傍にいるよぉ」
「力を出し切ってこい」
「応援しています」
ユキトさんに一言。紳士。頑張りたくなります。
ハルミルマさんに一言。あまり見ないでください。
ユウキューマさんに一言。傍で見られたら余計に緊張しますよ、きっと。
アーサイルさんに一言。出しません。
ライムルトさんに一言。素直に感謝を言います。ありがとうございます。
私はその場で礼をしてから、少し急ぎ足で会場へ向かう。
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