母校に就職したら指導教官が大好きだった先生でした

5 飛び込む勇気

鈴木の作戦

「教頭先生、お願いがあります」
鈴木先生からそんなことを言われるなんて。まあ、珍しい。
「なにかしら？」
「里見と平井のご苦労さん会をしてやりたいんですが、そこに廣瀬先生も参加させてやりたくて」
「今、寮にはひとりしか生徒がいませんし、問題ありません。里見先生も廣瀬先生も参加していただいても」
「では、２人が帰ってくる金曜日の夜、２人をお借りします」
「まあ、２人は物じゃないのよ、借りるだなんて」
苦笑いしか出ないけれど、鈴木先生は豪快なようで、こういう細かいところにも目がいく、うちの若手のなかで、リーダーとしての役割を果たす貴重な存在。水谷先生には、ああいう役割を期待していたんだけれど。
目をやると、廣瀬先生にさっそく誘いの声をかけているようだ。ほかの参加者は、水谷、榊あたりか。
うちは20代、30代の教師の仲が良い。職員間のコミュニケーションが密でないと、なにかと問題は起きやすい。生徒指導、授業構築あらゆる場面で、教師同士が腹を割って話をするのは、大切なことだ。