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1 はじまり
研修2日目。
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「漢字が間違っています。書き直してください」
「はい」
涙目になってるのが自分でもわかる。
昨日の研修初日は、指導教官の水谷先生や、学園のお姉さんの廣瀬先生と挨拶をして、事務手続きに必要な書類を書き、職員室で自己紹介をして、校内をグルッとまわって、なんかそんな感じで終わったが、2日目の今日は、朝、水谷先生からこの教材の指導案を書いてください。と言われ、書いては直し、を繰り返している。
そういえば、高校時代から水谷先生は生徒に対してずっと敬語だった。研修生のわたしにも敬語なのは当然なのだろう。でも、丁寧な言葉でダメ出しされるとダメージ増幅。この指導案もこれで4回目の書き直しだ。
1回目は、内容が甘い。2回目は、教材研究が足りない。3回目はこれじゃ授業にならない。で、4回目は一目見て、漢字が間違ってる・・・
指導案というのは、授業の台本みたいなもの。劇の台本と違うのは、この授業を通して生徒に理解してもらいたいことや、感じ取ってほしいことなどを、授業のねらい、として書いたり、生徒に指名して答えてもらうところが、実際の授業ではアドリブにしかならないところとか。
大学でも指導案を書く指導は受けてきたけど、水谷先生のはもっと細かい。
「例えば、里見先生が授業途中で何らかのアクシデントに見まわれたとしても、この指導案さえあれば、どの国語科教員でも、ピンチヒッターとして授業を続けられる。そのためのものだと思って作ってください」
大学じゃそんなこと習わなかったよー。指導案が出来たら模擬授業を、って言われているけど、一体いつになったら出来るんだろう。
「はい、わかりました」
内線電話で誰かと話している。
「4時間目、平井先生の一回目の模擬授業なので、生徒役に来てほしいそうです」
「わたしがですか?」
「ちょうどいいじゃないですか。初めて授業聞く生徒とほぼ同レベルでしょう?」
笑った?今。高校時代、国語は常に学年1位だったけれど、数学は常に撃沈。赤点取って、担任の水谷先生と個人面談したこともあったし。「わたしも行きますよ。向こうの進み具合も気になりますので」
数学はこっちと同じように授業案書いてるんだろうか。だとしたら、すごく先を越されてるんだな。正直悔しい。でも、もうどこをどう直せば良いのか、わからなくなってしまった。
「さて。高校時代にあなたには教えたはずですが、もう忘れたんでしょうか」
水谷先生が黒板に向かう。高校時代に教えられたこと?
カツカツカツ黒板にチョークでさらさら文字を書いていく。ああ、やっぱり先生の字、すごくキレイ。
ーわからないことはわからないと言えー
「先ほどから何度も書き直していますが、何をどう直したら良いのか、なぜ聞かないのですか?新人なんだから、わからないことがあるのは仕方のないことです。わかったふりはダメです。これでは何度書き直しても、合格しませんよ。なぜ、どこを直せば良いのか聞かないのですか?答えなさい」
え。もしかして水谷先生、怒ってる?
そこに、チャイムが鳴る。
「4時間目は、平井先生の模擬授業です。隣の教室へお願いします」
そう言うと、わたしの答えを聞かないまま、水谷先生は教室を出て行ってしまった。
「はい」
涙目になってるのが自分でもわかる。
昨日の研修初日は、指導教官の水谷先生や、学園のお姉さんの廣瀬先生と挨拶をして、事務手続きに必要な書類を書き、職員室で自己紹介をして、校内をグルッとまわって、なんかそんな感じで終わったが、2日目の今日は、朝、水谷先生からこの教材の指導案を書いてください。と言われ、書いては直し、を繰り返している。
そういえば、高校時代から水谷先生は生徒に対してずっと敬語だった。研修生のわたしにも敬語なのは当然なのだろう。でも、丁寧な言葉でダメ出しされるとダメージ増幅。この指導案もこれで4回目の書き直しだ。
1回目は、内容が甘い。2回目は、教材研究が足りない。3回目はこれじゃ授業にならない。で、4回目は一目見て、漢字が間違ってる・・・
指導案というのは、授業の台本みたいなもの。劇の台本と違うのは、この授業を通して生徒に理解してもらいたいことや、感じ取ってほしいことなどを、授業のねらい、として書いたり、生徒に指名して答えてもらうところが、実際の授業ではアドリブにしかならないところとか。
大学でも指導案を書く指導は受けてきたけど、水谷先生のはもっと細かい。
「例えば、里見先生が授業途中で何らかのアクシデントに見まわれたとしても、この指導案さえあれば、どの国語科教員でも、ピンチヒッターとして授業を続けられる。そのためのものだと思って作ってください」
大学じゃそんなこと習わなかったよー。指導案が出来たら模擬授業を、って言われているけど、一体いつになったら出来るんだろう。
「はい、わかりました」
内線電話で誰かと話している。
「4時間目、平井先生の一回目の模擬授業なので、生徒役に来てほしいそうです」
「わたしがですか?」
「ちょうどいいじゃないですか。初めて授業聞く生徒とほぼ同レベルでしょう?」
笑った?今。高校時代、国語は常に学年1位だったけれど、数学は常に撃沈。赤点取って、担任の水谷先生と個人面談したこともあったし。「わたしも行きますよ。向こうの進み具合も気になりますので」
数学はこっちと同じように授業案書いてるんだろうか。だとしたら、すごく先を越されてるんだな。正直悔しい。でも、もうどこをどう直せば良いのか、わからなくなってしまった。
「さて。高校時代にあなたには教えたはずですが、もう忘れたんでしょうか」
水谷先生が黒板に向かう。高校時代に教えられたこと?
カツカツカツ黒板にチョークでさらさら文字を書いていく。ああ、やっぱり先生の字、すごくキレイ。
ーわからないことはわからないと言えー
「先ほどから何度も書き直していますが、何をどう直したら良いのか、なぜ聞かないのですか?新人なんだから、わからないことがあるのは仕方のないことです。わかったふりはダメです。これでは何度書き直しても、合格しませんよ。なぜ、どこを直せば良いのか聞かないのですか?答えなさい」
え。もしかして水谷先生、怒ってる?
そこに、チャイムが鳴る。
「4時間目は、平井先生の模擬授業です。隣の教室へお願いします」
そう言うと、わたしの答えを聞かないまま、水谷先生は教室を出て行ってしまった。
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